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ルーセン商会

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 「荒れているな!」

 「またアイツが出しゃばって来た。いつも俺の邪魔をする」


 町にある居酒屋で、パンジャマンは冒険者仲間のエリオットに愚痴をこぼしていた。


 「新人記録を抜かれたわけじゃないだろ」

 「記録は抜かれていないが、アイツらは昼過ぎで狩りを辞めて、解体をしてから戻って着ている。内容的には俺たちが負けたとみんな思っている」

 「そうみたいだな。で、お前はどうしたいのだ?」

 「俺のが実力が上だと証明をしてやりたい」

 「具体的にどうしたいのだ」

 「それは・・・」

 「あまり下手な事をして目立つことはやめてくれよ。お前は実力のない冒険者をバカにしているから、冒険者達からは嫌われているだろ。そのうちギルドから指導がくるはずだ」

 「実力のないヤツは冒険者をやめるべきだと、当然の事を口にしているだけだ。それのどこが悪いのだ?」

 「俺たちは1度Dランクの魔獣の世界で失敗をしているだろ。お前はその時に顔に大きな傷を負った。お前は大口を叩く資格はない・・・と冒険者達は言っているぞ」

 「あれは・・・装備品が弱かっただけだ。アイツのように高額な装備品や魔銃があれば、俺だってDランクでも上手くやっていけたはずだ。でも、もうその心配はない。魔銃もネージュからアヴァランチに変え、装備もレザーアーマーからチェーンメイルにそして、コート―・オブ・プレートも手に入れた。それに新しいサーコートには特別の刺繡を施している。俺のが強い事を証明したら再びフレーズの町へいくつもりだ」

 
 ※コート・オブ・プレートとは、布や革の外衣の裏側に鉄板を張り付けた防具である。これにチェーンメイルを重ねる事で防御力は向上する。


 「動きは問題ないのか?」

 「ああ、魔獣の世界の素材を使っているからそこまで違和感がない。しかし、レザーアーマーに比べたら重さは感じるが、後衛の俺には関係ないだろ」

 「そうか。万全の体制を備えたのなら、サミュエルにシャッス・バタイユ(狩猟対決)を仕掛けるのはどうだ?」


 シャッス・バタイユとは、どちらが多くの魔獣を退治できるか勝負する対決である。勝つために妨害行為など行われるので、冒険者ギルドからは禁止されている。


 「それだ!シャッス・バタイユでアイツらに俺の実力を見せつけてやる」

 「俺が段取りを組んでやる。それまでに新しい装備・魔銃に慣れておいてくれ」

 「わかったぜ」


 三日後。


 私の最近の日課は、まず朝起きてすぐにギルドに行くことである。サミュエルがいつ魔獣の世界に行く手続きをするのかわからないので、朝の8時から12時までギルドの隅っこに座って待っている。


 『今日は申請に来なかったわね。でも、ポール君がルーセン商会の手伝いの依頼を受けていたわ。ちょっと覗きに行ってみようかしら?』


 私は何もなければ解体作業の見学に行くつもりだったが、ポールの依頼内容に興味をもったのでルーセン商会に行くことにした。

 ルーセン商会とは、サミュエルの両親が設立した商会であり、あらゆる分野に手を広げている。魔銃や防具品などを販売している魔武具店、治療薬や魔道コンロなど冒険や生活に必要とする物を販売している魔道具店、家畜の肉や果物、野菜などを販売している食品店など多岐にわたる。
 ルーセン家が多岐にわたる事業を携わるようになったのは、魔武具店で大成功をおさめたからである。そして、成功できた理由の1つとして、レアの両親が関係している。
 レアの父ガスパールはブラーブまで上り詰めた有能な冒険者であり、いろんな魔獣の世界に赴き珍しい素材を持ち帰り、レアの母であるヴィクトリアが新たな魔道具のレシピを開発した。そのレシピを元にルーセン家が新たな魔道具を普及させて財をなしたのである。レアの両親の協力により大金を手にしたルーセン家は事業を拡大して、王都バナンにも店を持つほどの大商人となったのである。

 私がいまから行くのはルーセン商会の魔武具店である。魔武具店にも興味があったので、心躍る気持ちで赴くのであった。


 『ここがルーセン商会の魔武具店ね。1度入ってみたいと思ってたのよ』


 パステックに唯一ある魔武具店だが、大きな町と遜色のない品ぞろえであり、魔銃のカスタムなども請け負ってくれる。なので、わざわざ他の町の冒険者なども買いに来るほどの人気店である。孤児院に支給されるエタンセルはルーセン商会から格安で購入されている。

 私はガラス越しでしか店の中を見た事がなかったので、店の中に入れる事が出来るので興奮が抑えきれない。
 

 『入るぞぉ!』


 私は魔武具店の扉の前に立ち、扉を押してみた・・・


 『あれ?開かない。そうか!押してダメなら引いてみよ・・・あれ?ドアノブがない・・・』


 魔武具店の扉は透明な二枚のガラスのようなもので出来ていて、扉をあけるドアノブのようなものがついていないのである。


 『これは、どうやって開けるのかな?』


 私はドアの前で考えていると、背後から声が聞こえた。


 「あの依頼のおかげで大金を手に入れたぜ!これで念願のチェインメイルが買えるぞ」

 「俺はどうしようかな?エタンセルを卒業してフラムにするか、それとも、レザーアーマーからチェインメイルにしようかな?めっちゃ迷うぜ」

 「お前もチェインメイルにしようぜ」

 『あ!だれか買いに来たわ。でもドアは空きませんよ』


 私は背後に人が来たのでさっと横に避けて、心の声で忠告をしてあげた。しかし、2人がドアの前に立つと扉は自動に開いたのである。


 『あ!これが魔道扉だったのね』


 ※魔道扉とは、魔力を感知すると自動に開く扉。開発者はヴィクトリアである。


 『私も入るの!』


 私は急いで2人の後を追ったが扉は閉まり頭をぶつけた。

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