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ループ

183.いつもの時間

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「ナスタリア助祭、大丈夫か?」

 ニールに背を叩かれたナスタリア助祭がハッと我に返った。

「す、すみません。ちょっと思い出した事があって⋯⋯そうだ、フィードは?」

「フィードならいつもここに」

 ローザリアの胸元の小さな袋から顔を出しているフィードを見つけたナスタリア助祭がフィードを抱き上げて頬ずりをはじめた。

「ふぎゃ」

「フィード、フィード、フィードありがとう⋯⋯本当にありがとう。薬草の森に行ったらお前が一番好きなやつを真っ先に探すからな。愛してる」

「みぎゃー、みぎゃっ!」

 逃げようとして暴れるフィードをナスタリア助祭がぎゅうぎゅうと抱きしめる。


「おいおい、フィードが潰れるぞ」

 ナスタリア助祭の壊れっぷりに呆然としているとナザエル神父がフィードを助け出した。

「みぃ~、みぎゅ!」

「薬草の森に中々行けないから壊れたか?」

「漸く森に行けそうで興奮しすぎたか」

 残念な者を見るような生暖かい目をしたナザエル神父とニールがナスタリア助祭の頭をよしよしと撫でて振り払われた。

「僕はその、フィードが⋯⋯あー、もー良いですから」



「これからどうするんだ?」

「取り敢えず暫くは王家の様子見ですね。その間に壊れた石碑の修理をしたいと思ってるんですけど⋯⋯」

「子供達の埋葬をしてあげたいんだろ?」

「はい、でももしかしたらごく一部の人だけでも自分のした事を反省して子供達に謝罪に来てくれると良いなとか。そうなったらその人自身がキチンと埋葬してくれるから、子供達も喜ぶんじゃないかと思うんです」

「そうなりゃいいだろうが、まぁ無いだろうな」

「ですよね。だったら、埋葬までしましょう。その後は精霊達が結果を出してくれますしね」

 自分達のしたことを後悔し子供を埋葬しにくれば精霊達は許し力を貸す事もあるだろう。そのまま放置するような者達ならば精霊達がその場からいなくなるか帰ってこないだけの事。

「石碑と遺骨は安全な場所に移動したいんですが、どこか良い場所をご存じないですか?」

「遺骨は教会の共同墓地が良いんじゃね?」

【石碑はスコルの森に運ぶが良かろう】

「みにゃ~」

【では、スコルが許せば結界の中に⋯⋯それ以外はパルフェスの池が良かろう】

「ニコシア侯爵領の石碑は無条件で移動します。ゴミに埋もれてるなんて許せません!」

「ああ、それは勿論」

【精霊達もあの地を離れられれば喜ぶであろう】

 

 教会へ帰るオーガスト枢機卿をジャスパーが送って行った。

「ワシのことは心配なさるな。まだまだ王家のゴミどもにやられる程耄碌してはおらんでな」

 豪快な笑い声を残して精霊王の森を出て行ったが、先刻ローザリアに聖女の座に着くことを断られて凹んだばかりのオーガスト枢機卿。

「あの爺さん、新しい策を練ってくるつもりだろうな」

「大丈夫ですよ。オーガスト枢機卿がどんな策を考えてきても転移してしまえば終わりですから」

「違えねえ。転移覚えたら便利だよなあ」

「おじさんは却下ですね。こっそり転移して魔獣狩りに行きそうですから」

【精霊王みたい~】

【悪戯っ子だったんだよー】


「精霊王の悪戯⋯⋯イメージがありすぎてヤバい」


「そう言えば⋯⋯前世で精霊王はリリアーナと仲が良かったんですよね」

「「「はあ?」」」

【へっ? な、何故そう思ったかな?】

「オーレアンのパーティーの時、2人で仲良くしているよって精霊が教えてくれたんです」

「精霊王、趣味悪⋯⋯」

「イメージダウン」

【ん? あーれーはー、ジンの影響がどのくらい出ているのか調べてただけで!】

「へー、ほー」

 ナザエル神父がしつこく精霊王を揶揄う。

【リリアーナに描かれた闇の魔法陣を見つけたのもあの時だし】

「胸のー、へぇ」

【近づけばわかる! ナザちゃん、加護半分剥奪するぞ!!】

【きゃあ、やろーやろー】

「加護を半分剥奪したらどうなるの?」

【ぴゅーぽたっ】

【チョロチョロさばーん】

「分かった、魔法が制御不能になるんだな。ごめんなさい、それだけは堪忍して下さい」

 ナザエル神父が精霊王の前に土下座した。腕を組んで仁王立ちした精霊王のドヤ顔に精霊達がキャラキャラと笑っている。



 久しぶりの長閑な時間。オーガスト枢機卿には申し訳ないが、彼がいる間はそれらしい雰囲気を頑張っていた精霊王も今はいつも通りにくだけた話し方になっている。

 エリサは相変わらず殆ど話さない。

『メイドは無駄口を叩かないって鍛えられるので話さない癖がついてて』

(お母さんと呼んだら話をしてくれるようになると良いな)



「あの、愛し子ってどう言う存在なんでしょうか?」

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