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おもちゃ

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 「福井は木原が怖いんだな」
 「そうだよ。アイツは恐ろしい奴だよ。僕は木原君にボコボコにされた人を何人も見てきた。でも、御手洗君がいつも止めに入ってくれていた。このクラスに2人が居た時、正直ショックだった。でも、御手洗君がいるから、御手洗君と仲良くしていれば大丈夫だと思った。でも、それを六道君がぶち壊したのだよ」

 福井は終始小声で周りに聞こえないように俺に訴えていた。しかし、今更どうにか出来る事ではない。

 「俺が何とかする」

 俺は自分自身を守る為にも木原と向き合うしかない。そもそも木原の標的は俺である。しかも、木原の父親にも俺は怒りをかっている。木原は父親の命令で御手洗に逆らう事をしなかった。木原は父親には絶対に逆らえない環境下で育ったのであろう。だから、父親の命令に従っていたはず。今回は木原の父親から俺を殺せと命令されている可能性もある。俺は後2日で木原対策を万全にしないといけないと再確認した。
 
 俺はそんな思いを福井に見せることなく堂々たる言葉を放ち、福井は俺を信頼して冷静さを少し取り戻した。

 「六道君を信じるよ」

 俺はクラスの平穏を保つためにも木原に絶対に勝たなければいけない。

 20分くらいバスに乗るとくろんど池バーベキュー場に着いた。バスの中は俺と福井以外は楽しそうにみんなわいわいと騒いでいたので、俺と福井の会話を聞いた者は誰もいなかった。



 くろんど池バーベキュー場の大型駐車場には俺たち以外の学校のバスも止まっていた。それは縄手学院の生徒が乗ったバスである。

 「今日は昴君に会えそうね」

 極上の笑みを浮かべる日車 鼓(ひぐるま つづみ)さん。

 「しかし・・・どうしてあんたも来ているの!」
 「ククク」

 鼓さんの横には怪しい笑みを浮かべる男子のジャージを着た銀 笑(しろがね えみ)さんが居た。

 「実行委員は私と山田君だったはずよ。なんで笑がいるのよ!」
 「山田は腹痛でトイレにこもっている。代わりに私が来たの」

 「笑、朝に山田君にクッキーをあげていたわよね。もしかして、あれって・・・」
 「策にかかるヤツが悪い」

 「そこまでして昴君に会いたかったの!」
 「うん、うん」

 「このことは実行委員長には伝えてあるの?」
 「うん、うん」

 「それならいいわ。私たちは1年3組の担当だから、いまからキャンプ場まで誘導するから着いて来て」
 「ノー、ノー。イソ高のバスが止まった。私はあちらへ向かう」

 笑さんは小走りで走り去った。

 
 俺達はキャンプ場に着くと早速班ごとで作業を始める。火おこし係の仕事はかまど作りから始まる。くろんど池の近くには小さな川が流れていてそこに落ちている石でかまどを作る事になる。かまどを作るにはいくつかの石の積み方があるが、一番標準的な「コの字石組み」で作る事にした。これは字のごとくコの字に石を組むかまどで鍋などを熱する効率が良い。
 火おこし係がかまどを作っている間に調理係が支給された野菜などをカットする。その間にタープ設置係はかまどを作っている近くにタープを設置する。みんながそれぞれの役割を頑張っているので俺の出番はなく退屈であった。
 しばらくするとタープ設置係の丸川さんの姿がない事に気づいた。俺は気になったので相川に聞いてみた。

 「丸川さんなら山本さんとトイレに行くと言ってたよ。でも、なかなか戻って来ないね」

 山本さんとは料理班の地味系なぽっちゃりした女子である。

 キャンプ場の近くにもトイレがあるが、簡易トイレなので女子はそれを使いたくはないのでキャンプ場の施設の綺麗なトイレに行く。しかし、それから10分経過したが丸川さんが戻ってこない。俺は心配になったので施設まで行くことにした。


 「丸川、磯川高校に行ってたの!」
 「・・・」

 「なぜ?地元の交野高校には進学しなかったの。あなたの学力だと交野高校は簡単に合格できるはずよね?」
 「・・・」

 「あ!そうか。チクりの丸川はみんなの嫌われ者だから交野高校には行けなかったのね」
 「・・・」

 丸川さんは口を閉じて何も言い返しはしない。

 「隣に居るのはお友達かしら?デブとブサイクでお似合いのコンビね!」

 丸川さんと一緒に居た山本さんも黙って俯いている。山本さんはおとなしい性格なので何も言い返せない。それどころか恐怖で体が震えている。

 「笠原さん、この方たちは誰なの?私にも紹介してくれませんか」
 「そこの男みたいな髪型の子は丸川と言って、すぐに先生にチクるチクり魔よ。みんなから嫌われて不登校になったおバカさん。隣にいるデブは誰か知らないけど丸川と一緒にいるくらいだから同じ部類の人間よ。こんな奴らと一緒の空気を吸わないといけないと思うと腹が立つわ」

 「笠原さん、私の悪口は言ってもかまわないけど、山本さんは関係ないでしょ」

 黙っていた丸川さんが重い口を開く。

 「あなたのようなクズと一緒にいるのが悪いのよ!あなたのせいで私たちがどれだけ大変な目にあったと思っているの」
 「それはあなた達が悪いからよ」
 
 「なんでもかんでも先生にチクるあなたが全て悪い」
 「そんなことはない。洋子をいじめていたあなた達が悪い」

 「洋子はいじめられて当然の子。いじめられる事でクラスの雰囲気を良くしてくれる楽しいおもちゃなの。私のおかげでクラスは活気あふれる楽しいクラスになっていたのに、あなたはすぐに先生に告げ口をして邪魔をする。私がどれだけ先生を抑えるのに苦労したかわかっているの?それに、あなたが余計な事をしたから洋子は転校してしまったわ。私からおもちゃを奪ったあなたは当然の報いを受けるべきなのに、あなたは学校に来なくなった卑怯者よ」
 「何をバカな事を言っているの?そんな狂気じみた考えは間違っている」

 「あなたのような人間の出来損ないはおもちゃとして、私達を楽しませる義務があるの。それをどうして理解出来ないのかしら」

 狂気の目で笠原さんは丸川さんを見ていた。


 人物紹介 笠原 愛子(かさはら あいこ) 縄手学院1年生 丸川さんと同じ桜が丘西中出身。身長170㎝と長身でスタイルの良い長い金髪の綺麗な女性。

 注意事項 実際にあるくろんど池キャンプ場とこの作品のくろんど池キャンプ場は別物です。あくまで創作なのでご理解お願いします。

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