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第48話 ブヒブヒ
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「ローゼ、私に聖なる結界を張ってくれるかしら」
ヘスリッヒが占い館【フルーフ】の店主なら、必ず聖女の香で部屋は充満しているはずだ。シュバインが教室棟別館の1階を魅惑の香で充満させていた時と同じ対策をしてから私は占い館【フルーフ】へ向かった。
「ローゼ、無駄な争いは避けたいから王都民たちの呪いを解呪して」
私たちは律儀に行列の最後尾に並ぶ。先に並んでいる王都民たちは全員が聖女の香によって心は支配されて自我はほとんどなく、ボットのような無表情で血色の悪い顔をしている。聖女の香によって傀儡された王都民たちは、ヘスリッヒが命令すれば抵抗することなく殺人マシーンと変貌するだろう。
「わかりました」
ローゼは両手を組んで祈りを捧げる。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください。愚者の呪いにより体を蝕まれた迷い人に救いの手を差し伸べてください。邪悪の根源たる黒き力を光の力で打ち払い、傷ついた体と心を元の姿にお戻しください」
ローゼが光魔法を唱えると辺りは眩い光に包まれて、ボットのような無感情だった王都民の顔が血色の良い生き生きとした表情に変わった。
「……俺たちは何をしていたのだ」
「なぜ?こんなところにいるのだ」
並んでいた王都民は正常な思考に戻り、辺りをキョロキョロを振り返り疑問符を抱きながら帰宅する。
「これでもう大丈夫でしょうか」
ローゼは不安げな顔をする。
「後はヘスリッヒを片付けてから全ての浄化をお願いするわ」
最優先はヘスリッヒを打ち倒して聖女の香を経つことである。いくら王都民を浄化してもヘスリッヒが生きている限り同じことが繰り返される。
並んでいた王都民たちは皆帰路につき、占い館【フルーフ】から出てきた男性も浄化して、残ったのは私たちだけになる。
「次のバカ者、入るブヒ」
聞き苦しいダミ声が耳に届くと、ベニヤ板を打ち付けられた扉がシャッターのように頭上に上がり、部屋の中から大きな黒い手が私の体を鷲掴みする。しかし聖なる結界が発動して黒い手が木っ端微塵に砕けてしまう。
「傀儡の手が壊れたブヒ!どうなっているブヒ」
扉の奥からまたしても聞き苦しいダミ声が聞こえてくる。
「この口調はシュバインでしょうか?」
イーリスは眉をひそめながら私に問う。
「違います。語尾や声色は似ていますが、ヘスリッヒだと私は思います」
私の予測は確信へと変わった。
「リーリエさん、ヘスリッヒが中に居るのですね」
「そうね。ローゼ、イーリスさん慎重に中に入りましょう」
占い館【フルーフ】の中は薄暗くロウソクの明かりが1つ灯されていて、お香のような香りが鼻を刺激する。そして、再び黒い手が私を鷲掴みしようとするが木っ端微塵に砕けてしまう。フラムが占い館【フルーフ】へ訪れた時に吸い込まれるように部屋に入った理由はこの黒い手が犯人だった。私が黒い手の存在に気付いたのは、聖なる結界に照らされたからであり、もしも、聖なる結界を張っていなければ黒い手に気付くことはなかった。
「どうなっているブヒィ――――」
部屋の奥で怒鳴り声が響く。
「イーリスさん、明かりを灯してください」
2人は暗闇でも太陽の下のように明るく見えるが、私には視界が悪いので部屋に明かりを灯してもらう。
「ライトニング」
イーリスは光もどき魔法で部屋を明るくした。すると部屋の奥には、朽ちた木で作られた今にも壊れそうな椅子と6角形のテーブルとイスがあった。そして、ひどい猫背の姿勢で椅子に座り、黒のフード付きマントを纏い、フードで鼻のあたりまで顔を隠している怪しげな丸々と太った男性の姿が見えた。
「ブヒブヒ、ブヒブヒ、ブヒブヒヒヒ、ブヒブヒブブ」
太った男性の素顔は見えないが体格もシュバインとそっくりなのでヘスリッヒに間違いないだろう。
「あなたはヘスリッヒさんでしょうか」
イーリスが優しい声で話しかける。
「ブヒィー、ブヒブヒブヒブヒ、ブヒヒヒブブヒヒ」
ヘスリッヒはブヒブヒと述べるだけで言っている意味がわからない。
「リーリエさん、ヘスリッヒさんは私とイーリスさんが、どうしてここに居るのか聞いています」
「ローゼ、ヘスリッヒが何を言っているのか理解できるの」
「はい。私の光の加護は翻訳機能もあるようです」
ヘスリッヒの言葉をバフ効果と捉えて翻訳していると思われる。
「わかったわ。ヘスリッヒには私たちの言葉は届いているようだし、詳しいことを聞いてみましょ」
「ブヒブヒ、ブブヒヒブブ」
「お前たちに話すことは何もないと言っています」
ローゼは直ぐに翻訳する。
「リーリエさん、ヘスリッヒは先ほどまで普通に喋っていたはずです。どうして、ブヒブヒとしか話さなくなったのでしょうか」
イーリスは顔をゆがませて考える。
「ブヒブヒブブブヒヒ」
「興奮した時は、このような喋りになるようですと言っています」
