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第42話 魔法具店
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私たちは2組に分かれて占い館【フルーフ】の近辺の聞き込み調査を開始した。私はローゼと兄の3人でドナーはイーリスと2人で聞き込みをした。近隣の店や通行人など隈なく声をかけるが有益な情報を手にすることはなく、本当に潰れてしまったのかと諦めて、占い館【フルーフ】の扉の前に戻ってきた時に1人の幼い少女と出会った。
「お母さんを知りませんか」
身長は110㎝ほどの6歳くらいのみすぼらしい服を着た女の子が、赤髪の綺麗な女性の写真を見せて母親を探していると声をかけてきたのである。
「ごめんなさい。私は王都出身ではないので、この写真の方はわかりません」
ローゼはしゃがんで少女と視線を合わせながら丁寧に答える。
「お嬢ちゃん、俺たちは近くの学院の寮で生活をしているのでこの辺りのことは全くわからない。王都の衛兵にでも聞くと良い」
兄は女の子にアドバイスをする。行方不明者を探すなら王都の衛兵に声をかけるのが一番である。ちなみにフラムは家出扱いになっているので捜索はされていない。
「何処にもいないの。みんな知らないと言うの」
女の子は今にも泣きそうな目で訴える。
「いつからお母さんは居ないの?」
私は涙目で訴える女の子をこのまま見過ごすことはできなかった。
「ずっといないの。家に帰って来ないの」
「お父さんはどうしてるの」
女の子が1人で母親を探しているのはおかしい。父親はどうしているのか聞くことにした。
「お父さんは家を出て行ったの」
「えっ!お父さんも行方不明なの」
「お父さんも帰って来ないの。私は孤児院じゃなく、お母さんと一緒に居たいの」
女の子は私に助けを求めるようにしがみついてきた。
「お兄様、王都の衛兵は何をしているのでしょうか。これではあまりにもこの子がかわいそうです」
両親が居なくなってどれくらいの日数が経っているのかわからないが、幼い女の子の両親が帰って来ないのに放置しているのは由々しき問題だ。
「そうだな。俺たちが直接衛兵に声をかけるとするか」
私たちは王都の衛兵に通報することにした。
「メッサー、どうかしたのか」
ドナーとイーリスが私たちの元へ戻って来た。兄はドナーに女の子のことを説明する。
「おそらく女の子の両親は騙されて終焉教へ入信させられた可能性が高い。今王都では、終焉教に入信した一部の信者が子供を置き去りにしてエンデデアヴェルトへ向かったとの報告がある。残された子供たちは孤児院に引き取られているらしい」
ドナーの表情は暗くなり、悔しそうに唇を噛みしめる。
「本当に助け出すことはできないのか」
兄は歯痒い気持ちで心が押しつぶされる思いだ。
「エンデデアヴェルトへの立ち入りは禁止されている。俺たちでは何もできないのだ」
「すまないドナー。お前を責めるつもりはないのだ」
ドナーの悲痛な顔を見て兄は思わず謝罪する。
「いや、気にしてはいない。終焉教のことは王国に任せて俺たちはフラムの捜索に専念しよう」
「そうだな」
兄は気持ちを無理やり切り替える。
「ドナー、こっちは何も収穫はなかったが、お前たちはどうだったのだ」
私たちは聞き込みをしたが、占い館【フルーフ】が営業しているとの情報を得ることはできなかった。
「1つだけだが有益な情報を入手した。昨日占い館【フルーフ】に明かりが灯されていたらしい」
「……あの建物に誰か居たのだな」
「そう考えても問題はない。誰か出入りしている可能性は高いはずだ」
「どうする。無理やり潜入するか」
「……そうだな。適当に理由を付ければ後で連行されることはないだろう」
【judgment of justice】の結成の真実を兄は知らない。【judgment of justice】は、表向きは腐敗した生徒会に変わり学院の秩序を守る組織だが、裏の顔は国王陛下の番犬である。シュバインの出生の秘密を調べるように命令をしたのは国王陛下であった。フラムの捜索は学院長からの依頼とドナーは言っているが、それも本当なのかわからない。国王陛下の番犬である【judgment of justice】には治外法権が認められている。
「お兄様、大事な話をしているところもうしわけありません」
兄とドナーが話している間、私とローゼとイーリスは女の子の相手をしていた。そして、思わぬ情報を入手していた。
「どうした、リーリエ」
「メアリーの父親は夜中に魔法具店へ何度も出かけていたらしいのです」
女の子の名前はメアリーという。メアリーは拙い記憶の中から夜中に父親が魔法具店に出かけてくるという言葉を覚えていたのである。
「それがどうしたのだ」
兄は特に有益な情報とは判断できなかった。
「王都には4つの魔法具店が存在します。しかし、どの魔法具店も夜中の営業などしていません」
