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帰り道
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「いきなり変な事を言ってごめんね」
丸川さんは俺が驚いている様子に気づいて慌てて謝る。
「あぁ」
俺は気の利いた言葉も思いつかずにただ頷くように答える。
「塩野君が六道君に親近感を持てると言った気持ちが私もすごくわかるの」
「そうなんだ」
「うん。六道君はイケメンなのに私たちの班に決まった時、嫌な顔をしなかったよね。それがとても嬉しかったの」
「そうなんだ」
「そうよ。私だけじゃなく他の子も思っているの。クラスの班分けをした時に私達は余った人たちが集まったグループなの。みんなおとなしくてどうしたらいいのかわからずに席にずっと座っていたの」
入学式初日でいきなり生徒たちに班分けするのは俺はおかしいと思う。名前の順で席が並んでいるので、席の順番で班分けする方が簡単で、面倒なコミュニケーションをとる必要もない。しかし、先生の考えは逆であったらしい。席が近い人とは自然と仲良くなりやすいので、あえていろんな人とコミュニケーションを取る為に、生徒自身で班分けをするように促したらしいが、コミュ障の俺や人見知りをする人、おとなしい人には過酷な時間であったと思う。
「俺も遅刻せずに来ていたらそうなっていたと思う」
「そんなふうに見えないけどなぁ~」
「俺、人と喋るのは苦手」
「そうみたいね。それが驚きだったわ」
丸川さんは班の役割分担での俺の様子を見てすぐに俺の性格を理解したようである。
「陽キャの人は苦手やから、この班でホッとしたのが本音だよ」
「私も苦手。六道君は一瞬陽キャだと思ったから、私たちの班に来ることになって少し緊張したけど、普通の人で良かったわ」
その後も丸川さんと何気ない会話をしていたが、駅に近づくと俺を避けるように距離を取る。
「六道君と一緒に居ると目立つから私は先に行くね」
「あぁ」
四条畷駅に近づくにつれて人が多くなる。同じ時刻に学校が終了した縄手学園の1年生が駅の向かっている、磯川高校は校区内の学生が多いが縄手学園は違う。縄手学園は大阪でもトップクラスの偏差値を誇り、なおかつ部活動も強いので近畿各地から縄手学院へ通学するので、電車通学の割合が多いのである。磯川高校行きのバスはないが、縄手学院行きのバスはあるので、バスが四条畷駅に着くと多数の学生が降りて来る。
丸川さんは俺といると目立つというよりも嫉妬の対象になることを避けるために俺から離れて、先に駅に向かって走り出したのである。案の定、バスから縄手学院の学生が降りて来ると俺に目をやる学生が大勢いた。
「あの人めっちゃカッコよくない」
「ほんとほんと」
バス停から離れていても女子高生の話し声が俺の耳に届いて来る。俺は恥ずかくて俯きながら改札口を通って駅のホームに向かう。すると、丸川さんが1人で駅のホームに立っていた。俺はあえて離れたホームで電車を待つことにする。
「あの人カッコよくない?」
「ホントだぁ~モデルみたいに背が高いわ」
駅のホームにも縄手学院の女子生徒が数名いて、俺の方を少し離れた場所から見ている。ブサイクだと得る事の出来ない熱い視線が、反対側のホームからも感じ取れ、丸川さんが俺から離れた意味が痛いほどわかる。これほどまでに好機の視線にさらされるのは快感とは真逆で苦痛でしかない。俺は電車が到着すると逃げるように飛び乗った。
縄手学院の教室にて・・・
「きーちゃん、電車ですごいイケメンに出会ったのよ」 日車 鼓(ひぐるま つづみ)
「ほんと!」 きーちゃん
「笑(えみ)も見たよね」 鼓
「うんうん。やば」 銀 笑(しろがね えみ)
「写メは撮ってないの?」 きーちゃん
「いきなり写メはヤバいかなと思って名前だけ聞いたのよ」 鼓
「うんうん。自己紹介もした」 笑
「そっちのがヤバくない?」 きーちゃん
「それほどカッコよかったのよ」 鼓
「そうなんだぁ~私も見たい。何処の高校なの?」 きーちゃん
「磯川高校の1年生よ」 鼓
「うんうんイソ1」 笑
「縄手だったらよかったのにぃ~」 きーちゃん
「私も思った」 鼓
「うんうん」 笑
「たしか磯高の1年もくろんど池でバーベキューをするはずなの」 鼓
「縄手も1年の時に親睦を深める為にくろんど池でバーベキューをしたよね」 きーちゃん
「うんうん。肉うま」 笑
「ネットで調べたら来週の月曜日が磯高のバーベキューの日なのよ」 鼓
「じゃ、今年は縄手と同じ日になるのね」 きーちゃん
「うんうん。乗り込む」 笑
「2年生の私達じゃ参加できないわよ」きーちゃん
「きーちゃん、大事な事を忘れているわ」 鼓
「うんうん。抜け穴発見」 笑
「留年でもするの?」 きーちゃん
「進級した今じゃそれは無理よ」 鼓
「いやいや、それもあり」 笑
「笑、それは無理よ。鼓、どうやってバーベキューに参加するつもりなの?」 きーちゃん
「実行委員になるのよ。1年生のバーベキューの準備のサポートを2年の実行員がする事になっているわ」 鼓
「なるなる」 笑
「でも実行委員はクラスで男女一名ずつのはずよ。私達今年も同じクラスだから、1人しかなれないわ」 きーちゃん
「だから・・・私がなるのできーちゃんと笑は諦めてね」 鼓
