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第52話 フラムの救出
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「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください。世界を絶望の闇で支配する闇の力を欲した愚者に、光明の槍を降り注ぎ、闇の力に支配された汚れた魔力を消し去ってください」
ローゼが光魔法を詠唱すると天井が金色に輝いて、無数の光の槍がヘスリッヒに降り注ぐ。
「ブヒブヒィ――――」
光の槍を浴びたヘスリッヒは涙を流しながら地面に転がりながら絶叫する。
「ヘスリッヒさん、浄化には痛みは伴いません」
大げさに苦しんでいる姿を見せつけるヘスリッヒを見たローゼは、優しい笑みを浮かべながら助言する。ヘスリッヒは泣き叫ぶのを止めて自分の体を確認する。
「ブヒ……痛くないブヒ」
ヘスリッヒは勘違いによるオーバーリアクションをしていたようだ。
「ワシを騙すとはなかなかの知能犯ブヒ」
ヘスリッヒは起き上がり威勢よく叫んだ。
「ヘスリッヒさん、きちんと自分の体を見てください」
「きちんと見たブヒ。どこも痛くないブヒ」
ヘスリッヒは気づいていない。自分の体に変化があることを。
「もう、浄化は完了致しました。闇魔法因子によって変化した容姿は元あるべき姿に戻りました」
ヘスリッヒは改めて自分の体をじっくりと見る。そして、見ることができない顔は手で顔の感触を確かめた。
「醜く爛れた皮膚が元に戻っているブヒ。それに顔にもきちんと皮膚があるブヒ」
ヘスリッヒの姿は20年前の美しい容姿に戻っていた……とは言えない。爛れた皮膚は不摂生の生活が影響して、茶色のシミまみれでぶよぶよの皮膚に変わり、豚のように太った姿はそのまま変化なく、高身長だった身長は極度の猫背の影響でへの字に折れ曲がっていた。その為醜い姿は別の醜い姿に変貌しただけだった。
「ヘスリッヒさん、浄化の影響であなたは魔力も失いましたので、二度と魔法は使えません」
闇魔法因子によって魔力が闇魔力に変貌したヘスリッヒは、浄化により魔力を失った。これによりもともと手にしていた魅了眼のスキルも失ったことになる。20年前、望むモノを全て手にしたヘスリッヒだったが、浄化により全てを失ったことになる。
「終焉の魔女様、ワシをお救いくださいブヒ。ワシはあなた様のために20年間の日々を捧げてきたブヒ。こんなところで無様な死を迎えたくないブヒ。どうか、ワシを救ってくださいブヒ」
ヘスリッヒは神を仰ぐように両手を組んで祈りを捧げるように呟いた。しかし、何も起こらない。
「リーリエさん、ローゼさん、ヘスリッヒは私が監視しておきますのでフラムを助け出してください」
魔力を失ったヘスリッヒに恐れることは何もない。私たちが次にしなければいけないことはフラムの救出である。
「わかりました。ヘスリッヒ、地下室にはどこから行けばよいのかしら!」
「テーブルの下の床板を外せば地下室に通じる階段があるブヒ」
終焉の魔女が助けてくれないと悟ったヘスリッヒは素直に答える。私はテーブルをどけて床板を剥がすと暗闇に続く急勾配の階段を見つけた。そして、階段の横には収納棚があり、収納棚を開けると魔法灯が用意されていた。私は魔法灯を灯して階段を降りていく。魔法灯は足元を照らす程度の光源しかなく一歩一歩慎重に階段を降りる。一方ローゼは視界良好で、慎重に降りる私の手を握り手すりの役割を担い私の安全を気遣ってくれていた。
「リーリエさん、あと5段降りると地下室に到着します」
「ありがとう、ローゼ」
急勾配の階段を30段ほど降りると地下室に到着した。
「ライトニング」
ローゼは光魔法で地下室に明かりを灯す。
地下室は50平米ほどあり、四角の壁には、朽ちた台の上に薄気味悪い黒い水晶が並べられていた。水晶の大きさは20㎝ほどで、目を凝らしてみると人形が入っているように見える。
「どこにフラムはいるのかしら」
ヘスリッヒの話ではフラムは傀儡毒水晶の中に居ると言っていた。しかし、人を入れるだけの大きさの水晶はこの部屋にはない。その時私はゲームのとある知識を思い出した。
「ローゼ、水晶の中にいるのは人間よ」
私は断言する。
「そのようですね。水晶から人間の魔力を感じ取ることができます」
ローゼも魔力を察知して気付いていた。
「リーリエさん、右端に1つだけ色の違う水晶があります。あの水晶は他の水晶とは違い多大な闇の魔力を感じ取ることができます。おそらくあの水晶にフラムさんは閉じ込められていると思います」
ローゼの言うとおり右端にある水晶だけは色が違う。他の水晶は黒色だが、右端の水晶だけは紫色の斑点模様の水晶であった。私たちはすぐに水晶に近づいてじっくりと水晶を見る。すると、水晶の中には全身がゼブラ模様のタトゥーに覆われたフラムの姿が見えた。
