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第17話 メッサ―対フラム
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ゲームではローゼは右膝を地面に付け頭を下げて「よろしくお願いします」と述べて、第1魔法研究部へ入部することになる。しかし、私と出会ったことでローゼは別の言葉を述べることになる。ローゼは深呼吸をして心を落ち着かせて冷静を取り戻し、ゲームと同じように右膝を地面に付けて頭を下げる。そして、重い口を開いた。
「ご指名を頂き本当にありがとうございます。国王陛下より特待生として入学して、真の聖女へとなる為に日々研鑽を重ねる所存でございますが、部活動は第1魔法研究部ではなく、リーリエさんが発足される料理研究部に入部致します」
ローゼは力強く堂々たる言葉でイーリスに述べる。
ゲームでは、正義の令嬢として全教員全生徒からの熱い信頼を得ているイーリスが、ローゼを第1魔法研究部に特別推薦枠で勧誘したので、誰も反論することはできなかった。しかし、リアルの世界では、ローゼはイーリスの勧誘を断ったことで、大勢の新入生達が歓喜の拍手やエールを送って喜ぶことになる。
「平民!よくぞ断った。お前には第1魔法研究部は分不相応だ」
「田舎平民と堕落令嬢、良い組み合せだ。お前の判断は正しいぜ」
「ガハハハ。なんて良い日なんだ。これは偽聖女と認めたのと同じことだ」
心無いエールや賛辞が闘技場内に響き渡る。
「黙りなさい」
イーリスが一蹴すると新入生たちは静かになる。誰もイーリスに逆らう根性など持ち合わせてはいない。
「本当に良かったのローゼ」
私は再びローゼに問いかける。
「もちろんです。第1魔法研究部に入らなくても光魔法の勉強はできますので、リーリエさんに迷惑をかけるつもりはありません」
ローゼの揺るがない意志はイーリスの耳にも届く。イーリスは私の方をちらっと見てから、何かさとっかのような優しい笑みを浮かべて話し出す。
「非常に残念ですが貴女の選択を尊重致します。もし、光魔法でわからないことがあれば私に相談してください」
正義の令嬢と言われるだけあってイーリスの態度は潔い。ローゼの気持ちを理解して深追いをすることはない。しかし、ここで、空気を読めない男が大声で叫ぶ。
「君は本当にそれで良いのか!真の聖女を目指すならば第1魔法研究部に入るのが道理であるはずだ」
イーリスの側で待機していたフラムが大声で叫ぶ。その発言を聞いた新入生たちは明らかに不機嫌な顔をする。せっかく第1魔法研究部に入部できる枠が1つ減ったのに、フラムの言葉でその1枠が埋まってしまうのは非常に困る。しかし、第1魔法研究部副部長であり、5大貴族の1人であるフラムに意見など言えるはずがない。
「フラム様、私の意志は変わりません」
ローゼはきっぱりと答える。
「おい!堕落令嬢。お前はどんな卑怯な手を使ってローゼ嬢をたぶらかしたのだ」
フラムは顔を真っ赤にして激高した。ゲームでも怒りを見せる場面もあったが、ここまで怒りをあらわにするのは驚きだ。
「リーリエさんは関係ありません。私の意志で決めたのです」
「君は堕落令嬢に騙されているのだ。もっと聖女としての自覚を持ってくれ」
フラムは感情的に怒鳴りつける。しかし、ローゼに怒っているのではなく、ローゼを騙したと思われている私に怒っているようだ。その証拠に私はすごい形相で睨みつけられていた。
「フラム、妹を侮辱する発言を取り消せ」
兄は我慢の限界であった。新入生の私へのヘイトを唇を噛みしめてグッと怒りを抑えていたが、フラムからのヘイトに対しては怒りを抑えることができず、地面を蹴ってジャンプして闘技台に舞い降りた。
「やかましい。俺は真実を述べているだけだ。貴様の妹は3属性を授かったにもかかわらず遊び惚けている堕落令嬢だろ。自領で遊び惚けていれば良いのに、権力とお金で由緒あるこの学院に入学した不届き者だ」
フラムは感情をむき出しにして罵倒する。しかし、その言葉の内容はほとんどの新入生も感じていることだった。そのように思われる原因を作ってしまった私は言い訳できる立場ではない。
「違います!リーリエさんが堕落令嬢だなんて嘘です」
真っ先に大声で叫んだのはローゼであった。
「ありがとう、ローゼ嬢。君は偏見に惑わされることなく自分の目で現実を見ることができる心の清き人だ。それに比べてフラム、お前は物事を上辺でしか判断できない愚か者だ。お前みたいな男が第1魔法研究部の副部長を任されているとは、第1魔法研究部の権威も今年で終わりだな」
兄は鋭い目つきでフラムを睨みつける。
「騎士ごときが魔法士様を評価するとは滑稽だ。騎士とは魔法士になれなかった落ちこぼれ集団、身の程をわきまえてこの場から立ち去れ」
フラムは兄を睨み返して恫喝する。
「お前は何か勘違いをしている。騎士が魔法士に劣っている事実など何もない。妹への侮辱、騎士への侮辱、どのように責任を取るつもりだ」
「ハハハハハ、ハハハハハ。妹が堕落令嬢なら兄は妄想子息だな。現実がわからずに妄想ばかりして頭がおかしくなったようだな。ハハハハハ、ハハハハハ」
フラムはおかしくて笑いが止まらない。
「それなら騎士と魔法士、どちらが強いか模擬戦でもしてみるか」
