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第5話 呪いのリングの効果
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私は呪いのアイテムをポケットに入れて占い館【フルーフ】を出る。
「リーリエ様、恋が成就するアイテムをもらえて良かったですね」
メローネは優しい笑顔で微笑む。隠蔽魔法の効果でメローネには私が恋の相談をしているように聞こえていた。
「うん。占いに来て良かったです」
メローネに嘘がバレないように笑顔を作って話を合わす。その後、王都にあるオシャレなお店を数件巡ってから父と約束していた時間に宿屋へ戻り、父達と一緒に夕食を食べて1日を終えた。次の日、王都の闘技場で剣聖試験が開催され、ゲームのシナリオ通りに兄は下級騎士に合格した。
「下級騎士に合格できたのは父上のご指導の賜物です。今後も精進して父上のような偉大な騎士を目指したいと思います」
兄は涙を流しながら父に感謝の意を述べて今後の決意を述べる。
「メッサー、よくやったぞ。お前は私の後を継ぐ自慢の息子だ。このまま努力を惜しまずに騎士道を極めるのだ」
「はい、お父様」
兄は父に褒められて天にも昇るような気持になる。顔をぐちゃぐちゃにして両手を握りしめ体を大きく震わせて喜んでいた。私はあんなにも喜んでいる兄の姿を見たのは初めてだった。
「お兄様、おめでとうございます。下級騎士に合格するなんてすごいです」
兄の嬉しそうな姿を見て私も嬉しさが込み上げてきた。兄が2年間毎日たゆまぬ努力をしていたのは知っている。前世の記憶が蘇り、兄が合格するのは知っていたので、合格したこと自体に驚きや喜びを感じることはない。しかし、兄の嬉しそうな顔を見ていると、体の芯から熱い気持ちが込み上げてきて、思わず祝福の言葉が飛び出てしまった。私が3属性を得たことで、兄が私を憎んでいるのは知っている。秘策を成就させるまでは、兄とは少し距離を置いた方が良いとも思っていた。でも、私は祝福せずにはいられなかった。
「リーリエ、ありがとう。俺はお前にも負けない立派な騎士になる」
これは兄からの宣戦布告ではない。兄は私の言葉に素直にお礼を告げ、自分の強い意志を示したのである。その証拠に兄は私を抱きしめて素敵な笑みをプレゼントしてくれた。この時、私はこの幸せを失いたくないとより強く願う。ゲームでは私の才能に妬み、当主の座を奪われない為に、あらゆる嫌がらせを私に仕込んでくる。幼少期から一緒に過ごした優しい兄を、ゲームのような嫉妬と憎悪に狂う悪魔へ変貌をさせたくはない。私は昨日手に入れた呪いのアイテムを使って、絶対に秘策を成功させなければいけないと心に誓うのであった。
帰りの馬車の中は、行きの重い雰囲気とは一変して、終始兄は笑顔で私達に声をかけ賑やかな雰囲気で帰宅した。
「この指輪はどのような効果があるのかなぁ?」
私は自宅の部屋に戻り呪いのアイテムを眺めていた。呪いのブレスレットはゲームに登場したので効果は知っている。しかし、呪いのリングの効果はわからない。
「2年間我慢すれば良いことね。それに、危険と判断すれば奥の手があるわ」
呪いのアイテムは1度装着すると2年間は外すことができなくなる。しかし、絶対に外せないわけではない。安易に2つも呪いのアイテムを装着するのは危険だが、奥の手がある私は安易に呪いのアイテムを2つも装着してしまった。
『デーレン・デーレン・デーレン』
不穏な音が脳内に鳴り響き、呪いのアイテムは体と同化して目視できなくなった。ゲームのように兄から呪いのブレスレットを付けられた時と同じ効果音が響き、呪いのアイテムが体と同化したので、本当に呪われたのであろう。ゲームでは呪われるとステイタス異常の表示がなされ、ステイタス画面を開くと、全てのステイタスが10分の1になっているのが確認できるのだが、リアルの世界では目視で確認するのは不可能である。
「あれ、体が凄く重く感じるわ」
