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ブラカリの町パート7

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 「プルート伯爵様に、お会いしたい」

 「これは、バトクラライ司教様。お急ぎでしょうか?」

 「できれば、すぐにお伺いしたい」

 「わかりました。すぐに連絡をとってまいります。応接室でお待ちください」

 「わかった」


 プルート・サミュエル・リッチモンド伯爵は、このブラカリの町の領主であり、聖魔教会の教皇でもある。プルート伯爵の屋敷は、かなり質素な屋敷である。大きさも、他の町の貴族の屋敷より、小さく、華やかさもない。初めて、この町に訪れる人は、ここが、伯爵家の屋敷だと、誰も信じないのである。


 「待たせたな、じぃーじ」

 「その呼び方は、おやめください。皆が、マネをしますので」

 「親しみがあって、良いではないか。じぃーじには、子供の頃から、世話になっておるからな」

 「プルート様がそういうのなら、好きに呼んでください」

 「ところで、急用とは、何かあったのか」

 「はい。先程、教会の入信の儀式の出来事なのですが、10歳くらいの女の子が、にぎりしめた石が、濁りのない、綺麗な真っ黒の石になりました。しかも、女の子は、どことなく、リプロ様に似ています」

 「それは、誠か」

 「はい。間違いありません。私自身の目で、確認してきました」

 
 ブラカリの町は、魔王様を崇拝するようになり、100年を過ぎた頃から、魔王様の使いが、来られるように、なったのである。

 ブラカリの町は、150年前の、あの出来事以来、国王指導の、神守教会の教えを退き、また、いかなる、嫌がらせにも屈せず、魔王様の言葉を守り、種族間の争いを避け、全ての種族が共存できる、町作りに、励んでいた。

 その功績が、認められ、魔界からの使者より、高度な、魔石技術を習得することが、できたのである。しかし、その魔石技術は、あくまでも、生活環境の改善に使われ、軍事目的の使用は、禁止されている。


 先日、ブラカリに訪れたのが、魔王様の血を引く、10歳の男の子であった。名前はリプロといい、魔王様の銅像とそっくりの男の子であった。



 「そうか、それで、本人は魔王様の娘だと、名のったのか」

 「いえ、何かしらの事情で、記憶がないとのことでした。それに、いい伝えによると、魔王様のツノは、黒く輝いているとなっています。リプロ様のツノも黒く輝いていました。でもあの女の子のは、白いツノでした。それに、あの子から感じる、魔石のオーラは、魔族の放つ、漆黒のオーラではなく、白く優しいオーラでした。魔族というよりも、天使のような雰囲気です」

 「私も、確認したいところだが、もし魔王様の血を、引く者であったら、失礼があっては困る。どうすれば、良いかな」

 「あまり詮索はしない方が、妥当だと思います。こちらからは、動かない方が良いでしょう」

 「そうだな。その子の好きなように、この町を楽しんで、もらおう。それが、この町の領主としての、役割だな」

 「はい、それが1番だと思います」



 
 私は、教会を出ると、宿屋に戻った。宿屋に戻ると、ロキさんとポロンさんが、何か深刻な話しを、しているみたいだ。


 「ただいま」

 「おかえり、ルシスちゃん。教会は、どうだったかな」

 「すごく、楽しかったです」

 「そうか、それなら良かったね。今から、トールのいる大食館に行くよ。そこで、少し大事な話しがあるの」

 「はーい」

 
 私たちは、大食館に向かった。

 大食館に着くと、トールさんの居場所は、すぐにわかった。一際お皿が、山積みにされているテーブルが、トールさんの席に間違いない。

 
 「トールお姉ちゃん」

 
 私は、お皿が、山積みにされているテーブルに向かって、叫んだ。


 「なんだ」

 
 やっぱり、トールさんのテーブルに間違いなかった。


 「トール、大事な話しがあるの、席を移動しましょう」

 「何か、あったのか」

 「そういうわけではないのですが、ここだと、周りがうるさいので、静かな個室に変えてもらいましょう」

 「わかったぜ」


 私たちは、席を移動させてもらって、奥の個室の部屋に入った。


 「それで、どんな話しだ」

 「私がお話しします」


 すると、ポロンさんが、なぜ、国を離れて、旅をすることになったのか、話し始めた。

 
 「そんなことがあったのか」

 「はい、情け無いことですが、でもやっと、精霊神様の情報を、手に入れましたわ」

 「誰にでも、失敗はあるさ。しかし、ポロンが寝坊とは、信じられないな」

 「トール、余計な事は言わないの」

 「いいじゃないか、それが理由で、お酒はを飲まないように、なったのか」

 「はい、そうです。精霊神様の加護を受けるまでは、お酒は、飲まないと、決めたのですわ」

 「精霊神は、ドワーフの国にいるんだな。この依頼が、終わったら、次はドワーフの国に行くか」

 「私も、そうしようと思っているの」

 「ありがとうございます」

 「それで、もし精霊神の加護を受けたら、今後はどうする」

 「今は、まだ、冒険を続けて行こうと、思っていますわ、でも、一度国へ戻って、報告はしたいと、思っていますわ」

 「よし、ドワーフの次は、エルフの国だな。それにしても、ポロンが王女様だったのか」

 

 
 ポロンさんが、エルフの王女様だったのは、びっくりしたが、これで、今後の冒険のプランが決まった。王都への護衛が終わったら、Cランク冒険者の、認定を受け、そして、ドワーフの国へ向かって、精霊神を探す。楽しい冒険になりそうだ。


  

 「プルート伯爵様、何かあったのですか」

 「いや、大した事はない。それで、そのルシスという子の情報が、知りたいとの事だな」

 
 プルート伯爵は応接室が出ると、2階にある、小さな客間に戻った。

 その客間には、アメリア、オリビアがいた。

 



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