49 / 59
第49話 大根役者
しおりを挟む
私たちは5分程、ヘスリッヒが落ち着くのを静かに待っていた。
「ブヒビ、ブヒヒヒブブ」
「……」
ヘスリッヒが興奮しないように何も返答しない。
「ブヒブヒ、ブヒブヒ、やっとおとなしくなったブヒ。やっぱり聖女の香は効いていたブヒ」
ヘスリッヒは私たちがおとなしく見守っているさまを見て、聖女の香が作用したと勘違いをする。
「終焉の魔女様の邪魔になるローゼ、イーリス、この場に来たことを後悔させてやるブヒ」
私たちに聖女の香が効いていると勘違いしたヘスリッヒは次第に興奮がおさまり饒舌になる。
「お前達はワシの傀儡兵となったフラムの手によって殺す予定だったブヒ。自ら死地へ向かって来るとは飛んで火にいる夏の虫ブヒ」
ヘスリッヒは自ら私たちが一番知りたかった情報を喋り出した。私たちはお互いに目を合わせて合図を送る。その内容は、このまま聖女の香が効いているふりをして、ヘスリッヒから得られる情報を入手しようという合図だった。
「お前たちは聖女の香の効果で恐怖すら感じ取れないブヒ。そのうち意識も無くなり最高の気分になるブヒ。ワシが作った聖女の香、すなわち傀儡の香は自我を奪いワシの傀儡になる闇魔道具ブヒ」
「……なんて……ひ……れつなことを……するの……かしら」
イーリスは聖女の香に侵されているフリをする。
「まだ意識があるブヒ。さすが最強の光もどき魔法士ブヒ。だが、ワシの作った傀儡の香は準聖女たちでも効果があると立証済みブヒ」
若干17歳のイーリスだが、準聖女と呼ばれる光もどき魔法士としては最強と呼ばれるほどの才能の持ち主である。だからこそ、聖女ローゼのサポートキャラとして君臨している。ゲームでは実際に戦闘に参加することはないが、闇魔法に対してはローゼの次に強いキャラになるはずだ。そんな有能なイーリスを傀儡の香で支配できることの優越感でヘスリッヒの満足感が絶頂に達する。
「ローゼ、あなたも聞いているフリをするのよ」
私は小声でローゼに指示を出す。
「……私もするのでしょうか」
ローゼはあきらかに嫌な顔をする。
「もう少しフラムのことを聞き出したいの」
ヘスリッヒがフラムの居場所を知っていることは明白な事実となった。後はどこにフラムがいるのか知りたいところである。
「な・ん・て・ことかしら。わ・た・し・も・自我が・なくなり・そう・です」
ローゼは大根役者のように棒読みをする。見ている私は思わず声を出して笑いそうになるが必死に耐える。
「ブヒブヒ、聖女のローゼにもワシの傀儡の香が効いているブヒ。さすがワシブヒ。ついに終焉の魔女様と同等の闇魔法具を作ったブヒィ――」
ヘスリッヒは嬉しさのあまり両手を上げてジャンプして喜んだ。その時、ヘスリッヒの顔を隠していたフードが外れて素顔を見せる。その顔は硫酸を浴びたような異形の顔であった。皮膚は溶け、血管や目玉はむき出しになり、鼻だと思える場所には2つの空洞が存在する。そして、頭には髪はなく脳ミソがむき出しになっていた。
「……」
「……」
私とローゼは思わず顔を背けたくなるが、無気力感を演じるためにぐっとこらえる。
「あなた……は、最高の魔法具士……だわ。フラムの力を……利用しなくても……私たちは……敵わない」
イーリスはヘスリッヒの異形の顔を見ても動じずに演技を続ける。
「まだ、喋れるブヒ。お前達が力をつけることを終焉の魔女様は懸念しているブヒ。でも、もう安心だブヒ。このままお前達をワシの傀儡兵にしてやるブヒ」
「最高の……闇魔法使いの……あなたには……私たちは敵わない……。傀儡兵となる……私たちに……1つだけ教えて……ほしい……の。フラムは……どこにいるの」
イーリスは、そう述べると力が尽きたかのように地面に倒れ込む。
「ブヒブヒブヒブ、ブヒブヒ、哀れなお前達の最後の願いを叶えてやるブヒ。フラムは地下室の傀儡毒水晶の中でスヤスヤと眠っているブヒ。お前達を倒すためシュバインに用意させたが無用だったブヒ」
「ローゼ、フラムの居場所はわかったわ。ヘスリッヒを浄化して闇魔法因子を消滅させて」
ゲームの設定ではヘスリッヒは終焉の魔女から闇魔法因子を与えられて闇魔法使いとなった。闇魔法を使えるようになったヘスリッヒは代償として全身に硫酸をかけられたような醜い姿になる。しかし、どうしてヘスリッヒが闇魔法使いになったのか?それには深い理由があった。
「ブヒビ、ブヒヒヒブブ」
「……」
ヘスリッヒが興奮しないように何も返答しない。
「ブヒブヒ、ブヒブヒ、やっとおとなしくなったブヒ。やっぱり聖女の香は効いていたブヒ」
ヘスリッヒは私たちがおとなしく見守っているさまを見て、聖女の香が作用したと勘違いをする。
「終焉の魔女様の邪魔になるローゼ、イーリス、この場に来たことを後悔させてやるブヒ」
私たちに聖女の香が効いていると勘違いしたヘスリッヒは次第に興奮がおさまり饒舌になる。
「お前達はワシの傀儡兵となったフラムの手によって殺す予定だったブヒ。自ら死地へ向かって来るとは飛んで火にいる夏の虫ブヒ」
ヘスリッヒは自ら私たちが一番知りたかった情報を喋り出した。私たちはお互いに目を合わせて合図を送る。その内容は、このまま聖女の香が効いているふりをして、ヘスリッヒから得られる情報を入手しようという合図だった。
