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アトラス山脈にてパート5

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  このままトールさんを放置するわけにもいかないので、私は回復魔法を使った。


 「う・う・う」

 「トールお姉ちゃん大丈夫ですか」

 「まだ、頭がクラクラするが、大丈夫だ。それよりメデューは、どこにいる」

 「メデューなら用事があるから、帰りました」


 私は、メデューには、トールさんに怒られるから、先に帰るように言った。もしもメデューが、余計なこと言って、私にも、トールさんの怒りが、飛び火するのを恐れたからである。


 「あいつめ。あれほど飛ばすなと言ったのにな。次に会った時は、懲らしめてやらないとな」

 「そうですね。次に会った時は、私も一緒に怒ってあげます」



 「エーン。エーン。ひどいよルシスちゃん。一緒に競走したのに、私だけ悪者になっているよーー」

 「メデュー・・・帰ったのじゃなかったの」

 「帰ろと思ったけど、トールさんのことが、心配だったから、戻ってきたの」

 「ル・シ・ス・・・・競走とはどういうことだ!!!!」


 やばい・・・バレてしまった。これはなんとか誤魔化さないと。

  
 「トールお姉ちゃん。あれがイディ山です。ここに精霊神がいてると思います」

 「今はそんなことよりも、競走とはなんだ」

 
 これは誤魔化すことは、不可能だ。こうなったら、これしかない。異世界転生者最大級の謝罪方法・・・土下座だ。


 「メデュー、いまから私がする事と同じ動作をしてね」

 「はーい」

 「トールお姉ちゃんごめんなさい。ついつい調子に乗って、メデューと飛行競走をしてしまいました」


 私は土下座をして、トールさんに謝った。メデューは、よく理解していないが、同じように土下座をした。


 「なんだ、そのポーズは」

 「これは、私の国で、心のこもった謝りかたです。これで許してください」

 「・・・わかったぜ。反省しているみたいだから、許してやるわ」
 
 「ありがとうございます」

 「許してもらえたの?よかったねルシスちゃん」

 「・・・・」


 メデューは、自分も怒られている事を、もう忘れているのである。



 少しすると、ロキさんとポロンさんも到着した。


 「メデュー、飛ばしたらいけないと言ったでしょ」


 次はステンさんに、メデューは怒られている。私は知らないフリをした。


 「だって、ルシスちゃんが・・・」

 「ルシスちゃんのせいにしないの」

 「ごめんなさい」

 「ステン、それくらいにしてやってくれ。俺は、もう許してあげたし、悪いのはメデューだけじゃないしな」

 「トールさんがそう言うなら、これくらいにしとくわ。でも、メデューは、まだまだ子供だから、きちんと教育しないといけないわ」

 「メデューは、いくつになるのだ」

 「竜人としては、18歳になるけど、人間の年齢にしたら、9歳くらいかな」

 「それなら、ルシスよりも年下になるのか」

 「そうね。だから、悪いことは、きちんと怒って注意してあげないとね」

 「そうだな。ルシスもきちんとした教育が必要だな」


 やばい・・・私に飛び火してしまいそうだ。


 「メデューの事は、そのくらいにしといて、本題に入ろう」


 ナイス、ロキさん、悪い流れを変えてくれた。


 「そうですわ。やっと念願の精霊神様のいるイディ山に来たのよ。これからどうするか考えましょう」

 「そうだな。それで、これからどうするよ」

 「精霊神に会いに行くためには、この先にある試練の扉から入る事ができるわ。エルフなら、誰でも入る事が、できるはずだわ」

 「ステンさんは精霊神様の事は詳しいのですか」

 「アトラス山脈の事は、なんでも知っているわ。イディ山は活火山で、絶えず噴火を繰り返す、火の山です。そして、火の精霊神サラマンダーの住処になっているの。サラマンダーは、マグマの中で力を吸収し、火の精霊たちに力を与えているのよ」

 「サラマンダーの試練は、どんな内容なのですか」
 
 「残念ながら、試練の内容は極秘になっているのよ。今までに、何人かのエルフが、サラマンダーの試練に挑戦したが、一度も突破した者はいないわ」

 「かなり難しい試練なのね」

 「そうだと思うわ。しかし、試練は、仲間と一緒に参加できると聞いているわ。みんなの力を合わせれば、突破できるかもしれないわ」

 「それは、嬉しい事ですわ。みんなの協力があれば、突破できるはずですわ」

 「え、俺も参加するのか」

 「もちのろんですわ」

 「めんどくせーな」

 「トール!ポロンのためだ、みんなで協力しようじゃないか」

 「はーい。私は協力します」


 精霊神のサラマンダーに会えるなんて、とてもワクワクしてきた。ドラゴンの次は大きなトカゲだ。これぞ異世界って感じがする。


 「はい、はい、わかりました」


 私たちは、ステンさんたちにお礼を言って、イディ山の試練の扉に向けて、山を登り始めた。


 「めちゃくちゃ暑くないか」

 「そうだな。火の山と言われるだけの事はあるな」

 「ルシス、暑くないのか」

 「私は、魔法を使っているので快適です」

 「お前だけずるいぞ」

 「トールお姉ちゃんも、魔力で、体にシールドを張れば、暑さはしのげますよ」

 「そうなのか」

 「はい。魔力シールドは、暑さ、寒さなどを防ぐこともできるのです。しかし、戦闘でのシールドとは異なり、薄いシールドを二層にして張るといいですよ。これで暑さの対処ができます」

 「ルシスは、なんでも知ってるな」

 「小さい頃から、本を読んで、勉強していたので、魔法の応用は得意です」

 「なら初めから教えてくれよ」

 「教えるの忘れていました」

 「そこはしっかりしてくれないと・・・」


 3人は、私の教えた、シールド魔法により、イディ山の暑さに苦しむ事なく、試練の扉にたどり着くことができたのである。
 
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