172 / 191
ループ
171.忘れている意味
しおりを挟む
「前の時は登山の途中ローザリアのことがすごく心配で何度も振り返ったなぁとか、ローザリアの前に立って剣で切り掛かってくる奴をスピアを肩に担いだまま蹴り飛ばしたり。
珍しい薬草を見つけて喜んでたらすごい音がして必死に走り出した時もローザリアの名前を呼んでた気がする」
懐かしい思い出がナスタリア助祭の口から語られた。
「ローザリアの杖に嵌め込まれてるエメラルドを見ると毎回『僕の色』だって妙にソワソワするし、ナナカマドの杖を選んだのは僕だって思ったり。
で、もしかして僕はローザリアの事を⋯⋯その、好きだったんじゃないかと思ったりしたんだけど」
「⋯⋯そう言う話はした事なかったです。すごく大変な旅をしていて、国を守るためにはどうすればいいかって話ばかりしてた気がします」
「そっか⋯⋯ローザリアは全部覚えてるんだよね。僕も覚えてたらなー、そうしたらこんなにモヤモヤしなくて済むのに」
「覚えている人と覚えていない人⋯⋯それぞれに意味があるのかも。少なくとも今のナスタリア助祭と過去のナスタリア神父は別の人ですしね。
ループしていても同じ事が起きるとは限らないし、ナスタリア神父は過去の人でナスタリア助祭は今の人ですから。
ニールなんて完全に別人なんですから」
その後は、無言・無表情で筋肉マッチョだった過去のニールの話で盛り上がった。
「変身するのかしないのか⋯⋯すっごい楽しみだよ!」
「秘密ですからね」
「もちろん!」
(覚えていることにも忘れていることにもきっと理由があるはず。だから、無理に過去を知る必要なんてないと思う。
今のナスタリア助祭はナスタリア神父よりもレオンに近いかな? それはそれで嬉しい気も)
「そう言えば、どうしてエリサに話さないの? お母さんって呼びたいって呼びたいって言ってたのに」
「全部終わってからにしようかなって。エリサの事をお母さんって呼んでそれに応えてもらえたら、緊張の糸が切れちゃいそうだなーって思ったんです」
「そうか。ならローザリアがエリサの事をお母さんって呼べるまで一緒に頑張ろう」
「はい、よろしくお願いします」
釣りを知らないローザリアにナスタリア助祭が説明をはじめた。
「細い棒の先に糸を括り付けてさ、針⋯⋯」
そろそろご飯だとエリサが呼びに来るまでローザリアとナスタリア助祭は久しぶりの休暇を楽しんだ。
夜遅く焚き火を囲んでいたローザリア達の元にナザエル神父とニールが帰って来た。ナザエル神父達はトーマック公爵家がその後どうなったのか、王家や教会はどう動いているのかを調べに行っていた。
「どうだった?」
「クソ野郎はやっぱりクソだったぜ」
「⋯⋯ニール説明宜しく」
ナザエル神父の意味不明な説明に苦笑いしていたニールの話では、全てエリサとローザリアのせいになっていると言う。
「メイドという職種が気に入らず公爵に取り入ろうとして失敗したエリサが闇の魔石を集めていたと言い張っているんだ」
カサンドラはエリサとローザリアがいなくなった後二人の部屋から出てきた闇の魔石の始末に困りクローゼットに保管していたと話している。
「あの日届いた荷物もきっとエリサの仕業だったって言ってる。王家も教会も信じちゃいねえが、王弟妃が『わたくしの名前を騙って送ってくるなんて』って騒いでやがるから収拾がつかなくなってるみてえだな」
教会としては今回の件で亡くなったシスター・タニア⋯⋯力のある光の加護持ちを失ったことへの責任を追求したいが、王家は王弟妃の手前公爵家を守らざるを得ない。
あの日、闇の魔石をカサンドラ宛に送ったのはナスタリア助祭の作戦の一つ。
闇の魔石を王弟妃の名前を騙って送りつけ、それとは別にカサンドラが我を忘れるほどの怒りに燃えるよう幸せ一杯のローザリアの手紙を送りつけた。
ナスタリア助祭の予想通りカサンドラの怒りが爆発し、魔石に閉じ込められていた子供達の恨みや怒りと同調。
「カサンドラが魔力暴走を起こしたのと、魔石の力が解放されて爆発したのはどっちが先か分からないけどね」
暴発した魔石の力はカサンドラの部屋に元からあった魔石に影響し、屋敷内にいたリリアーナの力とも反応。爆発と火災を引き起こした。
