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素材集め

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 請求額を見たロキさんは、一気に酔いが覚めてしまった。毎度のことながら、トールさんの食費代には、困ったものである。

 明日になれば、ゴブリンキングの討伐の報酬が入るから、問題ないだろう。とロキさんは呟きながら、食堂を出たのであった。

 
 
 食堂を出ると、トールさんは、まだ飲み足りないと言って、1人で飲み屋街に消えていった。


 「トールさんは行っちゃいましたね。。」

 「そうだな。大きな仕事を終えた後だし、好きなだけ、食べてきたらいいだろう。食べることが、トールのパワーの源だからね。私たちは、帰ってゆっくりとしましょう。」

 「はい、そうしましょう。私は、朝から探索に行きたいので、戻ったら、すぐ寝ます」

 「ルシスちゃんは、元気だね。私は、昼までのんびりするわ」

 「私は、冒険者ギルドに行かないとね。魔石や素材を換金しないといけないからね。そのあとは、のんびりさせてもらうよ」


 三人は宿屋に戻ると、すぐに眠りについたのであった。


 翌朝、私が1番に目覚めて、すぐに素材探しの探索に、出かけることにした。宿屋の入り口で、トールさんとすれちがった。


 「今から、食べに出かけるのか?」

 「ちがいます。作りたい物があるで、その素材を取りにいってきます」

 「食べるものか?」

 「はい、そうです」

 「楽しみにしてるぜ」

 「期待しといてくださいね」


 そう告げると、私は探索へと向かった。トールさんは、朝まで飲んでいたみたいなので、今から眠るのであろう。

 今日の探索で、手に入れたいものは、油を作るための原料と、唐揚げに適した鶏肉だ。アカシックレコードには、より適した食材の候補が、出てくる。鶏肉は、町の市場でも売られているが、私が求めているのは、最高級の食材である。

 この町から、北西に進むと、ユイール大草原がある。そこの植物が、油を作るのに1番適しているらしい。まずは、そこで、多量の油を作ろう。馬で行ってもいいのだが、私は試したいことがあった。

 それは、私の魔人としての能力で、空を飛ぶことである。魔人の一部の者は、翼を自在に出すことが、出来るのである。エスパース『異空間』の訓練で、翼と風魔法の応用で、かなりのスピードで、飛べるようになってはいるが、人界で試すのは、初めてである。

 私は、人が来ないところまで来ると、翼を背中から出してみた。翼は服から生えているかのごとく、あらわれた。私の翼は、悪魔が生やしているような、黒くて尖った形ではなく、丸みを帯びた、白い天使の翼のような形をしている。

 このような形をしているのは、魔石を一度、浄化しているのが、原因である。

 私は翼をバタつかせて、上昇し、次に風魔法を使い、スピードを上げて、目的地に向かった。特訓の成果もあり、自在に空を飛ぶことが出来て、満足している。目的地に着くまでに、いろんな飛び方を、試しながら進むことにした。

 私はユイール大草原に、たどり着いた。まずは、植物を採取する前に、やらなければいけないことがある。それは、ユイール大草原をナワバリとする、バシリスクとコカトリスの群れの討伐である。ユイール大草原は、この2種類の魔獣の群れがいるので、この大草原に立ち入る者は、いないのである。

 バシリスク、コカトリス共に討伐難易度はDランクであるが、それが群れをなしているとなると、難易度は、かなり上がるのである。

 私の攻撃魔法のメインは、大天使ウリエル様から授かった、光と炎の2種類の魔法である。光魔法は、レアな魔法なので、使用していない。なので、今回は光魔法で、戦う事にした。

 私は、魔力を右手に集中させ、大きな光球をつくりだした。そして、その光球を、一旦上空に投げ、さらにその光球に魔力を注ぎ、光球を大きくした。大きくなった光球は、全長100mくらいになる。そして、その光球から、雨のような、光の無数の矢を、魔獣目掛けて、撃ち放った。

 無数の光の矢は、大草原にいる、バシリスク、コカトリスの群に突き刺さる。数分後には、無数の死体が転がっていた。

 これでゆっくりと、素材の回収ができる。私は目当ての植物を、ひたすら回収しまくるのである。昼過ぎには、かなりの量を回収することができた。お昼からは、回収した植物から、油を作ることにした。魔法を使えば簡単作れるが、作る量が膨大な為、時間がかかりそうだ。

 3時間くらいかけて、やっと油を作ることができた。出来上がった油は、収納ボックスに入れておく。異世界転生おたくだった私が、真っ先に作った物である。異世界転生と言えば、定番アイテムである。

 次は、鶏肉だ。実はコカトリスの肉が、唐揚げに1番最適な鶏肉であった。そう、まさにユイール大草原は、唐揚げ大草原であった。私は、光魔法のレーザービームを使い、唐揚げに使える部位と、魔石を回収するのであった。

 日が暮れるころには、解体作業も終わり、急いで町へ帰ることにした。

 宿屋に戻ると、ロキさんに帰りが遅いと、怒られてしまった。私がある程度強いのは、理解しているが、それでも、まだ10歳の女の子であるので、心配せずにはいられないらしい。


 「ごめんなさい、ロキお姉ちゃん。明日からは、早く戻ってきます」

 「もしかしたら、何かあったのかもしれないと、心配してたんだぞ。無事だから良かったが、本当に明日からは早く、帰ってきてね」

 「はい、わかりました」

 「話しは変わるが、さっき冒険者ギルドから、連絡がきて、領主様がお礼をしたいらしい。それで明後日にでも、ラディシュの町へ行くことになったよ」

 「はい、わかりました。それなら、明日までゆっくりできるんですね」

 「そうだよ。でも、ルシスちゃんのことだから、明日もお出かけするのかな」

 「はい、まだ集めたい素材があります」

 「明日は早く帰るんだよ」

 「はい」

   「今日は、私が取ってきた素材で、料理を作りますが、食べてくれますか」

 「もちろんだよ。トールから、聞いていたから、楽しみにしていたよ」

 「それは嬉しいです。さっそく作りますが、トールさんは?」

 「それが、昨日の食堂に、昼頃に出かけてから、まだ帰ってきていないんだよ」


 あのトールさんだ、昼から飲んで食べて、騒いでいるのだろう。仕方がない、トールさんは、まだ帰ってきていないが、料理を作ることにした。

 コカトリスの唐揚げと、市場で買ったじゃがいもで、フライドポテトを作った。ポロんさんには、市場で買った魚で、フィッシュフライを作ってあげた。


 「なにこれ、サクサクして美味しいですわ。今までに、食べたことのない味ですわ」


 ポロンさんからは、大絶賛だ。


 「これはすごい。ルシスちゃんは、冒険者を辞めて、料理人なった方が、いいのかもしれないね」


 ロキさんからも、大絶賛だ。頑張って作って、本当によかった。

 しかし、トールさんは、今日も朝帰り確定みたいだ。せっかく喜んでもらおうと、思ったのに残念である。
 


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