66 / 453
アトラス山脈にてパート5
しおりを挟むこのままトールさんを放置するわけにもいかないので、私は回復魔法を使った。
「う・う・う」
「トールお姉ちゃん大丈夫ですか」
「まだ、頭がクラクラするが、大丈夫だ。それよりメデューは、どこにいる」
「メデューなら用事があるから、帰りました」
私は、メデューには、トールさんに怒られるから、先に帰るように言った。もしもメデューが、余計なこと言って、私にも、トールさんの怒りが、飛び火するのを恐れたからである。
「あいつめ。あれほど飛ばすなと言ったのにな。次に会った時は、懲らしめてやらないとな」
「そうですね。次に会った時は、私も一緒に怒ってあげます」
「エーン。エーン。ひどいよルシスちゃん。一緒に競走したのに、私だけ悪者になっているよーー」
「メデュー・・・帰ったのじゃなかったの」
「帰ろと思ったけど、トールさんのことが、心配だったから、戻ってきたの」
「ル・シ・ス・・・・競走とはどういうことだ!!!!」
やばい・・・バレてしまった。これはなんとか誤魔化さないと。
「トールお姉ちゃん。あれがイディ山です。ここに精霊神がいてると思います」
「今はそんなことよりも、競走とはなんだ」
これは誤魔化すことは、不可能だ。こうなったら、これしかない。異世界転生者最大級の謝罪方法・・・土下座だ。
「メデュー、いまから私がする事と同じ動作をしてね」
「はーい」
「トールお姉ちゃんごめんなさい。ついつい調子に乗って、メデューと飛行競走をしてしまいました」
私は土下座をして、トールさんに謝った。メデューは、よく理解していないが、同じように土下座をした。
「なんだ、そのポーズは」
「これは、私の国で、心のこもった謝りかたです。これで許してください」
「・・・わかったぜ。反省しているみたいだから、許してやるわ」
「ありがとうございます」
「許してもらえたの?よかったねルシスちゃん」
「・・・・」
メデューは、自分も怒られている事を、もう忘れているのである。
少しすると、ロキさんとポロンさんも到着した。
「メデュー、飛ばしたらいけないと言ったでしょ」
次はステンさんに、メデューは怒られている。私は知らないフリをした。
「だって、ルシスちゃんが・・・」
「ルシスちゃんのせいにしないの」
「ごめんなさい」
「ステン、それくらいにしてやってくれ。俺は、もう許してあげたし、悪いのはメデューだけじゃないしな」
「トールさんがそう言うなら、これくらいにしとくわ。でも、メデューは、まだまだ子供だから、きちんと教育しないといけないわ」
「メデューは、いくつになるのだ」
「竜人としては、18歳になるけど、人間の年齢にしたら、9歳くらいかな」
「それなら、ルシスよりも年下になるのか」
「そうね。だから、悪いことは、きちんと怒って注意してあげないとね」
「そうだな。ルシスもきちんとした教育が必要だな」
やばい・・・私に飛び火してしまいそうだ。
「メデューの事は、そのくらいにしといて、本題に入ろう」
ナイス、ロキさん、悪い流れを変えてくれた。
「そうですわ。やっと念願の精霊神様のいるイディ山に来たのよ。これからどうするか考えましょう」
「そうだな。それで、これからどうするよ」
「精霊神に会いに行くためには、この先にある試練の扉から入る事ができるわ。エルフなら、誰でも入る事が、できるはずだわ」
「ステンさんは精霊神様の事は詳しいのですか」
「アトラス山脈の事は、なんでも知っているわ。イディ山は活火山で、絶えず噴火を繰り返す、火の山です。そして、火の精霊神サラマンダーの住処になっているの。サラマンダーは、マグマの中で力を吸収し、火の精霊たちに力を与えているのよ」
「サラマンダーの試練は、どんな内容なのですか」
「残念ながら、試練の内容は極秘になっているのよ。今までに、何人かのエルフが、サラマンダーの試練に挑戦したが、一度も突破した者はいないわ」
「かなり難しい試練なのね」
「そうだと思うわ。しかし、試練は、仲間と一緒に参加できると聞いているわ。みんなの力を合わせれば、突破できるかもしれないわ」
「それは、嬉しい事ですわ。みんなの協力があれば、突破できるはずですわ」
「え、俺も参加するのか」
「もちのろんですわ」
「めんどくせーな」
「トール!ポロンのためだ、みんなで協力しようじゃないか」
「はーい。私は協力します」
精霊神のサラマンダーに会えるなんて、とてもワクワクしてきた。ドラゴンの次は大きなトカゲだ。これぞ異世界って感じがする。
「はい、はい、わかりました」
私たちは、ステンさんたちにお礼を言って、イディ山の試練の扉に向けて、山を登り始めた。
「めちゃくちゃ暑くないか」
「そうだな。火の山と言われるだけの事はあるな」
「ルシス、暑くないのか」
「私は、魔法を使っているので快適です」
「お前だけずるいぞ」
「トールお姉ちゃんも、魔力で、体にシールドを張れば、暑さはしのげますよ」
「そうなのか」
「はい。魔力シールドは、暑さ、寒さなどを防ぐこともできるのです。しかし、戦闘でのシールドとは異なり、薄いシールドを二層にして張るといいですよ。これで暑さの対処ができます」
「ルシスは、なんでも知ってるな」
「小さい頃から、本を読んで、勉強していたので、魔法の応用は得意です」
「なら初めから教えてくれよ」
「教えるの忘れていました」
「そこはしっかりしてくれないと・・・」
3人は、私の教えた、シールド魔法により、イディ山の暑さに苦しむ事なく、試練の扉にたどり着くことができたのである。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
Cross Navi Re:〜運命の交差〜
noah太郎
ファンタジー
気づくと自分の知らない世界に迷い込んでいた。
現世界では全く異なる境遇に生きる2人、榎本春樹と根室秋人。2人はある日突然に、異世界へと転移する。
全く知らない世界で、多くの人に助けられながら希望を胸に生きる春樹と、誰からも愛されず、絶望の淵に立たされる暁仁。2人は命の危機に何度も瀕しながら、異世界の時代の渦に巻き込まれていく。
2人の運命が交差する時、世界は動きだす。
最後に2人が得るものとは一体何なのか。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる