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ブラカリの町パート8
しおりを挟む「残念だが、そういう子は、しらないな。その子が、どうかしたのか」
「10歳の女の子なのですが、かなりの魔法の使い手であります。どうにかして、私たちの陣営に、協力を願いたい、ところなのですが・・素性が全くわからないので、情報を集めております」
「そうか。それでしたら、何かわかれば、連絡しよう」
さっきのバトルクライが、言っていた子が、ルシスという女の子のはず・・・強力な魔法の使い手となると、ますます、リプロ様の関係者の可能性が、高い。この事は、絶対に他言はできない。
「それでは、本題に入ろうではないか。神守教会の動きが、活発になっているみたいだな」
「はい。パースリの町が、ゴブリンに占拠されたことを、聖魔教会の仕業だと吹聴しています。それにより、王都内では、今まで、優勢だった、ネテア女王様の勢力が、神守教会の勢力に、寝返る者も現れています」
「そうらしいな。パースリにいた家族を、失った者の怒りの矛先が、聖魔教会に、きたというわけか」
「はい、そうです。ネテア女王様が、推し進める全人種共存政策が、このままでは、頓挫してしまいそうです」
「困ったものだな。こちらとして、できるだけ、ネテア女王様への、支援をするつもりであったが、逆に迷惑をかける、立場になったというわけだな」
「結果的にはそうなっています・・・失礼を承知で、お聞きしますが、魔獣を退ける魔石があるなら、魔獣を呼び寄せる魔石があるのではないでしょうか」
「そんなもの、あるわけがなかろう。この町は無関係だ」
「失礼しました。しかし、状況は悪くなってきていますが、パースリの町を、取り戻したのが、亜人の女の子だったので、それを上手い事利用できないか、考えております」
「それで、話しが戻るという事だな」
「はい。もし、プルート伯爵様の、お知り合いだったのなら、身の潔白を証明することになります。それに、ネテア女王様の、全人種共存政策の、柱になる人物でもあると、思っています」
「残念ながら、知らないもの、知らないとしか言えんな」
「わかりました。今後もご協力お願いします」
「ああ、目指すところは、同じだからな」
私たちが、大食館で、話しをしていた時、外で騒ぎが、あったらしい。店員によると、魔石工房に不正に侵入して、魔石技術を、盗もうとしていたらしい。
しかし、すぐに、バレて捕まってしまった。この町で、犯罪を起こしたら、この町の法律で裁かれる。どんな刑罰になるのか、興味があって、私は、店員に、捕まった人が、どうなるのか、尋ねてみた。
「この町へ来て、罪を犯すのは、ほとんどが、神守教会のスパイであり、魔石技術や、聖魔教会の実態を探りに来ている。捕まったら、それは恐ろしい地獄の日々が、待っている・・・・神守教会を信仰している者にとっては」
「恐ろし地獄の日々とは、なんなのですか」
「それは、獣人との共同生活だよ。聖魔教会として、他人種との共存を理解させるための、処置として、それをおこなっている。神守教会の信者にとっては、まさに地獄だよ。恐ろし魔王の手先との、共存生活だから、いつ食べられるのか、毎日が恐怖で、生きた心地がしない」
「獣人は、いい人なのになぁ」
「ああ、確かにそうだ。俺も実は、神守教会のスパイだった。初めの3ヶ月は、恐怖の日々だったが、そのうち、獣人たちの優しさに惚れ、いつしか、友と思えるようになった。俺は、この町が気に入ったから、家族を説得して、この町に移り住んだのだよ。そして、この町に住まずに、故郷に帰る者も多い。しかし故郷に帰って、神守教会の教えの間違いを広め、女王様の推し進める、全人種共存政策に、賛同を呼びかけているのだよ」
「そうなんですね」
「ああ。この町は、ほんといい町だよ」
「旦那様、ジャイコブ司教様の使いの者がきています」
「わかった」
ジャイコブ司教とは、パースリの町の神守教会の司教であり、パースリの町を実質的に支配していた人物である。
「リアム伯爵様、ジャイコブ司教様の状態がよくありません。なんとか支援してもらえないでしょうか」
「わかっておる。しかし、最近ディーバの監視もきびしくて、動きづらくなっている。治癒士は、派遣しただろう」
「はい。しかし、より高度な治癒ができる者が必要です。ジャイコブ司教様は、両腕を失っております。傷はふさがりましが、痛みが、消えません」
「わかっておる。王都に使いの者を、出しているところだ。教皇様が、なんとかしてくれるだろう」
娘の護衛の話しによると、あのガキが、腕を失った護衛を、魔法で元に、戻したらしいが、できるだけ、亜人などの力は、借りたくない。それに、俺が、神守教会と繋がっているのが、バレるのも困る
パースリの町は、教皇の指示によって、神守教会の信者育成をする町であった。立派な孤児院を作り、子供の頃から、神守教会の方針を叩き込み、さらに、兵士としての戦力強化も兼ね備えていた。
また、パースリの町は、神守教会の信者の町であり、ブラカリへの侵攻をする時の為の、準備拠点でもあった。
「王都まで、ジャイコブ司教様を運ぶことは、できませんか」
「それは、難しいな。俺の立場的に、表立って、神守教会を、支援することができない」
ジャイコブ司教は、神守教会の中で、もっとも過激的な人物であった。聖魔教会や、王女様の進める、全人種生存政策に、真っ向から反発していた。パースリの町を拠点として、神守教会の勢力のさらなる拡大を目指していたが、あまりにも、横暴なやり方のため、反発をかうことも多かった人物である。
ディーバ様が、王女様の政策を応援しているので、リアムが表立って、神守教会と関わる事は、できないのである。
ジャイコブ司教は、ゴブリンの軍勢から、逃げることができて、トメイトの村で、治療に専念している。あの村は、神守教会支持派の村なので、待遇は悪くはないのである。
ディーバ様の影響で、リアムの領土のほとんどの町が、神守教会の教えを否定している。さらに、横暴なやり方で、信者を増やしているジャイコブ司教は、特に嫌われているのである。
なかには、パースリの町が、襲撃された事を、当然の報いを受けたと言う者もいる。それは、ジャイコブ司教の神守教会を、信仰しない者に対しての、差別がひどいからであった。
「旦那様、教皇様の使いの者が到着しました」
「おお。それはいいタイミングだ。こちらに通してくれ」
「はいわかりました」
教皇の使いの者は、リアムに書簡を手渡した。書簡の中には、こう書かれていた。
ジャイコブは仕末しろ。パースリの町の事件は、神守教会にとって、好都合の材料になっている。ジャイコブは、独断で行動し、神守教会の評判を下げる原因にもなった男だ。余計なことをされて、この好機を、潰されるわけにはいかない。
リアムは、ジャイコブ司教の使いの者に、教皇の判断を説明した。
教皇の指示は絶対である。使いの者は、すぐに始末しますと言って、屋敷から出て行った。
そして、リアムは、もう一つの書簡に目を通した。
ブラカリ襲撃の準備を、進めるようにと書いてあった。
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