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第70話 口論
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「本題を話してください」
ゲームには登場しないバランス隊長が導く駅の名を私は早く知りたい。
「わかった」
バランス隊長の大きな笑い声は消え伏せて真剣な面持ちで話し出した。
「今メテオール副団長はエンデデアヴェルトにて幽閉されている。メテオール副団長の救出にむかったドナーからの連絡も途絶えた。しかも、未だにエンデデアヴェルト側からの要求は何もない。国王陛下は最終手段としてストロフィナッチョ辺境領の戦闘狂兄妹を呼び寄せてメテオール副団長の奪還を決断した。そこで、ローゼ嬢とイーリス嬢の光魔法と光もどき魔法に頼りたいと思っている」
バランス隊長の作戦は、ローゼとイーリスの魔法で傀儡兵を無効化させて、一気にエンデデアヴェルトを制圧する作戦である。ゲームの知識ではエンデデアヴェルトの傀儡兵は5000人、そのうちスーパー傀儡兵が500人ほどだ。ゲームのローゼなら魔力回復のポーションを多量に持って行けば、全員の傀儡化を解くことができるので楽勝だが、リアルではそう簡単にはいかないかもしれない。そして、ローゼとイーリスのレベルがわかれば正確な数字を算出できるが、レベルがわからない以上、どれだけの傀儡兵を解呪できるかは未知数とも言える。
「バランス隊長、正確なエンデデアヴェルトの傀儡兵とスーパー傀儡兵の数はご存じでしょうか」
王国がどれほど現状を把握しているか確かめる必要がある。
「すまない、正確な数は不明だ。それに傀儡兵とスーパー傀儡兵の違いは判断できない」
「……」
私は唖然とした。王国側はエンデデアヴェルトの状況を全く把握していないようだ。
「エンデデアヴェルトの人口は5万人程度なので、おそらく5000人程は傀儡兵になっているでしょう。そのうち500人前後がスーパー傀儡兵と考えても問題ないと思います。ローゼの広範囲光魔法でも1度に300人、回数は10回が限界だと思います。イーリスさんの光もどき魔法なら1度に20人、回数は10回が限度です。3分の2程度なら解呪は出来ると思いますが、雑魚に全精力を注ぐのは無謀だと思います」
これはあくまで私の推測なので、実際はこの数を上回るかもしれないし、下回るかもしれない。しかし、本丸はエンデデアヴェルトの支配者である。雑魚相手にローゼの力を全て使うのは無策と同じだ。
「ドナーの助言通りだな。君はエンデデアヴェルトに行ったことがないのに敵の数まで把握しているのだな。敵にすると末恐ろしいが味方なら心強いものだ」
バランス隊長は私の話を疑うことなく素直に信じてくれた。
「これはあくまで推測です。実際の数は現場に行かなければわかりません」
ゲームとは状況は異なっているはずだ。私のゲームの知識がどこまで通用するかはわからない。しかし、5000人を大きく下回る可能性は低いだろう。
「俺たちがメテオール副団長とエンデデアヴェルトへ向かった時は、2000人以上の傀儡兵によって進行を阻止された。5000人という数はあながち間違ってはいないだろう。しかし、ローゼ嬢とイーリス嬢、それに我が魔法師団が抱える順聖女らに傀儡兵を解呪させて、本丸をソレイユ兄妹に倒してもらえば問題はないと思っている」
戦闘狂兄妹に本丸を倒してもらう作戦には私は反対だ。何度も言うがローゼの絶対的な強さを雑魚に当てるのはもったいない。
「愚策過ぎます」
「なんだと!俺をバカにしているのか」
バランス隊長は顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。
「はい。それならズバリ聞きますが、エンデデアヴェルトの支配者を教えてください」
「それは……言えない」
