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オーディション
しおりを挟む危うく婚姻届けにサインをするところだったが鼓さんのファインプレーで阻止できた。そして、俺はシルバー事務所のモデルとして働く事となった。
「契約は成立したわ。早速だけど今から仕事よ」
「うん、うん」
「え!」
契約したばかりの俺にいきなり仕事があるわけがない。これは初めから仕組まれた仕事に違いないと俺は体がゾクゾクした。
「フ~フ~」
しかし、体がゾクゾクした原因は仕事の事じゃなく笑さんが俺の耳元に息を吹きかけていた事に気づく。
「何をするんですか笑さん」
ビックリした表情の俺を見た笑さんは口を手で塞いで嬉しそうに笑う。
「かわいい!」
「ほんとに辞めてください。それよりも俺にどんな仕事をさせるつもりですか?」
横道にそれたので本題に戻る。俺は一体どのような仕事をさせられるのだろうか?
「羅生天君から聞いていると思うけどGWは開けてくれているの?」
俺は羅生天からGWは開けておいてほしいと言われていたので、バイトを入れずにすべて開けていた。
「5月3日から5月5日の3日間、大阪鳳凰ドームで【2023大阪エボリューション】が開催されるの。このイベントは妃(きさき)さんが夏服の新作を発表する日本中が注目する日本最大のファッションショーであり、日本のトップモデルが集結するモデルの聖地とも言われているの。エボリューションに出演することはモデルの夢であり、これを機に芸能界へ進出する人もいる特別なイベントなのよ」
「うん、うん」
「俺がいきなりそんな凄いイベントに参加できるのですか?」
「もちろん無理よ」
俺が超絶イケメンであったとしても、いきなりそんな大イベントに参加できるわけがなかった。それに、モデルの聖地と呼ばれる場所に来るモデルは、俺と同等もしくは俺を越えるイケメンが集結する場所だ。俺がイケメン無双できる場所ではない。
「だから、今からオーディション会場に向かうのよ。【2023大阪エボリューション】の前座イベントである【2023ジェムストーン】は【2023大阪エボリューション】の特別参加枠を掛けた新人発掘イベントになっているの。だから、まず初めに【2023ジェムストーン】に出場するためのオーディションにシルバー事務所の推薦枠を使って参加してもらう」
「うん、うん」
「俺で大丈夫なのですか?」
モデルの世界はイケメンだからで通用するほど甘い世界ではない。イケメンは最低条件であり、イケメンとプラスアルファの要素が大事である。それは、特技や頭脳・話術などはもちろんであるが、人とは違うオーラ、雰囲気、空気、匂いなど目に見えない要素も重要になる。モデルは決して服を引き立たせるためのマネキンではなくショーの主役である。逆に服はモデルを引き立たせるための小道具であり良きパートナーである。服が主役のファッションショーなど観客は喜ばない。見たいのは服ではないモデルだ。あのモデルが着ているからその服が着たいという欲求が発生する。妃さんはその事に注目し奇抜な服でショーを盛り上げる演出などしない。誰でも着こなせるようなシンプルだが、モデルの良さを引き立たせる服をデザインして、世界中から注目を浴びるようになった。服が主役の時代は終焉を迎え、今は個性あふれる唯一無二のモデルを見るのがファッションショーの主流だ。
「昴君なら問題ない。イケメン鑑定士の異名を持つ笑が、犬のように発情する逸材なの昴君は。今、シルバー事務所の男性部門で活躍するモデルは笑が発掘したイケメンコレクションなの。そのイケメンコレクションのトップに君臨する器が昴君にあると笑は言っているの」
「子宮が疼く」
「わかりました。オーディションに参加します」
俺は承諾する。1流のモデルに成れる自信はないが、自分自身がどこまでモデル業界で通用するか試してみたい気持ちが湧き出たからである。ありきたりのバイトをするよりもモデルとして、今まで知らなかった世界で働くのも悪いことではない。むしろ、第二の人生を謳歌するにはもってこいの仕事であると思った。
「今日は第1次オーディションよ。鳳凰ドームの横にある鳳凰ビルの会場で面接があるわ。今すぐ車で向かうわよ」
「うん、うん」
「あの~服はこれでいいのですか?」
オーディションに参加するのにスェットでは失礼だろう。もう少しオーディションに合わせた服を着る必要がある。
「全て車に用意してあるわ」
「うん、うん」
全て鼓さんの計画通りに進んでいる。俺がモデル事務所に入り第1次オーディションに受けるのも計画通りなので全て準備をしてくれていた。俺はマンションの地下に連れて行かれ、用意してあった黒塗りの高級車に乗り込み、高級車の中でオーディション用の白のTシャツに紺のスリムパンツに着替えさせられる。
「行くわよ」
「うん、うん」
俺は高級車で大阪市内にある鳳凰ビルに向かった。
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