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討伐クエスト
しおりを挟む町から出ると、森へ続く道がある。私が町に来る時に通った道だ。あの時に通る道が、逆方向だったら、私は、ベアーウルフの餌になっていたかもしれない。
森は魔獣の住処になっている。森の中心に近づくと、より強い魔獣が住んでいる。森には、魔獣が食べる動物、果物、植物。さらに弱い魔獣は、強い魔獣の餌になる。
魔獣は、他の魔獣の魔石を食べることで、さらなる力を手に入れる事ができるのである。それが魔獣の特性でもある。
この世界で、生きている全てのものは、魔石から得る魔力により生きている。
人間、魔人、エルフ族、獣人、魔獣、動物など、さまざま生き物は、全て魔石が、心臓の代わりになっている。
その中でも魔獣のみが、魔石を喰らい能力を高めていくのである。
「ロキお姉ちゃん。このパーティーの名前は、なんて言うのですか」
そういえば、このパーティーの名前や、冒険者ランクの事を聞いてなかったので、確認することにした。
「ラストパサー【最後の晩餐】だよ。略してラスパと呼ばれてるよ」
「なんでラスパにしたのですか?」
「トールが決めたんだよ。冒険者は、いつ死んでもおかしくない。だかららクエストを行う前日は、悔いのないように、たくさん食べることにしようってことで、ラストパサーというチーム名に、したんだよ。」
「でもトールがあまりにもたくさんたべるから、最近は、暴食って呼ばる事が、多くなってきたけどね」
それで今回の討伐クエストの前日は、あんなに食べていたのかな。でもクエスト関係なしに、いつでもたくさん食べていそうな気がするので、暴食のが、あってるのかもしれない。
「冒険者ランクはどうなってますか?」
「Dランクだぜ。」
トールさんが答えた。
この世界の冒険者ランクは、下はGから始まってAまである。Dということは、中級冒険者の上のクラスだ。
Dランク冒険者になると、他国への移動もかなり楽になる。Dランク冒険者証があれば、手続きをせずにいろんな国へ行くことができるのである。
「すごいですね。」
「でも、Cランクに上がるには、自国じゃないと上がりにくいから、足踏み状態だ。」
「トールお姉ちゃんはこの国の出身じゃないのですか?」
「そうだ。俺とロキはスカンディナビア帝国から来た。」
「ポロンはエルフの国アルフレイム王国出身だしな。」
「冒険者組合は、国、人種問わず公平な審査を行わないといけないが、やっぱり、その国への貢献度の高さが、ランクアップに影響するからな。」
「国の重要なクエストは、その国の出身者の冒険者が、優先的に依頼を受けることになるから、仕方がないことなんだ。」
「だから、俺らみたいな他の国の冒険者は、町に危険をもたらす、魔獣を狩る事がメインなんだよ。」
トールさんのいうとおり、国の重要な案件を、他の国の冒険者に頼むと、機密情報が、漏れるかもしれないから危険なのである。
Cランク冒険者は、上級冒険者といわれクラスもC1、C2、C3と分かれてる。最上級のC1冒険者は、ほとんどが、貴族お抱えの冒険者になり、貴族から多大なる支援を受けている。
「たいへんだけど、がんばってCランク冒険者目指しましょう。」
「もちろんだぜ。」
私は、なぜロキさん達が、この国きたのか、知りたかったけど、あえて聞かなかった。私も事情があって、この人界にきた。ロキさんたちも、わけあってこの国に来たのであろう。本人達から話してくれるまで待つ事にした。
「何かきますよ。」
私は少し離れたところから、20体くらいの、魔力を感じた。たぶんそんなに強くない魔獣だ。
「それはホントなの?」
「はい。私はある程度離れた距離でも、魔力を感じることができます。」
「それは助かるわ。」
「このまま30メートルくらいのあたりに、魔獣が20体くらいいます。そんなに強くない魔獣だと思います。」
「よし、この先は俺とロキが先頭に立つ、ポロンとルシスは後方で援護を頼む。」
「わかりました。」
「たしかにこちらに、何か向かってきてるわ。」
「いつでもこいやー」
トールさんの武器はハンマーである。魔力をハンマーにこめると、ハンマーはみるみる大きくなる。トールさんは、自分の背丈ほどあるハンマーを片手で持っている。
ロキさんは、細長い剣が武器である。魔力をこめると、赤く輝き炎をまとっている。
ポロンさんの武器は弓矢でる。矢はもっていない。魔力を込めて撃つと、いろんな属性の矢が出るみたいである。回復の矢なんてものもあるらしい。
そして私の武器は…何もない。なにも用意してなかった。私は拳ひとつで成り上がってやる。って冗談はさておき、基本、魔法攻撃がメインなので、武器はいらない。必要なら魔力の剣を作れるし。
「来るぞ。」
「ブラックウルフだ。」
ブラックウルフは、体長1mの狼の魔獣である。討伐難度はFの弱い魔獣である。
ブラックウルフがトールさんに襲い掛かる。トールさんはハンマーを、すばやくふりおろす。
「グチャ」
もぐら叩きのように、ブラックウルフが襲い掛かると、ハンマーを振りおろす。
「グチャ」 「グチャ」 「グチャ」
「あー面倒だぁー」
そういうとトールさんはハンマーを振り回して、森の木をなぎ倒しながら、ブラックウルフを全滅させた。
「楽勝、楽勝」
「ブラックウルフなんて弱すぎだぜ」
「さすがだなトール。もう少し森を進もう」
「さっきよりもかなり大きな魔力を感じます。」
「ルシスちゃんどれくらい先から。」
「50メートルくらい先だと思います。」
「よしわかったぜ。さっきと同じく俺とロキが前に行くぜ。」
「わかりました。」
少し歩くと森はひらけて広い草原が現れた。
「あれかぁー」
「あれだね。」
「あれだと思います。」
「あれですね。」
草原の真ん中で、熊みたいな大きなオオカミがいる。あれがベアーウルフである。こちらを睨みつけて、様子をうかがっている。しかも1体じゃなく、10体もいる。
「こりゃきついなぁー。」
「きついですね。」
「きついと思います。」
「楽勝でしょー」
「えーーーーー」
私以外の3人は私の発言にすごく驚くのであった。
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