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王都パート2

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 冒険者ギルドの裏側には、大きな闘技場がある。ここでは、様々な大会や、イベントが行われているらしい。そして、冒険者同士のいざこざにも、使われる事も、たまにあるみたいだ。

 闘技場には、どこで聞きつけたのか、たくさんの観客がいるみたいだ。私たちは、冒険者ギルドの受付に向かった。


 「よく、逃げ出さずに来たな」

 「いいから、闘技場に案内しろ」

 「はぁー、案内して下さいだろ」

 「お前から、ぶち殺してやろうか」
 
 「俺に手を出したら、どうなるかわかっているのか」

 「どうなるか、試してやるわ」


 トールさんはハンマーを握り締め、受付の台に目掛けて、叩きつけた。


 「ぎゃー、やめてくれ」


 受付の男性は悲鳴をあげて、腰をぬかす。


 「そのくらいで勘弁してあげて」


 ギルマスのフレイが奥の部屋から、出てきた。


 「代わりに、私が案内してするわ」

 「ああ」

 「受付の対応が悪くて、ごめんね」

 「かまわないぜ、王都では、俺たちは、嫌われ者だからな」

 「王都の人間といい、冒険者といい、ナワバリ意識が高いのか、よその国の冒険者に対して、敵意を持っていますわ。これも、神守教会の影響ですわ」

 「ギルマスがそんなこと、言っていいのか」

 「私は、王妃様派の人間だから問題はないの。むしろ、この雰囲気を変えたいと、思っているのよ。そのため、ディーバも、君たちに、Cランク冒険者に推薦したのだと思いますわ」

 「そういう意図もあったのか」

 「そうよ。そして、こうなることも、想定していたはずよ」

 「俺たちは、試されているのか」

 「試すのとは、少し違うかもしれないわ。期待していると思うのよ。ただ、金玉では、かなりきついと思いますわ」

 「そうかもな、とりあえず、全力で戦うのみだ」

 「応援してるわよ」


 私たちは、フレイさんに、闘技場まで案内してもらった。冒険者ギルド内の通路は、闘技場まで繋がっていて、すぐに着くことができた。そして、控え室で、待つように言われた。


 「作戦通り、俺と、ロキが前衛で戦うから、ルシスは、後方で、相手の支援魔法を抑えてくれ」

 「はい。私は攻撃に参加しなくてもいいのですか」

 「冒険者同士の3対3の決闘は、基本は前衛同士が戦い、支援者は、仲間の支援のみを行うのよ。しかも前衛は、1体1での戦いをすることになっているのよ。前衛が1勝1敗の引き分けになったら、後衛が戦うのが、暗黙のルールになっているわ。しかし、支援者の妨害するのは、許されているわ。冒険者同士の決闘は、戦いというよりも、スポーツ的な試合という感じになるのよ。しかし、この暗黙のルールを破って、支援者が、前衛と協力して、攻撃をすることも、あるので、その時は、迷わず、支援者を倒してくれて、かまわないわ」

 「わかりました。もし、支援者が、ロキお姉ちゃんたちに攻撃したら、やっつけてやります」

 「頼もしいな」



 「ラスパの皆さん。試合が始まりますので、こちらの通路から、闘技場の広場に行ってください」

 「いよいよですね」


 ロキさん達は、かなり緊張しているみたいだ。相手はかなり強いから仕方がないのだろう。


 「ああ、Cランクになろうぜ」

 「はい。がんばりましょう」

 「頑張ってくださいね」


 ポロンさんは、飲み物を片手に持って、観戦モードに入っている。

  
 闘技場の広場に出ると、私たちに向けて、罵声が飛んでくる。


 「早く、やられてしまえ」

 「亜人は殺せ」

 「この国から出ていけ」


 広場の反対側には、金玉のメンバーがいる。


 「バッカス任せたぜ」

 「金玉最高」

 「ソール様頑張って」


 闘技場の観客は全員、金玉を応援している。


 「逃げ出さずに、来た事だけは、褒めてやろう」


 バッカスが偉そうに言う。


 「・・・・」

 「怖くて、何も言えないか。今なら、Cランク冒険者を諦めて、逃げ出しても、かまわないぜ」

 「・・・・いいから、早く始めろ」

 「生意気な奴め、生きて、帰れると、思うなよ。ここでお前らを、殺しても、誰も止めないからな」


 
「それでは、金烏玉兎対ラストパサーの試合を行います。金烏玉兎の前衛は、バッカス様とソール様です。後衛はゾーイ様になります。よそ者達の前衛は、トールにロキ、後衛は亜人のガキになります」

「それでは、金烏玉兎様による、よそ者達への処刑を開催いたします」

 「うおぉーーーーー」

 「殺してしまえ」


 闘技場は、すごい熱気に包まれて入る。ここの闘技場に来ている者は、ラスパのメンバーへの怒りが
大きい。よその国の者が、王都で、Cランク冒険者になるのは、前例がなく、絶対に認めたくないのである。さらに、パースリの事件後は、他種族への怒りは、とてつもなく大きくなっていた。


 「バッカスは俺がやる。悪いが、ソールの相手は任せたぞ」

 「ああ、勝てる気はしないけど、全力でぶつかりますわ」

 「ロキ・・死ぬなよ」

 「お互いにね」

 「私が絶対に殺させはしませんよ」

 「ああ、そうだな。ルシス」


 「頑張ってね」


 ポロンさんは、ジュースを片手に持ち、もう片方の手で唐揚げとポテトを持って、闘技場の広場の席に座りながら、声をかけてくれた。この異様な空気感の中でも、マイペースなポロンさん。エルフの国を出て、たくましくなったものである。


 「俺から行くぜ」


 トールさんは、ハンマーを両手で持ち、バッカス目掛けて、走り出した。


 「威勢がいいな。でも俺に近づけるかな」


 トールさんはバッカスに近づくと、急によろめきだした。まるで、お酒によっているかのように。


「なんだこれは、頭がクラクラして、思うように動けないぜ」

「不用意に飛び込んでくるとは、バカなやつだぜ」


 バッカスは、ふらついているトールさんに目掛けて、斧を振りかざす。トールさんは、ハンマーで、かろうじて、斧を防ぐ。


 「この状態で、なかなかやるじゃないか、でもいつまで、防げるかな」

 
 バッカスは、攻撃の手を緩めず、斧を振り回す。トールさんは、フラフラになりながらも、攻撃を凌ぐが、完全には防ぐことができず、浅いが、斧が体を切り裂いていく。


 「くそ。やばいな」


 トールさんはバッカスから距離をとる。


 「俺には、近づけないだろう。これが、俺が神から授かった能力、リカーミストだ」

  
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