バランス隊長は支配者が誰だか知っているからこそソレイユ兄妹に任せれば問題ないと思っている。しかし、私もわかっているからこそ愚策とはっきりと言ったのだ。
「エンデデアヴェルトの支配者にソレイユ兄妹だけで挑むのは危険過ぎます」
「ちょっと待て、その言葉聞き捨てならないぞ。リーリエ……俺たちでは役不足だと言いたいのか」
私の言葉を聞いたソレイユの雰囲気が一変した。先ほどまでの温和な雰囲気は一瞬で消え去り、冷酷で残忍な目つきに変わる。そして、凍てつく空気が部屋に流れ出す。
「相手は傀儡兵を操作できる闇魔法の使い手です。闇魔法の前ではソレイユ様でも苦戦をするのは必須だと思います」
「貴様に俺の力量がわかると言うのか」
ソレイユが怒りの言葉を発したと同時に部屋が冷凍庫のように凍り付き、私たちの体温も急降下して、意識を失いそうになる。
ソレイユは2属性持ちで、火属性を属性突破した岩漿属性と水属性を属性突破した氷河属性を有している。岩漿《がんしょう》属性のスキル大噴火、氷河属性のスキル永久凍土、この2つのスキルはリュンヌと同様に全体攻撃となる。
今、ソレイユは怒りで自分をコントロールできなくなり、スキルの永久凍土が発動して、部屋を一瞬で凍り付かせ、私たちまで凍り付きそうになる。
「canceled」
危険を察知したローゼは直ぐに簡易の光魔法を唱えた。すると凍り付いた部屋は元の姿に戻る。この光魔法は魔法の発動を消し去ることができるチートに近い光魔法だ。しかし、今の段階でcanceledを使用できるのはおかしい。canceledは恋愛値を向上させてレベル15になると手にする魔法だ。なぜcanceledが使用出来たのか、後でローゼに確認する必要があるだろう。
「兄様もバランス隊長も落ち着いてください。リーリエさんも2人を煽るような言い方はやめてください」
「ソレイユ様、バランス隊長、失礼な発言申し訳ありません」
「こちらこそすまない」
「俺も大人気なかった。申し訳ない」
ローゼのとっさの判断で最悪の事態は免れた。
ゲームには登場しないバランス隊長が導く駅の名を私は早く知りたい。
「わかった」
バランス隊長の大きな笑い声は消え伏せて真剣な面持ちで話し出した。
「今メテオール副団長はエンデデアヴェルトにて幽閉されている。メテオール副団長の救出にむかったドナーからの連絡も途絶えた。しかも、未だにエンデデアヴェルト側からの要求は何もない。国王陛下は最終手段としてストロフィナッチョ辺境領の戦闘狂兄妹を呼び寄せてメテオール副団長の奪還を決断した。そこで、ローゼ嬢とイーリス嬢の光魔法と光もどき魔法に頼りたいと思っている」
バランス隊長の作戦は、ローゼとイーリスの魔法で傀儡兵を無効化させて、一気にエンデデアヴェルトを制圧する作戦である。ゲームの知識ではエンデデアヴェルトの傀儡兵は5000人、そのうちスーパー傀儡兵が500人ほどだ。ゲームのローゼなら魔力回復のポーションを多量に持って行けば、全員の傀儡化を解くことができるので楽勝だが、リアルではそう簡単にはいかないかもしれない。そして、ローゼとイーリスのレベルがわかれば正確な数字を算出できるが、レベルがわからない以上、どれだけの傀儡兵を解呪できるかは未知数とも言える。
「バランス隊長、正確なエンデデアヴェルトの傀儡兵とスーパー傀儡兵の数はご存じでしょうか」
王国がどれほど現状を把握しているか確かめる必要がある。
「すまない、正確な数は不明だ。それに傀儡兵とスーパー傀儡兵の違いは判断できない」
「……」
私は唖然とした。王国側はエンデデアヴェルトの状況を全く把握していないようだ。
「エンデデアヴェルトの人口は5万人程度なので、おそらく5000人程は傀儡兵になっているでしょう。そのうち500人前後がスーパー傀儡兵と考えても問題ないと思います。ローゼの広範囲光魔法でも1度に300人、回数は10回が限界だと思います。イーリスさんの光もどき魔法なら1度に20人、回数は10回が限度です。3分の2程度なら解呪は出来ると思いますが、雑魚に全精力を注ぐのは無謀だと思います」