呪いのアイテムをつけた瞬間、強制ギプスをつけられたかのように体を動かすのが重くなり、全身に負荷がかかっているように感じた。これがリアルとゲームの違いなのであろう。ゲームでは呪いのアイテムを装着したところで、実際の自分の体に影響がでるわけではない。しかし、ここはリアルの世界、恐らく筋力、体力などすべての体を動かす機能が10分の1に低下したのであろう。これは生活にも支障をきたすことになるだろう。でも、ここで逃げ出すことはできない。私が聖騎士になるルートは魔王と戦うだけでなく、優しい兄との決別を意味している。兄は父のような立派な騎士になると宣言した。私は兄の夢を叶えるためにも呪いのアイテムを装着して生活を送ると覚悟を決めた。
「リーリエ、どうした。もうへたばったのか!」
珍しく父が声を荒げていた。
「ごめんなさい、お父様。すこし休ませてください」
【鑑定の儀】が終わり、兄の剣聖試験も終えたので、私の騎士としての特訓が本格的に始まった。レーヴァンツァーン家では、8歳になると騎士になるための訓練を開始する。訓練と言っても剣の使い方、剣技の座学、魔法の座学など初歩的な剣に馴染むための基礎練習と知識の勉強になる。実際に厳しい特訓をするのは【鑑定の儀】の結果により、騎士としての資質が判断されてからだ。ゲームでは3属性を手にした私は、スポンジのようにみるみる剣技を吸収し、僅か1か月で兄を圧倒し、2年後には近衛騎士に合格する。しかし、呪いのアイテムを装着した私は、5年間続けた下積みの訓練が嘘のような体たらくな姿をみせることになった。
「リーリエ、バフはかけているのか!」
私は水と土と風の3つの属性を授かっている。水は回復特化、土は物理攻撃特化、風はデバフ・バフ特化だ。別に属性がなくても全ての属性を使うことはできるので、5年間で4つの属性の勉強はしている。風の属性を持つ私はデバフにも特化しているので、魔力を操作して、体力・筋力などを大幅に強化できるはず。しかし、呪いのブレスレットによりすべてのステイタスは10分の1になっている。それでも、これほどまでに体が動かないわけではない。私がすぐにバテて体が動けなくなるのは別の理由がある。それは呪いのリングの効果であった。
「リーリエ様、恋が成就するアイテムをもらえて良かったですね」
メローネは優しい笑顔で微笑む。隠蔽魔法の効果でメローネには私が恋の相談をしているように聞こえていた。
「うん。占いに来て良かったです」
メローネに嘘がバレないように笑顔を作って話を合わす。その後、王都にあるオシャレなお店を数件巡ってから父と約束していた時間に宿屋へ戻り、父達と一緒に夕食を食べて1日を終えた。次の日、王都の闘技場で剣聖試験が開催され、ゲームのシナリオ通りに兄は下級騎士に合格した。
「下級騎士に合格できたのは父上のご指導の賜物です。今後も精進して父上のような偉大な騎士を目指したいと思います」
兄は涙を流しながら父に感謝の意を述べて今後の決意を述べる。
「メッサー、よくやったぞ。お前は私の後を継ぐ自慢の息子だ。このまま努力を惜しまずに騎士道を極めるのだ」
「はい、お父様」
兄は父に褒められて天にも昇るような気持になる。顔をぐちゃぐちゃにして両手を握りしめ体を大きく震わせて喜んでいた。私はあんなにも喜んでいる兄の姿を見たのは初めてだった。
「お兄様、おめでとうございます。下級騎士に合格するなんてすごいです」
兄の嬉しそうな姿を見て私も嬉しさが込み上げてきた。兄が2年間毎日たゆまぬ努力をしていたのは知っている。前世の記憶が蘇り、兄が合格するのは知っていたので、合格したこと自体に驚きや喜びを感じることはない。しかし、兄の嬉しそうな顔を見ていると、体の芯から熱い気持ちが込み上げてきて、思わず祝福の言葉が飛び出てしまった。私が3属性を得たことで、兄が私を憎んでいるのは知っている。秘策を成就させるまでは、兄とは少し距離を置いた方が良いとも思っていた。でも、私は祝福せずにはいられなかった。
「リーリエ、ありがとう。俺はお前にも負けない立派な騎士になる」
これは兄からの宣戦布告ではない。兄は私の言葉に素直にお礼を告げ、自分の強い意志を示したのである。その証拠に兄は私を抱きしめて素敵な笑みをプレゼントしてくれた。この時、私はこの幸せを失いたくないとより強く願う。ゲームでは私の才能に妬み、当主の座を奪われない為に、あらゆる嫌がらせを私に仕込んでくる。幼少期から一緒に過ごした優しい兄を、ゲームのような嫉妬と憎悪に狂う悪魔へ変貌をさせたくはない。私は昨日手に入れた呪いのアイテムを使って、絶対に秘策を成功させなければいけないと心に誓うのであった。
帰りの馬車の中は、行きの重い雰囲気とは一変して、終始兄は笑顔で私達に声をかけ賑やかな雰囲気で帰宅した。
「この指輪はどのような効果があるのかなぁ?」
私は自宅の部屋に戻り呪いのアイテムを眺めていた。呪いのブレスレットはゲームに登場したので効果は知っている。しかし、呪いのリングの効果はわからない。
「2年間我慢すれば良いことね。それに、危険と判断すれば奥の手があるわ」
呪いのアイテムは1度装着すると2年間は外すことができなくなる。しかし、絶対に外せないわけではない。安易に2つも呪いのアイテムを装着するのは危険だが、奥の手がある私は安易に呪いのアイテムを2つも装着してしまった。
『デーレン・デーレン・デーレン』
不穏な音が脳内に鳴り響き、呪いのアイテムは体と同化して目視できなくなった。ゲームのように兄から呪いのブレスレットを付けられた時と同じ効果音が響き、呪いのアイテムが体と同化したので、本当に呪われたのであろう。ゲームでは呪われるとステイタス異常の表示がなされ、ステイタス画面を開くと、全てのステイタスが10分の1になっているのが確認できるのだが、リアルの世界では目視で確認するのは不可能である。
「あれ、体が凄く重く感じるわ」
呪いのアイテムをつけた瞬間、強制ギプスをつけられたかのように体を動かすのが重くなり、全身に負荷がかかっているように感じた。これがリアルとゲームの違いなのであろう。ゲームでは呪いのアイテムを装着したところで、実際の自分の体に影響がでるわけではない。しかし、ここはリアルの世界、恐らく筋力、体力などすべての体を動かす機能が10分の1に低下したのであろう。これは生活にも支障をきたすことになるだろう。でも、ここで逃げ出すことはできない。私が聖騎士になるルートは魔王と戦うだけでなく、優しい兄との決別を意味している。兄は父のような立派な騎士になると宣言した。私は兄の夢を叶えるためにも呪いのアイテムを装着して生活を送ると覚悟を決めた。
「リーリエ、どうした。もうへたばったのか!」
珍しく父が声を荒げていた。
「ごめんなさい、お父様。すこし休ませてください」
【鑑定の儀】が終わり、兄の剣聖試験も終えたので、私の騎士としての特訓が本格的に始まった。レーヴァンツァーン家では、8歳になると騎士になるための訓練を開始する。訓練と言っても剣の使い方、剣技の座学、魔法の座学など初歩的な剣に馴染むための基礎練習と知識の勉強になる。実際に厳しい特訓をするのは【鑑定の儀】の結果により、騎士としての資質が判断されてからだ。ゲームでは3属性を手にした私は、スポンジのようにみるみる剣技を吸収し、僅か1か月で兄を圧倒し、2年後には近衛騎士に合格する。しかし、呪いのアイテムを装着した私は、5年間続けた下積みの訓練が嘘のような体たらくな姿をみせることになった。
「リーリエ、バフはかけているのか!」
私は水と土と風の3つの属性を授かっている。水は回復特化、土は物理攻撃特化、風はデバフ・バフ特化だ。別に属性がなくても全ての属性を使うことはできるので、5年間で4つの属性の勉強はしている。風の属性を持つ私はデバフにも特化しているので、魔力を操作して、体力・筋力などを大幅に強化できるはず。しかし、呪いのブレスレットによりすべてのステイタスは10分の1になっている。それでも、これほどまでに体が動かないわけではない。私がすぐにバテて体が動けなくなるのは別の理由がある。それは呪いのリングの効果であった。
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