兄は余裕の笑みを浮かべてフラムを挑発する。
「その勝負受けてやろう。この場で騎士の無能さを俺が示してやる」
「イーリス嬢、この闘技場での決闘を認めてください」
「……。わかりました認めましょう」
イーリスは2人の言い争いを止めることなく静観し、2人の決闘を認めることにした。
「ご指名を頂き本当にありがとうございます。国王陛下より特待生として入学して、真の聖女へとなる為に日々研鑽を重ねる所存でございますが、部活動は第1魔法研究部ではなく、リーリエさんが発足される料理研究部に入部致します」
ローゼは力強く堂々たる言葉でイーリスに述べる。
ゲームでは、正義の令嬢として全教員全生徒からの熱い信頼を得ているイーリスが、ローゼを第1魔法研究部に特別推薦枠で勧誘したので、誰も反論することはできなかった。しかし、リアルの世界では、ローゼはイーリスの勧誘を断ったことで、大勢の新入生達が歓喜の拍手やエールを送って喜ぶことになる。
「平民!よくぞ断った。お前には第1魔法研究部は分不相応だ」
「田舎平民と堕落令嬢、良い組み合せだ。お前の判断は正しいぜ」
「ガハハハ。なんて良い日なんだ。これは偽聖女と認めたのと同じことだ」
心無いエールや賛辞が闘技場内に響き渡る。
「黙りなさい」
イーリスが一蹴すると新入生たちは静かになる。誰もイーリスに逆らう根性など持ち合わせてはいない。
「本当に良かったのローゼ」
私は再びローゼに問いかける。
「もちろんです。第1魔法研究部に入らなくても光魔法の勉強はできますので、リーリエさんに迷惑をかけるつもりはありません」
ローゼの揺るがない意志はイーリスの耳にも届く。イーリスは私の方をちらっと見てから、何かさとっかのような優しい笑みを浮かべて話し出す。
「非常に残念ですが貴女の選択を尊重致します。もし、光魔法でわからないことがあれば私に相談してください」
正義の令嬢と言われるだけあってイーリスの態度は潔い。ローゼの気持ちを理解して深追いをすることはない。しかし、ここで、空気を読めない男が大声で叫ぶ。
「君は本当にそれで良いのか!真の聖女を目指すならば第1魔法研究部に入るのが道理であるはずだ」
イーリスの側で待機していたフラムが大声で叫ぶ。その発言を聞いた新入生たちは明らかに不機嫌な顔をする。せっかく第1魔法研究部に入部できる枠が1つ減ったのに、フラムの言葉でその1枠が埋まってしまうのは非常に困る。しかし、第1魔法研究部副部長であり、5大貴族の1人であるフラムに意見など言えるはずがない。
「フラム様、私の意志は変わりません」
ローゼはきっぱりと答える。
「おい!堕落令嬢。お前はどんな卑怯な手を使ってローゼ嬢をたぶらかしたのだ」
フラムは顔を真っ赤にして激高した。ゲームでも怒りを見せる場面もあったが、ここまで怒りをあらわにするのは驚きだ。
「リーリエさんは関係ありません。私の意志で決めたのです」
「君は堕落令嬢に騙されているのだ。もっと聖女としての自覚を持ってくれ」
フラムは感情的に怒鳴りつける。しかし、ローゼに怒っているのではなく、ローゼを騙したと思われている私に怒っているようだ。その証拠に私はすごい形相で睨みつけられていた。
「フラム、妹を侮辱する発言を取り消せ」
兄は我慢の限界であった。新入生の私へのヘイトを唇を噛みしめてグッと怒りを抑えていたが、フラムからのヘイトに対しては怒りを抑えることができず、地面を蹴ってジャンプして闘技台に舞い降りた。
「やかましい。俺は真実を述べているだけだ。貴様の妹は3属性を授かったにもかかわらず遊び惚けている堕落令嬢だろ。自領で遊び惚けていれば良いのに、権力とお金で由緒あるこの学院に入学した不届き者だ」
フラムは感情をむき出しにして罵倒する。しかし、その言葉の内容はほとんどの新入生も感じていることだった。そのように思われる原因を作ってしまった私は言い訳できる立場ではない。
「違います!リーリエさんが堕落令嬢だなんて嘘です」
真っ先に大声で叫んだのはローゼであった。
「ありがとう、ローゼ嬢。君は偏見に惑わされることなく自分の目で現実を見ることができる心の清き人だ。それに比べてフラム、お前は物事を上辺でしか判断できない愚か者だ。お前みたいな男が第1魔法研究部の副部長を任されているとは、第1魔法研究部の権威も今年で終わりだな」
兄は鋭い目つきでフラムを睨みつける。
「騎士ごときが魔法士様を評価するとは滑稽だ。騎士とは魔法士になれなかった落ちこぼれ集団、身の程をわきまえてこの場から立ち去れ」
フラムは兄を睨み返して恫喝する。
「お前は何か勘違いをしている。騎士が魔法士に劣っている事実など何もない。妹への侮辱、騎士への侮辱、どのように責任を取るつもりだ」
「ハハハハハ、ハハハハハ。妹が堕落令嬢なら兄は妄想子息だな。現実がわからずに妄想ばかりして頭がおかしくなったようだな。ハハハハハ、ハハハハハ」
フラムはおかしくて笑いが止まらない。
「それなら騎士と魔法士、どちらが強いか模擬戦でもしてみるか」
兄は余裕の笑みを浮かべてフラムを挑発する。
「その勝負受けてやろう。この場で騎士の無能さを俺が示してやる」
「イーリス嬢、この闘技場での決闘を認めてください」
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