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第7話 兄の成長

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 私は兄の思いに感銘を受け、聖騎士になるルートから逃げることを恥ずべき行為だと感じてしまった。兄は私の為に高みを目指す困難なルートを選択した。それに引き換え私は安易なルートを選択しても良いのだろうか?たしかに、ローゼに魔王討伐を任せた方が命を落とす危険はないし、兄が私に嫉妬して道を踏み外すこともないだろう。でも、それはゲームでの話しである。今、確実にゲームとは違うルートへ突入していると言っても過言でない。仮に私が聖騎士ルートに軌道修正をしても、兄は嫉妬に狂って憎悪に飲み込まれることはない。そう思うと、私は呪いのアイテムを外すべきである。

 私は呪いのアイテムの解除方法を知っている。ゲームでは兄に付けられた呪いのアイテムを外す方法を見つけることができずに2年間も状態異常のままゲームをすすめることになる。しかし、ゲームを2周目に挑戦すると、呪いのアイテムを解除する方法を教えてもらえる隠しイベントが発生する。呪いのアイテムを解除する方法は案外簡単であった。それは神殿で準聖女に解除の魔法をかけてもらうというオーソドックスな方法だ。私は次の日、神殿へ向かい呪いのアイテムを解除して欲しいとお願いした。


 ※準聖女とは、水属性の属性進化の1つである光属性に進化した者をさす。光魔法は使えないが光魔法を使うことができる。



 「何を言ってるのでしょうか?あなたには呪いなどかかっていません」


 私は衝撃な言葉を耳にして目の前が真っ暗になった。私は準聖女に呪いなどかかっていないと言われて、神殿を追い返されたのである。それどころかその後、剣の技術が成長しないのは呪いのせいだと狂言をしていると領内に悪い噂が轟くことになった。こうして、私は呪いを解くことができずに2年が過ぎてしまった。


 
 ※リーリエ・レーヴァンツァーン 15歳 身長172㎝ 黒髪のベリーショート 胸は成長しなかったが手足が長い八頭身の美女になる。(ゲームの設定どおりに成長を遂げる)



 ここは王都の闘技場、私は剣聖試験を受けに来ていた。


 「リーリエ、お前はやるだけのことはやった。見習い騎士だからといって恥じることはない」


 父は成長しない私を見捨てることなく2年間の特訓に付き合ってくれた。


 「お父様、申し訳ありません。お父様の2年間の努力を無駄にしてしまいました。すべて私の責任です」


 安易に呪いのアイテムを付けた自分が悪い。


 「気にするな。お前はレーヴァンツァーン家に恥じない努力をした。私はそれだけで満足しているぞ」


 父は私を励ましているのではなく心の底からそう思っている。その証拠に父は晴れやかな笑顔をしている。


 「ありがとうございます」


 私は父の笑顔に心が救われた。


 「リーリエ、よく頑張った。俺はお前のたゆまぬ努力を誇りに思っている。明日からは自分のやりたいことを自由に選べば良い。俺はお前が選んだ道を全力で応援する」


 共に剣聖試験を受けに来ていた兄が私を励ましてくれた。
 
 ゲームの兄は、私を憎み嫉妬に狂って顔つきから体系まで2年間で激変することになる。温和な顔は、つり上がった突き刺すような赤い瞳の憎悪に満ちた陰険な顔へ変貌し、身長185㎝体重は120㎏を越えていて、樽のような肉体には髑髏の入れ墨が施されていた。しかし、今の兄は二重の大きな赤い瞳に高い鼻筋の優しい顔つきのイケメンとなり、身長は変わらず185㎝だが、体重70㎏と細身の筋肉質の体系になっていた。


 「はい。お兄様も剣聖試験がんばってください」


 私は剣の特訓が休みの日は、前世の記憶をたよりにスイーツ作りを頑張っていた。このスイーツは家族にとても好評で、いずれ領内で出店する許可も得ていた。当初の夢に近づきつつあるが素直に喜ぶことはできなかった。本当に私が選んだルートは正解だったのか自信が持てないからだ。しかし、私の落ち込んだ気持ちを晴れやかにする出来事が起きた。




 「お兄様……本当におめでとうございます」
 「ありがとう。でも、俺はお前のおかげで強くなれたのだ。感謝しているぞ。今回もお前が考案したチョコレートケーキは持ってきているのだろう。合格祝いにたくさん食べさせてくれ」

 「はい、お兄様」


 ゲームではこの時、中級騎士に合格する設定だったはずの兄が上級をも通り越して特級騎士に合格したのである。
 ゲームの兄は私を妬む気持ちで剣の腕を磨いていた。しかし、妬みや恨みでは成長の種は育たない。だがリアルの世界では、私の為に強くなると決めた兄は、自分の中に眠る才能の種を見事に開花させたのだ。誰かを思う気持ちは恨みよりも愛の方が成長すると証明した。私は兄の成長をとても嬉しく感じる一方、私はこのまま自領に残りスローライフを目指すべきなのか迷っていた。

 
 その日の夜、宿屋にて……。
 
 私は宿屋のベットで熟睡をしていた時、父と兄が宿屋の一室で話しをしていた。

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