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第39話 直感

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 「イーリス嬢、実は大切な話があるのだ」


 ドナーは急に真剣な顔つきでイーリスに声をかける。


 「この場でよろしいのでしょうか」


 イーリスはまるでドナーの話の内容を理解しているかのように問いかける。


 「問題はない。出来ればメッサー達にも聞いて欲しいと思っている」
 「ドナー、トラブルでも発生したのか」


 兄はドナーに問いただす。

 
 「そう焦るなメッサー。実はフラムのことで話したいことがあるのだ」


 フラムは闘技場で兄に敗れた後、学院から姿を消した。【judgment正義 of justice審判】は、フラムの捜索を任されていた。


 「フラムの居場所がわかったのでしょうか」


 イーリスは目を輝かせて問いかける。イーリスは自分のせいでフラムが消息を絶ったと思い込み悩んでいた。


 「残念ながらまだ行方はわかってはいない。しかし、フラムが消える前日、最後に立ち寄ったのは魔法修練場と聞いている。そして、その日はシュバインが強引に魔法修練場に侵入したと管理人から確認がとれたのだ」
 「また、シュバインが絡んでいるのか」

 「間違いないだろう」
 「シュバインを尋問したのか」


 兄はドナーを問い詰める。


 「もちろんだ。しかし、激励の言葉をかけたブヒの一点張りで、フラムがどこへ消えたのかはわからない」
 「ドナーさん、本題を話してください。何か進展があったからこそお話をされたのではないでしょうか」


 イーリスは冷静な面持ちでドナーに問う。


 「占い館【フルーフ】を知っているか」


 私以外はみんな聞き覚えの無い様子で頭に?マークが浮かび上がるが私だけは!が頭に浮かぶ。


 「リーリエ嬢、何か心当たりがあるのか」


 明らかに表情が変わった私にドナーは希望を託すように問いかける。


 「……」


 私はすぐに話し出すことはできなかったが、頭の中で整理しつつ話し始める。


 「王都にあるよく当たる占い屋と聞いたことがあります」


 占い館【フルーフ】とは、私が13歳の時に王都へ訪れてロベリアから呪いのアイテムをもらった場所である。私は入学式の前日にロベリアのことが気になったので占い館【フルーフ】へ立ち寄ったのだが、店は潰れているようだった。


 「場所は知っているのか」
 

 ドナーは一筋の希望を見出した如く興奮気味で私に問いかける。


 「はい。入学式前に占ってもらおうと伺ったのですが、扉がベニヤ板で打ち付けられていたので閉店したと思います」
 「構わない。場所を教えてくれ」


 私はドナーが持っていた王都の地図に占い館【フルーフ】の場所をマークする。


 「ドナーさん、お1人で行かれるのでしょうか」


 私はゲームでのドナーの運命を知っている。ドナーは人物からシュバインが王妃の浮気相手の子供であるとの噂話の捜査を依頼される。judgment正義 of justice審判が捜査をはじめて1年が経過した時にドナーは重大な事実を知ることになる。それは、王都にも少数の信者がいる終焉教と呼ばれる怪しげな宗教団体の教祖ヘスリッヒ・プッペンシュピール がシュバインの父親であるという情報を入手する。ヘスリッヒは王都の隣町エンデデアヴェルトに豪華な礼拝堂を設立して多くの信者をかかえていた。
 ドナーは単身でエンデデアヴェルトへ潜入して、王妃がヘスリッヒに多額の支援をしている事実とシュバインの出生の秘密を知ることになった。この事実を公表すれば王妃の国王陛下の裏切りを証明することができるはずだったが、ヘスリッヒに見つかり殺されてしまう。
 ゲームとの時間軸を考えるとドナーはヘスリッヒがシュバインの父親であるとの情報を入手してシュバインに揺さぶりをかけている頃である。数日後にはドナーはエンデデアヴェルトに赴き潜入捜査を始めるかもしれないだろう。しかし、私はこの時少し違和感を感じていた。ゲームとリアルの世界は、私の行動により歴史は大きく変わったと言わざる得ない。ゲームなら、ドナーは私たちに関わらないで、シュバインの捜査に専念しているはずだ。このままドナーを1人で占い館【フルーフ】へ行かせても良いのだろうか……。私の心は不安に浸食される。


 「お兄様、私もドナーさんと一緒に占い館【フルーフ】に行きたいと思います」


 このままドナーを1人では行かせてはならないと私の直感が叫んでいる。


 「リーリエ、何か気になることでもあるのか」


 兄は不安げな顔で私に問いかける。


 「なにか不吉な予感がするのです」


 私は自分の気持ちを素直に伝えた。



 
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