これはあくまで私の推測なので、実際はこの数を上回るかもしれないし、下回るかもしれない。しかし、本丸はエンデデアヴェルトの支配者である。雑魚相手にローゼの力を全て使うのは無策と同じだ。
「ドナーの助言通りだな。君はエンデデアヴェルトに行ったことがないのに敵の数まで把握しているのだな。敵にすると末恐ろしいが味方なら心強いものだ」
バランス隊長は私の話を疑うことなく素直に信じてくれた。
「これはあくまで推測です。実際の数は現場に行かなければわかりません」
ゲームとは状況は異なっているはずだ。私のゲームの知識がどこまで通用するかはわからない。しかし、5000人を大きく下回る可能性は低いだろう。
「俺たちがメテオール副団長とエンデデアヴェルトへ向かった時は、2000人以上の傀儡兵によって進行を阻止された。5000人という数はあながち間違ってはいないだろう。しかし、ローゼ嬢とイーリス嬢、それに我が魔法師団が抱える順聖女らに傀儡兵を解呪させて、本丸をソレイユ兄妹に倒してもらえば問題はないと思っている」
戦闘狂兄妹に本丸を倒してもらう作戦には私は反対だ。何度も言うがローゼの絶対的な強さを雑魚に当てるのはもったいない。
「愚策過ぎます」
「なんだと!俺をバカにしているのか」
バランス隊長は顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。
「はい。それならズバリ聞きますが、エンデデアヴェルトの支配者を教えてください」
「それは……言えない」
バランス隊長は支配者が誰だか知っているからこそソレイユ兄妹に任せれば問題ないと思っている。しかし、私もわかっているからこそ愚策とはっきりと言ったのだ。
「エンデデアヴェルトの支配者にソレイユ兄妹だけで挑むのは危険過ぎます」
「ちょっと待て、その言葉聞き捨てならないぞ。リーリエ……俺たちでは役不足だと言いたいのか」
私の言葉を聞いたソレイユの雰囲気が一変した。先ほどまでの温和な雰囲気は一瞬で消え去り、冷酷で残忍な目つきに変わる。そして、凍てつく空気が部屋に流れ出す。
「相手は傀儡兵を操作できる闇魔法の使い手です。闇魔法の前ではソレイユ様でも苦戦をするのは必須だと思います」
「貴様に俺の力量がわかると言うのか」
ソレイユが怒りの言葉を発したと同時に部屋が冷凍庫のように凍り付き、私たちの体温も急降下して、意識を失いそうになる。
ソレイユは2属性持ちで、火属性を属性突破した岩漿属性と水属性を属性突破した氷河属性を有している。岩漿《がんしょう》属性のスキル大噴火、氷河属性のスキル永久凍土、この2つのスキルはリュンヌと同様に全体攻撃となる。
今、ソレイユは怒りで自分をコントロールできなくなり、スキルの永久凍土が発動して、部屋を一瞬で凍り付かせ、私たちまで凍り付きそうになる。
「canceled」
危険を察知したローゼは直ぐに簡易の光魔法を唱えた。すると凍り付いた部屋は元の姿に戻る。この光魔法は魔法の発動を消し去ることができるチートに近い光魔法だ。しかし、今の段階でcanceledを使用できるのはおかしい。canceledは恋愛値を向上させてレベル15になると手にする魔法だ。なぜcanceledが使用出来たのか、後でローゼに確認する必要があるだろう。
「兄様もバランス隊長も落ち着いてください。リーリエさんも2人を煽るような言い方はやめてください」
「ソレイユ様、バランス隊長、失礼な発言申し訳ありません」
「こちらこそすまない」
「俺も大人気なかった。申し訳ない」
ローゼのとっさの判断で最悪の事態は免れた。
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