「・・・」 笑
縄手学院で不穏が動きがあった。
丸川さんは俺が驚いている様子に気づいて慌てて謝る。
「あぁ」
俺は気の利いた言葉も思いつかずにただ頷くように答える。
「塩野君が六道君に親近感を持てると言った気持ちが私もすごくわかるの」
「そうなんだ」
「うん。六道君はイケメンなのに私たちの班に決まった時、嫌な顔をしなかったよね。それがとても嬉しかったの」
「そうなんだ」
「そうよ。私だけじゃなく他の子も思っているの。クラスの班分けをした時に私達は余った人たちが集まったグループなの。みんなおとなしくてどうしたらいいのかわからずに席にずっと座っていたの」
入学式初日でいきなり生徒たちに班分けするのは俺はおかしいと思う。名前の順で席が並んでいるので、席の順番で班分けする方が簡単で、面倒なコミュニケーションをとる必要もない。しかし、先生の考えは逆であったらしい。席が近い人とは自然と仲良くなりやすいので、あえていろんな人とコミュニケーションを取る為に、生徒自身で班分けをするように促したらしいが、コミュ障の俺や人見知りをする人、おとなしい人には過酷な時間であったと思う。
「俺も遅刻せずに来ていたらそうなっていたと思う」
「そんなふうに見えないけどなぁ~」
「俺、人と喋るのは苦手」
「そうみたいね。それが驚きだったわ」
丸川さんは班の役割分担での俺の様子を見てすぐに俺の性格を理解したようである。
「陽キャの人は苦手やから、この班でホッとしたのが本音だよ」
「私も苦手。六道君は一瞬陽キャだと思ったから、私たちの班に来ることになって少し緊張したけど、普通の人で良かったわ」
その後も丸川さんと何気ない会話をしていたが、駅に近づくと俺を避けるように距離を取る。
「六道君と一緒に居ると目立つから私は先に行くね」
「あぁ」
四条畷駅に近づくにつれて人が多くなる。同じ時刻に学校が終了した縄手学園の1年生が駅の向かっている、磯川高校は校区内の学生が多いが縄手学園は違う。縄手学園は大阪でもトップクラスの偏差値を誇り、なおかつ部活動も強いので近畿各地から縄手学院へ通学するので、電車通学の割合が多いのである。磯川高校行きのバスはないが、縄手学院行きのバスはあるので、バスが四条畷駅に着くと多数の学生が降りて来る。
丸川さんは俺といると目立つというよりも嫉妬の対象になることを避けるために俺から離れて、先に駅に向かって走り出したのである。案の定、バスから縄手学院の学生が降りて来ると俺に目をやる学生が大勢いた。
「あの人めっちゃカッコよくない」
「ほんとほんと」
バス停から離れていても女子高生の話し声が俺の耳に届いて来る。俺は恥ずかくて俯きながら改札口を通って駅のホームに向かう。すると、丸川さんが1人で駅のホームに立っていた。俺はあえて離れたホームで電車を待つことにする。
「あの人カッコよくない?」
「ホントだぁ~モデルみたいに背が高いわ」
駅のホームにも縄手学院の女子生徒が数名いて、俺の方を少し離れた場所から見ている。ブサイクだと得る事の出来ない熱い視線が、反対側のホームからも感じ取れ、丸川さんが俺から離れた意味が痛いほどわかる。これほどまでに好機の視線にさらされるのは快感とは真逆で苦痛でしかない。俺は電車が到着すると逃げるように飛び乗った。
縄手学院の教室にて・・・
「きーちゃん、電車ですごいイケメンに出会ったのよ」 日車 鼓(ひぐるま つづみ)
「ほんと!」 きーちゃん
「笑(えみ)も見たよね」 鼓
「うんうん。やば」 銀 笑(しろがね えみ)
「写メは撮ってないの?」 きーちゃん
「いきなり写メはヤバいかなと思って名前だけ聞いたのよ」 鼓
「うんうん。自己紹介もした」 笑
「そっちのがヤバくない?」 きーちゃん
「それほどカッコよかったのよ」 鼓
「そうなんだぁ~私も見たい。何処の高校なの?」 きーちゃん
「磯川高校の1年生よ」 鼓
「うんうんイソ1」 笑
「縄手だったらよかったのにぃ~」 きーちゃん
「私も思った」 鼓
「うんうん」 笑
「たしか磯高の1年もくろんど池でバーベキューをするはずなの」 鼓
「縄手も1年の時に親睦を深める為にくろんど池でバーベキューをしたよね」 きーちゃん
「うんうん。肉うま」 笑
「ネットで調べたら来週の月曜日が磯高のバーベキューの日なのよ」 鼓
「じゃ、今年は縄手と同じ日になるのね」 きーちゃん
「うんうん。乗り込む」 笑
「2年生の私達じゃ参加できないわよ」きーちゃん
「きーちゃん、大事な事を忘れているわ」 鼓
「うんうん。抜け穴発見」 笑
「留年でもするの?」 きーちゃん
「進級した今じゃそれは無理よ」 鼓
「いやいや、それもあり」 笑
「笑、それは無理よ。鼓、どうやってバーベキューに参加するつもりなの?」 きーちゃん
「実行委員になるのよ。1年生のバーベキューの準備のサポートを2年の実行員がする事になっているわ」 鼓
「なるなる」 笑
「でも実行委員はクラスで男女一名ずつのはずよ。私達今年も同じクラスだから、1人しかなれないわ」 きーちゃん
「だから・・・私がなるのできーちゃんと笑は諦めてね」 鼓
「・・・」 笑
縄手学院で不穏が動きがあった。
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