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告白
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俺は塩野の何気ない言葉に緊張が解けてスムーズに班をまとめる事が出来て役割分担も順調に決まった。火おこしは上園、塩野。調理は女子の山本、山川、山中、茜雲。タープの設置は相川、川原、丸川。丸川さんは今日欠席の茜雲さんの気持ちを考慮して、タープの設置係になることした。各班も分担が決まりみんなは自分の席に戻る。
「まだ、教科書の購入の時間には少し時間がありますので、バーベキューの詳細を説明したいと思います」
今日の学校の日程では、入学式が終えて教室に戻り、各自自己紹介をしてからホームルームにてバーベキューの役割を決め、教科書の購入になる。1年生全員まとめて購入することはできないので、1クラスごとの購入になる。1年生は全てで5クラスあり俺は1年5組なので教科書の購入は一番最後になる。昔は10クラスあったのでかなり学生の人口が減っている。
雪月花先生がバーベキューのカリキュラムを説明が終わる頃、俺たちのクラスの教科書の購入時間が着た。その日は教科書を購入すると午前中で学校が終わり帰宅する。
学校が終わり俺は1人で駅に向かう。社交的でもなく、人と喋るのが苦手な俺がすぐに友達が出来るわけもなく1人で駅に向かうのは当然の流れだし、電車通学している学生よりも自転車通学している学生のが圧倒的に多いので、駅に向かう学生も少なかった。
34年前は、交流を深める為のバーベキュー大会などなかった。それに、クラスメートの顔ぶれも全く違う。しかし、チカン騒動はあの頃と同じだったので、全てが全く異なるパラレルワールドではないようだ。34年前と同じ出来事もあるが、違う事柄もある。前回の知識を利用して第二の人生を無双できるほど甘いものではないと実感した。
「六道君!」
俺の背後から女性の声が聞こえた。振り返ると丸川さんが居た。
「六道君も電車で通学なの」
「あぁ」
「そうなんだ。六道君はどこ中なの」
「俺は山田中学校」
「・・・どこにあるの?」
俺が通っていた中学は磯川高校からはかなり離れている。なので磯川高校に入学する学生で山田中学を知っている人は少ない。部活などしていれば、大会で名前を知る事もあるだろうけど、丸川さんは全く知らないようである。
「京田辺市だよ」
「京田辺市?」
「京田辺市は京都にあるんだ」
「六道君は京都から通学しているんだね」
「あぁ」
「私は桜が丘西中だよ。知っているかな」
俺がなぜ遠くの磯川高校に進学したのか丸川さんは追求はしなかった。恐らく俺への気遣いであろう。桜が丘西中は磯川高校のある四条畷市の横の市である寝屋川市にある中学である。俺は京田辺市民なので桜が丘西中の事は入学当時は知らなかったが今の俺は昔の記憶があるので知っている。しかし、知っているのは違和感があるので知らないふりをする。
「聞いたことがない」
「そうだよね。京都に住んでいるならしらないよね。寝屋川市にあるんだよ」
「へぇ~そうなんだ」
入学初日の会話と言えば、何処の中学の出身かを聞くのがベターな会話である。たいていなら、そこから会話が発展していくが、校区外から来ている俺には通用しない話題ともいえる。案の定、声を掛けてもらったのに俺は会話を広げる事が出来ない。
「私は通学は30分くらいだけど六道君はどれくらいかかるのかな?」
丸川さんは、誰にでも声を掛ける人見知りをしない明るい性格である。なので、口数の少ない俺にたいして、話を広げようと頑張ってくれている。俺もせっかく声をかけてくれているので必死に話をしようとするが、返答するだけで精一杯である。
「俺は1時間くらい」
「そうなんだ。通学大変だね」
「あぁ」
俺なりに一生懸命返答をするが会話が弾むことはない。しかし、駅に着くまで丸川さんはたわいもない話題をふってくれて、気まずい間を作らないようにしてくれる。丸川さんはお世辞にも可愛いといえない容姿の持ち主であるが、気さくで明るく声を掛けてくれるので愛嬌のある子だと俺は感じた。ものおじもしないので上園にも意見を言ったのであろう。バーベキューの班では、丸川さん以外の女子はほとんど喋る事はなかった。丸川さんが主導で女子をまとめているのだろう。
「途中まで一緒だね」
「あぁ」
俺はぶっきらぼうな返事しか出来ない。コミュ障出身の俺に女子と話す事は簡単なことではない。それが、たとえ美人でない女性でも同じである。異性というだけで俺の心臓の鼓動は早くなり顔を見て話す事もできない。そんな俺に対して気を臆することなく話しかけてくれる丸川さんはとても良い人であろう。
「私も六道君と一緒で、同じ中学の人がクラスにいないから馴染むのは大変なのよ」
「あぁ」
俺も丸川さんになぜ地元の高校に行かなかったのか聞くことはない。丸川さんにも聞かれたくない事情があるのかもしれない。しかし、一番最初に絶対に聞かれる質問なので、隠さずにきちんと聞いた方が良いのかもしれない。
