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俺の人生
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俺は六道 昴(ろくどう すばる)。50歳で独身さらにニートである。高校を卒業して中小企業に就職をしたが、コミュニケーションが苦手なうえ、手先も不器用でどんくさい俺は3か月も立たないうちに仕事をクビになった。それでも、人並みの人生を歩むべく別の会社に転職をするが結果は同じであった。
自分に正社員はむいていないのではないかと思い、アルバイトを始めるが結果は変わらない。それでも、俺は親に迷惑を掛けたくなかったので、様々な業種のアルバイトを転々としながらも、ニートにはならずに30歳まで地道に頑張っていた。
「私の机に触らないで!気持ち悪いんだけど」
30歳の時、俺は派遣バイトで電池を製造する会社で働いていた。その日は、棚卸の日で製造ラインはストップしていたので、俺は男性社員に頼まれて事務所に書類を運びに来ていた。俺は書類を言われた場所に置いたときに机に手が触れた。すると、女性の事務員が俺の事を汚物を見るような目で言い放った。
「・・・」
俺は突然の出来事で何も言い返せずに俯いた。
「何を突っ立ているのよ。忙しいのに邪魔をしないでよ」
「じゃ・・・じゃまなんて・・し・・てません」
俺は勇気を振り絞って震えるように声を発した。
「きっしょ」
「・・・」
俺は心ない女性の言葉に怖くて泣き出しそうであった。
「吉原さん、何を騒いでいるんだ」
「高坂課長、聞いてください。あのバイトが私の仕事を邪魔するんです」
「君は派遣バイトの六道君だね」
「は・・・はい」
「六道君は何かしたのかい」
「書類を・・・届けに来た・・・だけです」
「そうなのか、ありがとう。六道君」
「は・・・はい」
「吉原さん、六道君は書類を運びに来ただけと言っているんだけど?」
「アイツは汚い手で私の机を触ったのよ。ホント気持ち悪いわ」
吉原は怪訝そうな顔つきで大声で叫ぶ。
「・・・」
俺は小学生の頃からクラスメートから「気持ち悪い」などの悪口は言われていたが、何も言い返せずに黙って耐えていた。中高はおとなしく教室で誰にも関わらずに害のないように過ごしていたので、誰にも相手にされずに平穏な学生生活をおくれるようになっていた。しかし、久しぶりに聞いた「気持ち悪い」という言葉は、俺の心臓に杭を刺したかのように、激しい痛みが心に浸透した。
「うぅぅぅぅ・・・俺は何も悪い事なんてしていない」
俺はしゃがみ込んみ頭を抑えながら呟く。
「吉原!失礼な事を言うな。六道君に謝りなさい」
「嫌よ。私は何も悪い事はしていないわ。アイツが悪いのよ」
吉原は急に泣き出した。吉原の泣き声でたくさんの社員が事務所に集まって来た。
「アイツが悪いのよ。アイツが悪いのよ」
泣き叫ぶ吉原の声を聞いて集まった社員たちは、俺を事務所から引きずり出した。
「お前、吉原に何をした」
「前から何かしでかすと俺は思っていたぞ。この不細工野郎がぁ」
集まった社員達は俺に罵詈雑言をぶつける。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は社員達を振り払って全速力で会社から逃げ出した。
あれから俺は部屋に引きこもるようになり、そして、ニートとなった。
「昴!御飯が出来たわよ」
「・・・」
50歳、独身、ニートの俺には明るい未来などない。親が死ぬまで寄生する生活をおくるだけである。親が死んだら俺はどうなるのだろう?と考えても仕方がないことだから考えないようにしている。
親は毎日3食の食事を欠かさずに作ってくれる。俺の健康の事も考えて塩分控えめの食事に、野菜多めの食事、ついでにサプリも用意されている。冷蔵庫を開ければ、ヨーグルトや牛乳、乳酸菌の飲料など健康に気を使った品が豊富に買い揃えてある。親にとってはニートである俺でも大事な子供であるのは変わりないのである。
俺は冷蔵庫を開けるたびに、このままではいけないと思うのだが、玄関の扉を開けて外の世界に出る勇気がない。
部屋のドアを開けると作ってくれた食事が置いてある。今日の晩飯はサラダ、塩サバ、生姜焼きである。野菜が苦手なので、サラダは小さな器に入っている。俺は嫌いなモノから食べる主義なので、先にサラダを食べ、次に塩サバを食べる。肉が大好きな俺は最後に生姜焼きを食べるのであった。
「おかん・・・ごめん」
親は俺の健康を考えて食事を作ってくれている。そして、俺の好きなモノを一品は必ず用意してくれる。こんなにも親は俺の事を大事にしてくれているのに、俺は何一つ親孝行をしていない。
今日も俺は家でゲームをしアニメを見て1日が終わる。こんな生活を20年も続けていた。
「さて、トイレでも行くか!」
トイレは1階にあり俺の部屋は2階である。階段を降りるのが面倒なので、トイレはギリギリまで我慢して、漏れそうになってから行くことにしている。そして、今日もトイレをギリギリまで我慢して、膀胱がパンパンになったので慌ててトイレに駆け出した。
俺の家は木造の2階建て築40年以上の古い家である。階段も急であり手すりをきちんと握っていないと危険である。長年使い慣れた急な階段であったが、俺も50代になり、体も思うように動かなくなっていて、階段を踏み外して転び落ちてしまった。
