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第53話 究極の光魔法
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ここでゲームでのヘスリッヒとの対戦の説明をしておこう。ヘスリッヒは自分からは攻撃せずに、代わりに傀儡兵が攻撃することになる。しかもその傀儡兵は、傀儡の香によって傀儡された一般兵ではなく、ヘスリッヒが黒い水晶を投げつけて姿を現すスーパー傀儡兵であった。スーパー傀儡兵は一般傀儡兵の10倍のステイタスを持ち、30体倒さないとヘスリッヒに攻撃できない演出であった。ローゼなら浄化して傀儡を解除できるので簡単に乗り切ることができる。このゲームの知識があったので、地下室の水晶を見た時に、水晶の中身は人間だとわかったのである。しかし、ゲームで出てきたのは黒い水晶だけなので、紫色の斑点模様の水晶はゲームでは見たことはない。傀儡毒水晶とは黒い水晶と何が違うのか検討もつかないが、壊すと中の人間が出てくるのは同じであろうと私は推測した。
「フラムで間違いないわ。ローゼ、水晶を壊すからフラムを浄化してね」
私はローゼに指示を出す。
「わかりました」
ここで私は1つだけ注意しなければならない。ゲームはターン制バトルなので、ローゼが光魔法を詠唱する時間を律儀に待ってくれる。しかし、ここはリアルの世界、今までは運も味方してローゼが詠唱をする時間があり、危なげなく光魔法を放つことができた。もし私が水晶を割ったと同時にフラムが襲ってきたら身も蓋もない。
「ローゼ、割るわよ」
水晶が割れてフラムが襲って来るとしたらローゼでなく私が標的になるのは間違いない。そこで私の役割は水晶を割ることとフラムの攻撃から逃げることとなる。逃げる際に誤って他の水晶を割ると敵が増えるので、慎重に逃げる必要があった。
「えい」
私は水晶をできるだけ遠い位置に投げた。水晶は床に落下すると『パリン』と心地よい音をだして砕け散り、水晶の中から紫色の煙がモクモクと湧き出る。
「ローゼ、お願い」
「わかりました」
ローゼは光魔法の詠唱を唱える。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください」
「あぁぁ~~~~~」
煙の中から身の毛がよだつ憎悪の声が響き渡る。
「愚者の呪いにより体を蝕まれた迷い人に救いの手を差し伸べてください」
「リーリエ、リーリエ、お前だけは絶対に許さない。俺の人生を台無しにしたお前だけは絶対許さない」
紫色の煙の中から全身をゼブラ模様のタトゥーが施されたフラムの後ろ姿が見えた。
「邪悪の根源たる黒き力を光の力で打ち払い」
「み~つけた」
フラムは急に首を90度に曲げて、背中をみせたまま私を睨みつける。私を見るフラムの目は瞳孔がなく白目しか存在しなかった。
「傷ついた体と心を元の姿にお戻しください」
ローゼの詠唱が終了しフラムの体が金色の光に包まれる。フラムが無駄口をのたまってくれたおかげで私は万死に一生を得た。
「リーリエさん……申し訳ありません。解呪に失敗しました」
金色の光に包まれたフラムだったが、1秒後には光の膜は『バキバキ』と鈍い音を立てながら粉々に砕け散ってしまった。
「リーリエ、今すぐに殺してやる」
フラムは背中を向けたまま左右の腕を『ゴキゴキ』と歪な音を立てて私の方に向ける。フラムは背中を正面にして頭と手を反転させたのであった。
「やめてください」
ローゼは両手を広げて私の前に立つ。
「邪魔をするな。そこをどけ」
「どきません。私がリーリエさんを守ります」
ローゼは黄金の眼差しを輝かせながらフラムをにらみつける。するとローゼの体から金色のオーラが溢れ出て、その金色のオーラは部屋の中をじわりじわりと覆いつくす。
「うわぁ~~」
黄金のオーラに触れたフラムは異形の雄たけびを上げて後ろに倒れ込み、ブリッジをした姿のまま4つの手足を動かして、階段を全速力で登り始めた。
「ローゼ、そのオーラは光魔法なの」
「私にもわかりません。でも、リーリエさんが無事でよかったです」
ローゼは眩いほどの美しい笑みを浮かべて安堵した。
「ありがとう、ローゼ。あなたのおかげで助かったわよ」
詠唱無しで光魔法を使えるようになるのは、完全な聖女になった時である。まだローゼは成長過程なので、詠唱なしでは光魔法を発動できないはずであった。ゲームで恋愛を主軸としたローゼが完全な聖女になるには、ハーレムパーティーたちとの恋愛値を上げる必要がある。イーリスとのたった1か月という期間だが、濃密な指導のおかげで、光魔法の精度などは著しく向上した。しかし、恋愛に関する恋愛値は全く向上しなかった。