「フラムで間違いないわ。ローゼ、水晶を壊すからフラムを浄化してね」
私はローゼに指示を出した。
ローゼが光魔法を詠唱すると天井が金色に輝いて、無数の光の槍がヘスリッヒに降り注ぐ。
「ブヒブヒィ――――」
光の槍を浴びたヘスリッヒは涙を流しながら地面に転がりながら絶叫する。
「ヘスリッヒさん、浄化には痛みは伴いません」
大げさに苦しんでいる姿を見せつけるヘスリッヒを見たローゼは、優しい笑みを浮かべながら助言する。ヘスリッヒは泣き叫ぶのを止めて自分の体を確認する。
「ブヒ……痛くないブヒ」
ヘスリッヒは勘違いによるオーバーリアクションをしていたようだ。
「ワシを騙すとはなかなかの知能犯ブヒ」
ヘスリッヒは起き上がり威勢よく叫んだ。
「ヘスリッヒさん、きちんと自分の体を見てください」
「きちんと見たブヒ。どこも痛くないブヒ」
ヘスリッヒは気づいていない。自分の体に変化があることを。
「もう、浄化は完了致しました。闇魔法因子によって変化した容姿は元あるべき姿に戻りました」
ヘスリッヒは改めて自分の体をじっくりと見る。そして、見ることができない顔は手で顔の感触を確かめた。
「醜く爛れた皮膚が元に戻っているブヒ。それに顔にもきちんと皮膚があるブヒ」
ヘスリッヒの姿は20年前の美しい容姿に戻っていた……とは言えない。爛れた皮膚は不摂生の生活が影響して、茶色のシミまみれでぶよぶよの皮膚に変わり、豚のように太った姿はそのまま変化なく、高身長だった身長は極度の猫背の影響でへの字に折れ曲がっていた。その為醜い姿は別の醜い姿に変貌しただけだった。
「ヘスリッヒさん、浄化の影響であなたは魔力も失いましたので、二度と魔法は使えません」
闇魔法因子によって魔力が闇魔力に変貌したヘスリッヒは、浄化により魔力を失った。これによりもともと手にしていた魅了眼のスキルも失ったことになる。20年前、望むモノを全て手にしたヘスリッヒだったが、浄化により全てを失ったことになる。
「終焉の魔女様、ワシをお救いくださいブヒ。ワシはあなた様のために20年間の日々を捧げてきたブヒ。こんなところで無様な死を迎えたくないブヒ。どうか、ワシを救ってくださいブヒ」
ヘスリッヒは神を仰ぐように両手を組んで祈りを捧げるように呟いた。しかし、何も起こらない。
「リーリエさん、ローゼさん、ヘスリッヒは私が監視しておきますのでフラムを助け出してください」
魔力を失ったヘスリッヒに恐れることは何もない。私たちが次にしなければいけないことはフラムの救出である。
「わかりました。ヘスリッヒ、地下室にはどこから行けばよいのかしら!」
「テーブルの下の床板を外せば地下室に通じる階段があるブヒ」
終焉の魔女が助けてくれないと悟ったヘスリッヒは素直に答える。私はテーブルをどけて床板を剥がすと暗闇に続く急勾配の階段を見つけた。そして、階段の横には収納棚があり、収納棚を開けると魔法灯が用意されていた。私は魔法灯を灯して階段を降りていく。魔法灯は足元を照らす程度の光源しかなく一歩一歩慎重に階段を降りる。一方ローゼは視界良好で、慎重に降りる私の手を握り手すりの役割を担い私の安全を気遣ってくれていた。
「リーリエさん、あと5段降りると地下室に到着します」
「ありがとう、ローゼ」
急勾配の階段を30段ほど降りると地下室に到着した。
「ライトニング」
ローゼは光魔法で地下室に明かりを灯す。
地下室は50平米ほどあり、四角の壁には、朽ちた台の上に薄気味悪い黒い水晶が並べられていた。水晶の大きさは20㎝ほどで、目を凝らしてみると人形が入っているように見える。
「どこにフラムはいるのかしら」
ヘスリッヒの話ではフラムは傀儡毒水晶の中に居ると言っていた。しかし、人を入れるだけの大きさの水晶はこの部屋にはない。その時私はゲームのとある知識を思い出した。
「ローゼ、水晶の中にいるのは人間よ」
私は断言する。
「そのようですね。水晶から人間の魔力を感じ取ることができます」
ローゼも魔力を察知して気付いていた。
「リーリエさん、右端に1つだけ色の違う水晶があります。あの水晶は他の水晶とは違い多大な闇の魔力を感じ取ることができます。おそらくあの水晶にフラムさんは閉じ込められていると思います」
ローゼの言うとおり右端にある水晶だけは色が違う。他の水晶は黒色だが、右端の水晶だけは紫色の斑点模様の水晶であった。私たちはすぐに水晶に近づいてじっくりと水晶を見る。すると、水晶の中には全身がゼブラ模様のタトゥーに覆われたフラムの姿が見えた。
「フラムで間違いないわ。ローゼ、水晶を壊すからフラムを浄化してね」
私はローゼに指示を出した。
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