『ドスン』
地震が起きたかのように家が少し揺れて、大きな音が家の中に響いた。
「昴!」
母親が俺の名前を大声で叫ぶ。しかし、俺は二度と目を覚ますことはなかった。
自分に正社員はむいていないのではないかと思い、アルバイトを始めるが結果は変わらない。それでも、俺は親に迷惑を掛けたくなかったので、様々な業種のアルバイトを転々としながらも、ニートにはならずに30歳まで地道に頑張っていた。
「私の机に触らないで!気持ち悪いんだけど」
30歳の時、俺は派遣バイトで電池を製造する会社で働いていた。その日は、棚卸の日で製造ラインはストップしていたので、俺は男性社員に頼まれて事務所に書類を運びに来ていた。俺は書類を言われた場所に置いたときに机に手が触れた。すると、女性の事務員が俺の事を汚物を見るような目で言い放った。
「・・・」
俺は突然の出来事で何も言い返せずに俯いた。
「何を突っ立ているのよ。忙しいのに邪魔をしないでよ」
「じゃ・・・じゃまなんて・・し・・てません」
俺は勇気を振り絞って震えるように声を発した。
「きっしょ」
「・・・」
俺は心ない女性の言葉に怖くて泣き出しそうであった。
「吉原さん、何を騒いでいるんだ」
「高坂課長、聞いてください。あのバイトが私の仕事を邪魔するんです」
「君は派遣バイトの六道君だね」
「は・・・はい」
「六道君は何かしたのかい」
「書類を・・・届けに来た・・・だけです」
「そうなのか、ありがとう。六道君」
「は・・・はい」
「吉原さん、六道君は書類を運びに来ただけと言っているんだけど?」
「アイツは汚い手で私の机を触ったのよ。ホント気持ち悪いわ」
吉原は怪訝そうな顔つきで大声で叫ぶ。
「・・・」
俺は小学生の頃からクラスメートから「気持ち悪い」などの悪口は言われていたが、何も言い返せずに黙って耐えていた。中高はおとなしく教室で誰にも関わらずに害のないように過ごしていたので、誰にも相手にされずに平穏な学生生活をおくれるようになっていた。しかし、久しぶりに聞いた「気持ち悪い」という言葉は、俺の心臓に杭を刺したかのように、激しい痛みが心に浸透した。
「うぅぅぅぅ・・・俺は何も悪い事なんてしていない」
俺はしゃがみ込んみ頭を抑えながら呟く。
「吉原!失礼な事を言うな。六道君に謝りなさい」
「嫌よ。私は何も悪い事はしていないわ。アイツが悪いのよ」
吉原は急に泣き出した。吉原の泣き声でたくさんの社員が事務所に集まって来た。
「アイツが悪いのよ。アイツが悪いのよ」
泣き叫ぶ吉原の声を聞いて集まった社員たちは、俺を事務所から引きずり出した。
「お前、吉原に何をした」
「前から何かしでかすと俺は思っていたぞ。この不細工野郎がぁ」
集まった社員達は俺に罵詈雑言をぶつける。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は社員達を振り払って全速力で会社から逃げ出した。
あれから俺は部屋に引きこもるようになり、そして、ニートとなった。
「昴!御飯が出来たわよ」
「・・・」
50歳、独身、ニートの俺には明るい未来などない。親が死ぬまで寄生する生活をおくるだけである。親が死んだら俺はどうなるのだろう?と考えても仕方がないことだから考えないようにしている。
親は毎日3食の食事を欠かさずに作ってくれる。俺の健康の事も考えて塩分控えめの食事に、野菜多めの食事、ついでにサプリも用意されている。冷蔵庫を開ければ、ヨーグルトや牛乳、乳酸菌の飲料など健康に気を使った品が豊富に買い揃えてある。親にとってはニートである俺でも大事な子供であるのは変わりないのである。
俺は冷蔵庫を開けるたびに、このままではいけないと思うのだが、玄関の扉を開けて外の世界に出る勇気がない。
部屋のドアを開けると作ってくれた食事が置いてある。今日の晩飯はサラダ、塩サバ、生姜焼きである。野菜が苦手なので、サラダは小さな器に入っている。俺は嫌いなモノから食べる主義なので、先にサラダを食べ、次に塩サバを食べる。肉が大好きな俺は最後に生姜焼きを食べるのであった。
「おかん・・・ごめん」
親は俺の健康を考えて食事を作ってくれている。そして、俺の好きなモノを一品は必ず用意してくれる。こんなにも親は俺の事を大事にしてくれているのに、俺は何一つ親孝行をしていない。
今日も俺は家でゲームをしアニメを見て1日が終わる。こんな生活を20年も続けていた。
「さて、トイレでも行くか!」
トイレは1階にあり俺の部屋は2階である。階段を降りるのが面倒なので、トイレはギリギリまで我慢して、漏れそうになってから行くことにしている。そして、今日もトイレをギリギリまで我慢して、膀胱がパンパンになったので慌ててトイレに駆け出した。
俺の家は木造の2階建て築40年以上の古い家である。階段も急であり手すりをきちんと握っていないと危険である。長年使い慣れた急な階段であったが、俺も50代になり、体も思うように動かなくなっていて、階段を踏み外して転び落ちてしまった。
『ドスン』
地震が起きたかのように家が少し揺れて、大きな音が家の中に響いた。
「昴!」
母親が俺の名前を大声で叫ぶ。しかし、俺は二度と目を覚ますことはなかった。
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