「そうなのね。それなら、興奮がおさまるまで待ってあげるわね」
私たちは部屋の角に置いてある小さな椅子に座ってヘスリッヒの興奮がおさまるまで待つことにした。
ヘスリッヒが占い館【フルーフ】の店主なら、必ず聖女の香で部屋は充満しているはずだ。シュバインが教室棟別館の1階を魅惑の香で充満させていた時と同じ対策をしてから私は占い館【フルーフ】へ向かった。
「ローゼ、無駄な争いは避けたいから王都民たちの呪いを解呪して」
私たちは律儀に行列の最後尾に並ぶ。先に並んでいる王都民たちは全員が聖女の香によって心は支配されて自我はほとんどなく、ボットのような無表情で血色の悪い顔をしている。聖女の香によって傀儡された王都民たちは、ヘスリッヒが命令すれば抵抗することなく殺人マシーンと変貌するだろう。
「わかりました」
ローゼは両手を組んで祈りを捧げる。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください。愚者の呪いにより体を蝕まれた迷い人に救いの手を差し伸べてください。邪悪の根源たる黒き力を光の力で打ち払い、傷ついた体と心を元の姿にお戻しください」
ローゼが光魔法を唱えると辺りは眩い光に包まれて、ボットのような無感情だった王都民の顔が血色の良い生き生きとした表情に変わった。
「……俺たちは何をしていたのだ」
「なぜ?こんなところにいるのだ」
並んでいた王都民は正常な思考に戻り、辺りをキョロキョロを振り返り疑問符を抱きながら帰宅する。
「これでもう大丈夫でしょうか」
ローゼは不安げな顔をする。
「後はヘスリッヒを片付けてから全ての浄化をお願いするわ」
最優先はヘスリッヒを打ち倒して聖女の香を経つことである。いくら王都民を浄化してもヘスリッヒが生きている限り同じことが繰り返される。
並んでいた王都民たちは皆帰路につき、占い館【フルーフ】から出てきた男性も浄化して、残ったのは私たちだけになる。
「次のバカ者、入るブヒ」
聞き苦しいダミ声が耳に届くと、ベニヤ板を打ち付けられた扉がシャッターのように頭上に上がり、部屋の中から大きな黒い手が私の体を鷲掴みする。しかし聖なる結界が発動して黒い手が木っ端微塵に砕けてしまう。
「傀儡の手が壊れたブヒ!どうなっているブヒ」
扉の奥からまたしても聞き苦しいダミ声が聞こえてくる。
「この口調はシュバインでしょうか?」
イーリスは眉をひそめながら私に問う。
「違います。語尾や声色は似ていますが、ヘスリッヒだと私は思います」
私の予測は確信へと変わった。
「リーリエさん、ヘスリッヒが中に居るのですね」
「そうね。ローゼ、イーリスさん慎重に中に入りましょう」
占い館【フルーフ】の中は薄暗くロウソクの明かりが1つ灯されていて、お香のような香りが鼻を刺激する。そして、再び黒い手が私を鷲掴みしようとするが木っ端微塵に砕けてしまう。フラムが占い館【フルーフ】へ訪れた時に吸い込まれるように部屋に入った理由はこの黒い手が犯人だった。私が黒い手の存在に気付いたのは、聖なる結界に照らされたからであり、もしも、聖なる結界を張っていなければ黒い手に気付くことはなかった。
「どうなっているブヒィ――――」
部屋の奥で怒鳴り声が響く。
「イーリスさん、明かりを灯してください」
2人は暗闇でも太陽の下のように明るく見えるが、私には視界が悪いので部屋に明かりを灯してもらう。
「ライトニング」
イーリスは光もどき魔法で部屋を明るくした。すると部屋の奥には、朽ちた木で作られた今にも壊れそうな椅子と6角形のテーブルとイスがあった。そして、ひどい猫背の姿勢で椅子に座り、黒のフード付きマントを纏い、フードで鼻のあたりまで顔を隠している怪しげな丸々と太った男性の姿が見えた。
「ブヒブヒ、ブヒブヒ、ブヒブヒヒヒ、ブヒブヒブブ」
太った男性の素顔は見えないが体格もシュバインとそっくりなのでヘスリッヒに間違いないだろう。
「あなたはヘスリッヒさんでしょうか」
イーリスが優しい声で話しかける。
「ブヒィー、ブヒブヒブヒブヒ、ブヒヒヒブブヒヒ」
ヘスリッヒはブヒブヒと述べるだけで言っている意味がわからない。
「リーリエさん、ヘスリッヒさんは私とイーリスさんが、どうしてここに居るのか聞いています」
「ローゼ、ヘスリッヒが何を言っているのか理解できるの」
「はい。私の光の加護は翻訳機能もあるようです」
ヘスリッヒの言葉をバフ効果と捉えて翻訳していると思われる。
「わかったわ。ヘスリッヒには私たちの言葉は届いているようだし、詳しいことを聞いてみましょ」
「ブヒブヒ、ブブヒヒブブ」
「お前たちに話すことは何もないと言っています」
ローゼは直ぐに翻訳する。
「リーリエさん、ヘスリッヒは先ほどまで普通に喋っていたはずです。どうして、ブヒブヒとしか話さなくなったのでしょうか」
イーリスは顔をゆがませて考える。
「ブヒブヒブブブヒヒ」
「興奮した時は、このような喋りになるようですと言っています」
「そうなのね。それなら、興奮がおさまるまで待ってあげるわね」
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