今のローゼは恋愛値を向上できなかったので、光魔法の精度が完ぺきではないのでフラムの解呪には失敗したと思われるが、そのフラムをブリッジして逃げるほどに追い詰めたのは紛れもなく完全な聖女しか発動できない無詠唱の究極の光魔法であった。
「当然のことをしたまでです」
誇らしげに笑みを浮かべるローゼはとても生き生きとしている。
「キャー――――」
私たちは大事なことを忘れていた。上の部屋にはイーリスとヘスリッヒがいる事を……。
「フラムで間違いないわ。ローゼ、水晶を壊すからフラムを浄化してね」
私はローゼに指示を出す。
「わかりました」
ここで私は1つだけ注意しなければならない。ゲームはターン制バトルなので、ローゼが光魔法を詠唱する時間を律儀に待ってくれる。しかし、ここはリアルの世界、今までは運も味方してローゼが詠唱をする時間があり、危なげなく光魔法を放つことができた。もし私が水晶を割ったと同時にフラムが襲ってきたら身も蓋もない。
「ローゼ、割るわよ」
水晶が割れてフラムが襲って来るとしたらローゼでなく私が標的になるのは間違いない。そこで私の役割は水晶を割ることとフラムの攻撃から逃げることとなる。逃げる際に誤って他の水晶を割ると敵が増えるので、慎重に逃げる必要があった。
「えい」
私は水晶をできるだけ遠い位置に投げた。水晶は床に落下すると『パリン』と心地よい音をだして砕け散り、水晶の中から紫色の煙がモクモクと湧き出る。
「ローゼ、お願い」
「わかりました」
ローゼは光魔法の詠唱を唱える。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください」
「あぁぁ~~~~~」
煙の中から身の毛がよだつ憎悪の声が響き渡る。
「愚者の呪いにより体を蝕まれた迷い人に救いの手を差し伸べてください」
「リーリエ、リーリエ、お前だけは絶対に許さない。俺の人生を台無しにしたお前だけは絶対許さない」
紫色の煙の中から全身をゼブラ模様のタトゥーが施されたフラムの後ろ姿が見えた。
「邪悪の根源たる黒き力を光の力で打ち払い」
「み~つけた」
フラムは急に首を90度に曲げて、背中をみせたまま私を睨みつける。私を見るフラムの目は瞳孔がなく白目しか存在しなかった。
「傷ついた体と心を元の姿にお戻しください」
ローゼの詠唱が終了しフラムの体が金色の光に包まれる。フラムが無駄口をのたまってくれたおかげで私は万死に一生を得た。
「リーリエさん……申し訳ありません。解呪に失敗しました」
金色の光に包まれたフラムだったが、1秒後には光の膜は『バキバキ』と鈍い音を立てながら粉々に砕け散ってしまった。
「リーリエ、今すぐに殺してやる」
フラムは背中を向けたまま左右の腕を『ゴキゴキ』と歪な音を立てて私の方に向ける。フラムは背中を正面にして頭と手を反転させたのであった。
「やめてください」
ローゼは両手を広げて私の前に立つ。
「邪魔をするな。そこをどけ」
「どきません。私がリーリエさんを守ります」
ローゼは黄金の眼差しを輝かせながらフラムをにらみつける。するとローゼの体から金色のオーラが溢れ出て、その金色のオーラは部屋の中をじわりじわりと覆いつくす。
「うわぁ~~」
黄金のオーラに触れたフラムは異形の雄たけびを上げて後ろに倒れ込み、ブリッジをした姿のまま4つの手足を動かして、階段を全速力で登り始めた。
「ローゼ、そのオーラは光魔法なの」
「私にもわかりません。でも、リーリエさんが無事でよかったです」
ローゼは眩いほどの美しい笑みを浮かべて安堵した。
「ありがとう、ローゼ。あなたのおかげで助かったわよ」
詠唱無しで光魔法を使えるようになるのは、完全な聖女になった時である。まだローゼは成長過程なので、詠唱なしでは光魔法を発動できないはずであった。ゲームで恋愛を主軸としたローゼが完全な聖女になるには、ハーレムパーティーたちとの恋愛値を上げる必要がある。イーリスとのたった1か月という期間だが、濃密な指導のおかげで、光魔法の精度などは著しく向上した。しかし、恋愛に関する恋愛値は全く向上しなかった。
今のローゼは恋愛値を向上できなかったので、光魔法の精度が完ぺきではないのでフラムの解呪には失敗したと思われるが、そのフラムをブリッジして逃げるほどに追い詰めたのは紛れもなく完全な聖女しか発動できない無詠唱の究極の光魔法であった。
「当然のことをしたまでです」
誇らしげに笑みを浮かべるローゼはとても生き生きとしている。
「キャー――――」
私たちは大事なことを忘れていた。上の部屋にはイーリスとヘスリッヒがいる事を……。
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