「そうなのか。それならメアリーの聞き間違いではないのか」
兄の言う通りメアリーの聞き間違いである可能性は高い。ローゼとイーリスも聞き間違いかもしれないと思っている。でも私だけがメアリーの話を信じている。もちろんそれにはきちんとした理由があった。
「お母さんを知りませんか」
身長は110㎝ほどの6歳くらいのみすぼらしい服を着た女の子が、赤髪の綺麗な女性の写真を見せて母親を探していると声をかけてきたのである。
「ごめんなさい。私は王都出身ではないので、この写真の方はわかりません」
ローゼはしゃがんで少女と視線を合わせながら丁寧に答える。
「お嬢ちゃん、俺たちは近くの学院の寮で生活をしているのでこの辺りのことは全くわからない。王都の衛兵にでも聞くと良い」
兄は女の子にアドバイスをする。行方不明者を探すなら王都の衛兵に声をかけるのが一番である。ちなみにフラムは家出扱いになっているので捜索はされていない。
「何処にもいないの。みんな知らないと言うの」
女の子は今にも泣きそうな目で訴える。
「いつからお母さんは居ないの?」
私は涙目で訴える女の子をこのまま見過ごすことはできなかった。
「ずっといないの。家に帰って来ないの」
「お父さんはどうしてるの」
女の子が1人で母親を探しているのはおかしい。父親はどうしているのか聞くことにした。
「お父さんは家を出て行ったの」
「えっ!お父さんも行方不明なの」
「お父さんも帰って来ないの。私は孤児院じゃなく、お母さんと一緒に居たいの」
女の子は私に助けを求めるようにしがみついてきた。
「お兄様、王都の衛兵は何をしているのでしょうか。これではあまりにもこの子がかわいそうです」
両親が居なくなってどれくらいの日数が経っているのかわからないが、幼い女の子の両親が帰って来ないのに放置しているのは由々しき問題だ。
「そうだな。俺たちが直接衛兵に声をかけるとするか」
私たちは王都の衛兵に通報することにした。
「メッサー、どうかしたのか」
ドナーとイーリスが私たちの元へ戻って来た。兄はドナーに女の子のことを説明する。
「おそらく女の子の両親は騙されて終焉教へ入信させられた可能性が高い。今王都では、終焉教に入信した一部の信者が子供を置き去りにしてエンデデアヴェルトへ向かったとの報告がある。残された子供たちは孤児院に引き取られているらしい」
ドナーの表情は暗くなり、悔しそうに唇を噛みしめる。
「本当に助け出すことはできないのか」
兄は歯痒い気持ちで心が押しつぶされる思いだ。
「エンデデアヴェルトへの立ち入りは禁止されている。俺たちでは何もできないのだ」
「すまないドナー。お前を責めるつもりはないのだ」
ドナーの悲痛な顔を見て兄は思わず謝罪する。
「いや、気にしてはいない。終焉教のことは王国に任せて俺たちはフラムの捜索に専念しよう」
「そうだな」
兄は気持ちを無理やり切り替える。
「ドナー、こっちは何も収穫はなかったが、お前たちはどうだったのだ」
私たちは聞き込みをしたが、占い館【フルーフ】が営業しているとの情報を得ることはできなかった。
「1つだけだが有益な情報を入手した。昨日占い館【フルーフ】に明かりが灯されていたらしい」
「……あの建物に誰か居たのだな」
「そう考えても問題はない。誰か出入りしている可能性は高いはずだ」
「どうする。無理やり潜入するか」
「……そうだな。適当に理由を付ければ後で連行されることはないだろう」
【judgment of justice】の結成の真実を兄は知らない。【judgment of justice】は、表向きは腐敗した生徒会に変わり学院の秩序を守る組織だが、裏の顔は国王陛下の番犬である。シュバインの出生の秘密を調べるように命令をしたのは国王陛下であった。フラムの捜索は学院長からの依頼とドナーは言っているが、それも本当なのかわからない。国王陛下の番犬である【judgment of justice】には治外法権が認められている。
「お兄様、大事な話をしているところもうしわけありません」
兄とドナーが話している間、私とローゼとイーリスは女の子の相手をしていた。そして、思わぬ情報を入手していた。
「どうした、リーリエ」
「メアリーの父親は夜中に魔法具店へ何度も出かけていたらしいのです」
女の子の名前はメアリーという。メアリーは拙い記憶の中から夜中に父親が魔法具店に出かけてくるという言葉を覚えていたのである。
「それがどうしたのだ」
兄は特に有益な情報とは判断できなかった。
「王都には4つの魔法具店が存在します。しかし、どの魔法具店も夜中の営業などしていません」
「そうなのか。それならメアリーの聞き間違いではないのか」
兄の言う通りメアリーの聞き間違いである可能性は高い。ローゼとイーリスも聞き間違いかもしれないと思っている。でも私だけがメアリーの話を信じている。もちろんそれにはきちんとした理由があった。
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