「小耳に挟んだんだが、どうやらリリアーナは⋯⋯」
珍しい薬草を見つけて喜んでたらすごい音がして必死に走り出した時もローザリアの名前を呼んでた気がする」
懐かしい思い出がナスタリア助祭の口から語られた。
「ローザリアの杖に嵌め込まれてるエメラルドを見ると毎回『僕の色』だって妙にソワソワするし、ナナカマドの杖を選んだのは僕だって思ったり。
で、もしかして僕はローザリアの事を⋯⋯その、好きだったんじゃないかと思ったりしたんだけど」
「⋯⋯そう言う話はした事なかったです。すごく大変な旅をしていて、国を守るためにはどうすればいいかって話ばかりしてた気がします」
「そっか⋯⋯ローザリアは全部覚えてるんだよね。僕も覚えてたらなー、そうしたらこんなにモヤモヤしなくて済むのに」
「覚えている人と覚えていない人⋯⋯それぞれに意味があるのかも。少なくとも今のナスタリア助祭と過去のナスタリア神父は別の人ですしね。
ループしていても同じ事が起きるとは限らないし、ナスタリア神父は過去の人でナスタリア助祭は今の人ですから。
ニールなんて完全に別人なんですから」
その後は、無言・無表情で筋肉マッチョだった過去のニールの話で盛り上がった。
「変身するのかしないのか⋯⋯すっごい楽しみだよ!」
「秘密ですからね」
「もちろん!」
(覚えていることにも忘れていることにもきっと理由があるはず。だから、無理に過去を知る必要なんてないと思う。
今のナスタリア助祭はナスタリア神父よりもレオンに近いかな? それはそれで嬉しい気も)
「そう言えば、どうしてエリサに話さないの? お母さんって呼びたいって呼びたいって言ってたのに」
「全部終わってからにしようかなって。エリサの事をお母さんって呼んでそれに応えてもらえたら、緊張の糸が切れちゃいそうだなーって思ったんです」
「そうか。ならローザリアがエリサの事をお母さんって呼べるまで一緒に頑張ろう」
「はい、よろしくお願いします」
釣りを知らないローザリアにナスタリア助祭が説明をはじめた。
「細い棒の先に糸を括り付けてさ、針⋯⋯」
そろそろご飯だとエリサが呼びに来るまでローザリアとナスタリア助祭は久しぶりの休暇を楽しんだ。
夜遅く焚き火を囲んでいたローザリア達の元にナザエル神父とニールが帰って来た。ナザエル神父達はトーマック公爵家がその後どうなったのか、王家や教会はどう動いているのかを調べに行っていた。
「どうだった?」
「クソ野郎はやっぱりクソだったぜ」
「⋯⋯ニール説明宜しく」
ナザエル神父の意味不明な説明に苦笑いしていたニールの話では、全てエリサとローザリアのせいになっていると言う。
「メイドという職種が気に入らず公爵に取り入ろうとして失敗したエリサが闇の魔石を集めていたと言い張っているんだ」
カサンドラはエリサとローザリアがいなくなった後二人の部屋から出てきた闇の魔石の始末に困りクローゼットに保管していたと話している。
「あの日届いた荷物もきっとエリサの仕業だったって言ってる。王家も教会も信じちゃいねえが、王弟妃が『わたくしの名前を騙って送ってくるなんて』って騒いでやがるから収拾がつかなくなってるみてえだな」
教会としては今回の件で亡くなったシスター・タニア⋯⋯力のある光の加護持ちを失ったことへの責任を追求したいが、王家は王弟妃の手前公爵家を守らざるを得ない。
あの日、闇の魔石をカサンドラ宛に送ったのはナスタリア助祭の作戦の一つ。
闇の魔石を王弟妃の名前を騙って送りつけ、それとは別にカサンドラが我を忘れるほどの怒りに燃えるよう幸せ一杯のローザリアの手紙を送りつけた。
ナスタリア助祭の予想通りカサンドラの怒りが爆発し、魔石に閉じ込められていた子供達の恨みや怒りと同調。
「カサンドラが魔力暴走を起こしたのと、魔石の力が解放されて爆発したのはどっちが先か分からないけどね」
暴発した魔石の力はカサンドラの部屋に元からあった魔石に影響し、屋敷内にいたリリアーナの力とも反応。爆発と火災を引き起こした。
「小耳に挟んだんだが、どうやらリリアーナは⋯⋯」
17
お気に入りに追加
606
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる