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 「本当に申し訳ない」


 ギルマスと受付の女性が頭を下げて謝っている。


 「いえ、気にしないでください」

 「それで、話しが聞こえていた、かもしれないが、パースリの街で、大変な事がおきているんだ」

 「知っています」

 「それなら、話しが早い。ぜひ、討伐に参加してくれないか」

 「無理です」


 ロキさんが答える前に、私が答えてあげた。


 「そこをなんとか、お願いします」

 「嫌です」

 
 また私が答えた。


 「すまないが、お嬢ちゃん。私はロキさんに、お願いしているんだよ。おとなしくしてもらえないか「

 「無理なものは無理です」


 ギルマスは、イライラしているが、怒ることも出来ず、黙ってしまった。

 私はさっき、無視されたので、そのお返しをしている。


 「ルシスちゃん、もう、そのへんにしといてあげて。ギルマス殿、申し訳ございません。私の仲間が少しいじわるを、しているみたいで」

 「どういうことですか?討伐に参加してくれるのですか?」

 「実は、もう討伐は完了しました。パースリを占拠していたゴブリンは全滅しました」

 「えーーーー!」


 静まりかえっていた、ギルドの至る所から、驚きの声があがった。

 
 「どういうことですか?詳しく教えてください」


 そうすると、ロキさんはパースリの町での状況を、そして、なぜ私たちが、この町のギルドに訪れたのか説明した。


 「やはり、ゴブリンキングまでいたのか。それにしても、よくゴブリンキングを、討伐する事ができたな」

 「それは、ルシスちゃんのおかげです。詳しい事は言えませんが、見た目は、可愛い子供ですが、頼りになる仲間です」

 「だろうな。私は一目見ただけで、このお嬢ちゃんは只者ではないと感じたよ」


 はい。嘘です。このギルマスは私の事は、ただ子供と思っていました。まわりには、何人かの冒険者がいるので、見栄をはったのである。


 「お嬢ちゃんすごいねー。こんな小さいのに、立派な冒険者だねー」


 私に対するギルマスの態度が、一変したのであった。


 「だれか、申し訳ないが、この事をすぐに領主様に伝えたい。もう、日が暮れてかなり危険だが、この町から、ラディシュの町へ急げば、2時間もあれば、行けるはずだ。行ってくれる者はいないか」

 「私たちが行くわ」


 3人組の女性パーティーが声をあげた。


 「すまない。助かる「

 「いえ、かまいませんわ。こんな可愛い女の子が、パースリの町を救ってくれたみたいだし、私たちも、何か力になりたいわ」


 そういうと、ギルマスから手紙を受け取り、すぐにラディシュの町へ向かった。


 「パースリの町の奪還報酬なんだが、領主様への報告の後になるが、かまわないだろうか。実は、まだ報酬額も詳しくは設定されていなくてな」

 「かまわないですよ。2、3日は、この町に滞在する予定なので、報酬が決まったら受け取りきます。それに、素材も買い取って貰いたいものがありますので」

 そういうと、私たちは冒険者ギルドを出て、食堂へ向かった。


 ロキさんは、何度もこの町に訪れているみたいなので、食堂の場所は把握しているみたいだ。

 私たちは、町の中心部にむかった。この辺りは大きな屋敷が多い。お金持ちや、貴族が住む地区であるらしい。
 
 
 この世界では、冒険者の身分は、高い方である。命を懸けて、魔獣を倒しているのである。そんな冒険者を見下す者はいない。

 だから冒険者を目指す者は多い。しかし、大半の冒険者は命を落とすか、諦めるかである。

 冒険者の世界は、実力が全てである。いくら頑張っても、実力ないものには、務まらないのである。


 「たぶんここだな」


 立派なお屋敷である。しかし看板などはなく、見た感じは、食堂を営んでるようには、見えない。

 私たちは、屋敷の門の前に立っている、門兵に声をかける。


 「ここで食事をできると聞いたのですが」

 「はい。できます。紹介状をお持ちですか」

 「仲間の1人が先に、来ているはずなんだが」

 「あなた方が、ロキ様とルシス様でしょうか」

 「はい、そうです」

 「念のために、身分証を見せていただいてよろしいでしょうか」


 私たちは身分証をみせると、門兵は、屋敷の中に案内してくれた。

 屋敷に入ると、いくつかの部屋があり、その一つの部屋に案内された。ここはいわゆる個室の食堂みたいである。


 「遅かったなー。もう食べてるぞ」


 当然の結果である。トールさんが食事を、待つなんて、ありえないからである。


 「早くお前らも、注文しろよ。この肉料理が1番おいしいぞ」

 「いえいえ、この魚料理のが美味しいですよ」


 ちゃっかり、ポロンさんも食事をしている。

 私たちは、トールさんのおすすめの料理を、頼むことにした。


 「今後の事なんだが、2、3日はこの町に滞在しようとおもう。今回の報酬額も、まだ決まっていないし、連戦続きで、休息が必要だと思う。


 「それで、いいんじゃねぇ。俺はここで飯が食えるなら、ずっと滞在してもいいぞ」

 「私も少しのんびりしたいので、賛成ですわ」

 「私もやりたい事があったので、賛成です」


 私はこの異世界にきて、納得いかないことがあるのだ。ここの世界の食べ物は、そんなに悪くはない。しかし、油であげた料理がないのである。

 私は唐揚げ、フライドポテトを食べたい。この欲求は抑える事が、できなくなっているのである。

 私に力を授けてくれた、天使の1人、アリエル様の能力を使えば、なんとかなるのである。

 アリエル様の能力は、自然を作り出す能力である。それを、私なりにアレンジし、努力した結果、アカシックレコードという能力を得ることができた。

 この能力は、私が望む物を作り出す為の、レシピが現れる能力である。

 レシピには、どの素材を使い、その素材がどこにあるか、また、どのように作るか記載されている。

 しかし、望む物を、全て作れるわけではない。あくまで、この世界にある素材で、できる物だけである。


 この休息期間で、作りたい物を、たくさん作るつもりである。


 「そしたら、決まりだね。みんなゆっくり休んで、すごしましょう」

 私たちはおおいに、食事を楽しんだ。トールさんはいつも以上に、たくさん食べて、飲んでいる。

 トールさん以外のみんなは、どれくらいの請求書がくるのか、怖くなったのであった。


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