「私、前の学校でいじめられていたの。だから、地元の高校を避けて磯川高校に来たのよ」
「・・・」
丸川さんのいきなりの告白に俺はすぐに返事をすることは出来なかった。
「まだ、教科書の購入の時間には少し時間がありますので、バーベキューの詳細を説明したいと思います」
今日の学校の日程では、入学式が終えて教室に戻り、各自自己紹介をしてからホームルームにてバーベキューの役割を決め、教科書の購入になる。1年生全員まとめて購入することはできないので、1クラスごとの購入になる。1年生は全てで5クラスあり俺は1年5組なので教科書の購入は一番最後になる。昔は10クラスあったのでかなり学生の人口が減っている。
雪月花先生がバーベキューのカリキュラムを説明が終わる頃、俺たちのクラスの教科書の購入時間が着た。その日は教科書を購入すると午前中で学校が終わり帰宅する。
学校が終わり俺は1人で駅に向かう。社交的でもなく、人と喋るのが苦手な俺がすぐに友達が出来るわけもなく1人で駅に向かうのは当然の流れだし、電車通学している学生よりも自転車通学している学生のが圧倒的に多いので、駅に向かう学生も少なかった。
34年前は、交流を深める為のバーベキュー大会などなかった。それに、クラスメートの顔ぶれも全く違う。しかし、チカン騒動はあの頃と同じだったので、全てが全く異なるパラレルワールドではないようだ。34年前と同じ出来事もあるが、違う事柄もある。前回の知識を利用して第二の人生を無双できるほど甘いものではないと実感した。
「六道君!」
俺の背後から女性の声が聞こえた。振り返ると丸川さんが居た。
「六道君も電車で通学なの」
「あぁ」
「そうなんだ。六道君はどこ中なの」
「俺は山田中学校」
「・・・どこにあるの?」
俺が通っていた中学は磯川高校からはかなり離れている。なので磯川高校に入学する学生で山田中学を知っている人は少ない。部活などしていれば、大会で名前を知る事もあるだろうけど、丸川さんは全く知らないようである。
「京田辺市だよ」
「京田辺市?」
「京田辺市は京都にあるんだ」
「六道君は京都から通学しているんだね」
「あぁ」
「私は桜が丘西中だよ。知っているかな」
俺がなぜ遠くの磯川高校に進学したのか丸川さんは追求はしなかった。恐らく俺への気遣いであろう。桜が丘西中は磯川高校のある四条畷市の横の市である寝屋川市にある中学である。俺は京田辺市民なので桜が丘西中の事は入学当時は知らなかったが今の俺は昔の記憶があるので知っている。しかし、知っているのは違和感があるので知らないふりをする。
「聞いたことがない」
「そうだよね。京都に住んでいるならしらないよね。寝屋川市にあるんだよ」
「へぇ~そうなんだ」
入学初日の会話と言えば、何処の中学の出身かを聞くのがベターな会話である。たいていなら、そこから会話が発展していくが、校区外から来ている俺には通用しない話題ともいえる。案の定、声を掛けてもらったのに俺は会話を広げる事が出来ない。
「私は通学は30分くらいだけど六道君はどれくらいかかるのかな?」
丸川さんは、誰にでも声を掛ける人見知りをしない明るい性格である。なので、口数の少ない俺にたいして、話を広げようと頑張ってくれている。俺もせっかく声をかけてくれているので必死に話をしようとするが、返答するだけで精一杯である。
「俺は1時間くらい」
「そうなんだ。通学大変だね」
「あぁ」
俺なりに一生懸命返答をするが会話が弾むことはない。しかし、駅に着くまで丸川さんはたわいもない話題をふってくれて、気まずい間を作らないようにしてくれる。丸川さんはお世辞にも可愛いといえない容姿の持ち主であるが、気さくで明るく声を掛けてくれるので愛嬌のある子だと俺は感じた。ものおじもしないので上園にも意見を言ったのであろう。バーベキューの班では、丸川さん以外の女子はほとんど喋る事はなかった。丸川さんが主導で女子をまとめているのだろう。
「途中まで一緒だね」
「あぁ」
俺はぶっきらぼうな返事しか出来ない。コミュ障出身の俺に女子と話す事は簡単なことではない。それが、たとえ美人でない女性でも同じである。異性というだけで俺の心臓の鼓動は早くなり顔を見て話す事もできない。そんな俺に対して気を臆することなく話しかけてくれる丸川さんはとても良い人であろう。
「私も六道君と一緒で、同じ中学の人がクラスにいないから馴染むのは大変なのよ」
「あぁ」
俺も丸川さんになぜ地元の高校に行かなかったのか聞くことはない。丸川さんにも聞かれたくない事情があるのかもしれない。しかし、一番最初に絶対に聞かれる質問なので、隠さずにきちんと聞いた方が良いのかもしれない。
「私、前の学校でいじめられていたの。だから、地元の高校を避けて磯川高校に来たのよ」
「・・・」
丸川さんのいきなりの告白に俺はすぐに返事をすることは出来なかった。
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