「お前たちは聖女の香の効果で恐怖すら感じ取れないブヒ。そのうち意識も無くなり最高の気分になるブヒ。ワシが作った聖女の香、すなわち傀儡の香は自我を奪いワシの傀儡になる闇魔道具ブヒ」
「……なんて……ひ……れつなことを……するの……かしら」
イーリスは聖女の香に侵されているフリをする。
「まだ意識があるブヒ。さすが最強の光もどき魔法士ブヒ。だが、ワシの作った傀儡の香は準聖女たちでも効果があると立証済みブヒ」
若干17歳のイーリスだが、準聖女と呼ばれる光もどき魔法士としては最強と呼ばれるほどの才能の持ち主である。だからこそ、聖女ローゼのサポートキャラとして君臨している。ゲームでは実際に戦闘に参加することはないが、闇魔法に対してはローゼの次に強いキャラになるはずだ。そんな有能なイーリスを傀儡の香で支配できることの優越感でヘスリッヒの満足感が絶頂に達する。
「ローゼ、あなたも聞いているフリをするのよ」
私は小声でローゼに指示を出す。
「……私もするのでしょうか」
ローゼはあきらかに嫌な顔をする。
「もう少しフラムのことを聞き出したいの」
ヘスリッヒがフラムの居場所を知っていることは明白な事実となった。後はどこにフラムがいるのか知りたいところである。
「な・ん・て・ことかしら。わ・た・し・も・自我が・なくなり・そう・です」
ローゼは大根役者のように棒読みをする。見ている私は思わず声を出して笑いそうになるが必死に耐える。
「ブヒブヒ、聖女のローゼにもワシの傀儡の香が効いているブヒ。さすがワシブヒ。ついに終焉の魔女様と同等の闇魔法具を作ったブヒィ――」
ヘスリッヒは嬉しさのあまり両手を上げてジャンプして喜んだ。その時、ヘスリッヒの顔を隠していたフードが外れて素顔を見せる。その顔は硫酸を浴びたような異形の顔であった。皮膚は溶け、血管や目玉はむき出しになり、鼻だと思える場所には2つの空洞が存在する。そして、頭には髪はなく脳ミソがむき出しになっていた。
「……」
「……」
私とローゼは思わず顔を背けたくなるが、無気力感を演じるためにぐっとこらえる。
「あなた……は、最高の魔法具士……だわ。フラムの力を……利用しなくても……私たちは……敵わない」
イーリスはヘスリッヒの異形の顔を見ても動じずに演技を続ける。
「まだ、喋れるブヒ。お前達が力をつけることを終焉の魔女様は懸念しているブヒ。でも、もう安心だブヒ。このままお前達をワシの傀儡兵にしてやるブヒ」
「最高の……闇魔法使いの……あなたには……私たちは敵わない……。傀儡兵となる……私たちに……1つだけ教えて……ほしい……の。フラムは……どこにいるの」
イーリスは、そう述べると力が尽きたかのように地面に倒れ込む。
「ブヒブヒブヒブ、ブヒブヒ、哀れなお前達の最後の願いを叶えてやるブヒ。フラムは地下室の傀儡毒水晶の中でスヤスヤと眠っているブヒ。お前達を倒すためシュバインに用意させたが無用だったブヒ」
「ローゼ、フラムの居場所はわかったわ。ヘスリッヒを浄化して闇魔法因子を消滅させて」
ゲームの設定ではヘスリッヒは終焉の魔女から闇魔法因子を与えられて闇魔法使いとなった。闇魔法を使えるようになったヘスリッヒは代償として全身に硫酸をかけられたような醜い姿になる。しかし、どうしてヘスリッヒが闇魔法使いになったのか?それには深い理由があった。
1
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!
るっち
ファンタジー
土砂降りの雨のなか、万年Fランクの落ちこぼれ冒険者である俺は、冒険者達にコキ使われた挙句、魔物への囮にされて危うく死に掛けた……しかも、そのことを冒険者ギルドの職員に報告しても鼻で笑われただけだった。終いには恋人であるはずの幼馴染にまで捨てられる始末……悔しくて、悔しくて、悲しくて……そんな時、空から宝石のような何かが脳天を直撃! なんの石かは分からないけど綺麗だから御守りに。そしたら何故かなんでもできる気がしてきた! あとはその石のチカラを使い、今まで俺を見下し蔑んできた奴らをギャフンッと言わせて、落ちこぼれ冒険者から脱却してみせる!!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
引きこもりが乙女ゲームに転生したら
おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ
すっかり引きこもりになってしまった
女子高生マナ
ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎
心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥
転生したキャラが思いもよらぬ人物で--
「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで
男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む
これは人を信じることを諦めた少女
の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる