乙女ゲームの主人公に転生した私は、魔王退治はもう1人の主人公にお願いして、スローライフを目論んでいたら堕落令嬢と呼ばれていました。

ninjin

文字の大きさ
上 下
1 / 77

第1話 ゲームの世界に転生しちゃいました

しおりを挟む
 私の名前はリーリエ・レーヴァンツァーン。レーヴァンツァーン公爵家の長女である。レーヴァンツァーン公爵家は国王から授かったレーヴァンツァーン領を収める領主であり、フォルモーント王国の5大貴族の一角をなす名門貴族である。レーヴァンツァーン家は剣に秀でた才能を受け継ぐ血筋であり、父シュヴェールト・レーヴァンツァーンは騎士ランク上位2番目の近衛騎士の称号を授かっている。
 
 ※リーリエ・レーヴァンツァーン 女性 13歳 身長150㎝ 黒髪のベリーショート 二重の大きな赤い瞳 奇麗な鼻筋 小さく艶のあるピンク色の唇 雪のように白い肌 胸は小さく細身の体。
 
 ※この世界では剣聖試験という騎士のランクを定める試験があり、下から見習い騎士→下級騎士→中級騎士→上級騎士→特級騎士→王国騎士→近衛騎士→聖騎士となる。
 
 
 私は偉大な父に近づくための訓練を8歳の頃から始めた。明日は私の13歳の誕生日、13歳になると体内に秘めた魔力が全開放されて、自分の魔力属性を知ることができる。そして、魔力が全開放されたことにより、より強い訓練を受けることができるようになる。しかし、魔力属性によっては騎士でなく魔法士の道に進むことにもなるので私はとても緊張していた。


 「お父様と同じ魔力属性でありますように」


 私は大きな窓から見える赤く光る満月に向かってお祈りを捧げる。
 

 「リーリエ様、明日は【鑑定の儀】でございます。奥さまから早く寝かしつけるようにと申し受けていますのでお休みください」
 「もう少しだけ祈らせてよ」


 一生を左右する【鑑定の儀】の前日は誰しもが不安で眠れない。


 「リーリエ様、不安なのですね。私も一緒にお祈りさせていただきます」


 私の専属メイドであるメローネが一緒に祈りを捧げてくれた。幼い頃からずっと面倒をみてくれているメローネが、一緒にお祈りをしてくれたので、私の心は落ち着いてすぐに眠ることができた。


 ※メローネ 女性 25歳 身長168㎝ 栗毛のポニーテール 上流貴族出身のメイドでありグラビアモデルのような体系の美女。



 『ドテッ』


 室内に大きな音が響く。それは私がベッドから転げ落ちた音であった。


 「え!あの夢はもしかして……」


 私はベッドから転げ落ちるほどのとんでもない夢を見た。


 「私の名前はリーリエ・レーヴァンツァーン……この国の名前はフォルモーント王国……お父様の名前、お兄様の名前、そしてメイドのメローネは……間違いないわ!あのゲームと全て一致しているわ!」

 
 私は驚きで体の震えが止まらない。それは私が見た夢の内容が前世の記憶の一部であったからである。そして、前世の夢を見たことをきっかけに、次々と前世の記憶が蘇ってきた。


 「どうして急に前世の記憶が蘇ったの?……もしかして、魔力が全開放されたことで前世の記憶が蘇ったのかしら?」


 この世界は私が20歳の時にドはまりした乙女ゲーム【黒百合の聖騎士と白薔薇の聖女】とそっくりな世界である。私が転生したのはダブル主人公の1人黒百合の聖騎士リーリエだ。【黒百合の聖騎士と白薔薇の聖女】は、黒百合の聖騎士リーリエと白薔薇の聖女ローゼの2人から主人公を選択できる乙女ゲームになる。リーリエを選択すると聖騎士を目指しながら、4人の女生徒との恋愛値を高めてハーレムパーティーを形成し、フォルモーント王国学院3年生の時に復活する魔王を倒す内容となる。一方ローゼを選択すると聖女を目指しながら、4人の男子生徒との恋愛値を高めてハーレムパーティーを形成し、フォルモーント王国学院3年生の時に復活する魔王を倒す内容となる。内容的には恋愛対象が男か女の違いだけのように思えるが実際は大きな違いがある。それは、リーリエでは戦闘がハードモードに設定されていることである。逆にローゼでは戦闘がイージーモードに設定されており、恋愛を主軸としたゲームになる。要約するとローゼはチート級の魔法使いなので、戦闘時はほぼ無双に近い状態なのだ。もしも、セーブ機能があるゲームならどちらの主人公を選んでもさほど問題はないだろう。しかし、ここは生死が存在するリアルの世界、リーリエに転生したことは悲劇でしかなかった。


 「ある程度のゲームの内容は思い出したわ。でも、ゲームの内容がわかっていても、私に魔王が倒せるの……」


 まだゲームの世界だと断定するには情報量は少ない。でも万が一に備えて、ゲームの世界だと考えて行動する必要があると思った瞬間に厚い重圧が私にのしかかり、額から大粒の汗が流れ出る。ただの乙女ゲームなら気分は楽であった。しかし、リーリエバージョンは恋愛要素よりもバトル要素が特化した設定のため、何度もゲームオーバーを繰り返すことになる。特に魔王を倒すのは困難極まりないので、50回はやり直した記憶がある。このままゲームのシナリオ通り聖騎士になるルートを進めば私は確実に死ぬことになるだろう。

 前世の私は25歳という若さで死んだ。原因は過労である。せっかく生まれ変わったのに前世の年齢より早くに死んでしまうのは嫌だ。前世の私の夢は都会を離れて小さなカフェをひらいてのんびりと暮らしたいと思っていた。今、私は5大貴族の娘、父は大きな領地を持ち莫大な資産がある。父は私が望めば何でも叶えてくれる激アマな父だ。しかし、ゲームのシナリオだと、今日受ける予定の【鑑定の儀】の結果、騎士としての才能が認められて、父から鬼のような特訓を受けることになる。もし、騎士としての才能がなければ、ゲームとは違った別の人生を歩むことができるのかもしれない。

 ここで私はひらめいたのである。


 「そうだ!魔王退治はローゼにお願いしましょ」


 この世界で魔王を倒せる人物は私だけではない。もし、ゲームの世界と同じならローゼもいるはずだ。しかも、私が何度も挑戦して倒した魔王をローゼはチート級の魔法を使いこなし簡単に倒すことができる。私よりも素晴らしい適任者がいるのに、あえて私が聖騎士になって魔王を倒すルートを辿る必要はない。


 「私はこの世界でカフェをひらいてのんびり過ごすのよ」


 私は聖騎士になり魔王を倒すルートを回避することにした。ここで問題になるのは、どうやって聖騎士を倒すルートを回避するかである。私は今日受ける【鑑定の儀】の結果で3属性の魔力を持っていることがわかり騎士の才能があると認められる。

 ※魔力属性 魔力は基本4つの属性がある。火【魔法攻撃特化】 水【回復特化】 土【物理攻撃特化】 風【デバフ・バフ特化】。
 火と水は魔法士向き。土と風は騎士向きとされる。属性は基本1つになるが、稀に2つ3つの属性を持つ者もいる。注)属性進化により新たな属性を手にすることもある。属性進化の中でも超レアな属性が聖女のみが使える光属性になる。


 「【鑑定の儀】の結果を変えることは不可能だわ。それならどうすれば良いの」


 私は聖騎士の道を断念せざるを得ないルートを模索する。


 「そうだわ。もし、ここがゲームの世界ならアイテムが存在するはずだわ。アイテムを使えばお父様も私を騎士にすることを諦めるはずよ」


 私はある秘策を思いついたのであった。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

[完結長編連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ・更新報告はTwitterで
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...