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ループ

170. 闇の精霊ネブリスと光の精霊レムル

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《 スブスタンティア 》

 ローザリアの呪文で一瞬だけ実体化したジン。


「うおー!!」

 ナザエル神父がジンに向けて大量に水を放ちローザリアが凍らせた。ジャスパーの出した足場を駆け上がるナスタリア助祭をニールの風が後ろから煽り勢いをつける。

「グレイソン、奴を引きつけて!」

「おう!」

 グレイソンがダガーを投げジンの注意を引く間にナスタリア助祭がジンの目を狙ってスピアを投げつけた。

「ニール!」

 ニールの風がスピアの追い風になりジンの左目に突き刺さった。

【ぐおぉー】



「ローザリア! 持ってけ!!」

 駆け寄ってきたナザエル神父がローザリアに魔力を譲渡してくれる。

《 光よ、悪しき力を清め清浄の地へと変えよ、プルガーティオ! 》



 ガシャーン!


 石碑が割れジンの姿がぼやけはじめた。


【くそ! 虫ケラの分際で! 覚えておれ!】



 全員が魔力を使い果たし地面に座りこんだ。

 ふわりふわり⋯⋯。

 光の玉が現れた。様々な色と大きさでローザリア達の周りを飛び回る。

【お手伝いできなくてごめんね】

「来てくれてありがとう」

 ローザリアの頬に擦り寄るのはウンディーネ、肩に座ったのは光の精霊レムルと氷の精霊フロスティー。膝の上では雷のドゥークが飛び跳ねている。
 空中で一回転している空間の精霊はロッコス、あちこちに花を咲かせて笑っているのが無と創造の精霊クレア、闇の精霊ネブリスは少し離れたところでおどおどしていた。

 ノームはジャスパーの頭の上に座り太鼓腹を見せ、サラマンダーはナスタリア助祭の前に座って火を吹いては首を傾げている。
 その横では、ニールの髪がシルフの起こす風で舞い上がり⋯⋯。

 ウンディーネがナザエル神父の顔を覗き込んで百面相をしたり足の上で飛び跳ねたりしている。

(みんな、関心を惹こうとしてるのかな?)


「ネブリス、ここにおいで。みんないるよ」

 ローザリアが手を差し伸べると、不安そうに揺らいだ光の玉を光の精霊レムルが迎えに行った。近寄ったり離れたりする様子はまるでおしゃべりをしているみたいで⋯⋯。

(良かった、光と闇はやっぱり仲良しなんだ)


 光の玉に見えている精霊がそれぞれの姿を現して、いつでもお喋りできるようになるのは誰が一番早いのだろう。

 飛び跳ねている光の玉を捕まえようとしている訓練フェチのナザエル神父。

 光の玉に追いかけられて嬉しそうに逃げ回っているニールはスコルの特訓が待っている。

 興味深げに光の玉をツンツンと突いているナスタリア助祭は夜な夜な薬草の調合で火の加護を使っては話しかけているらしい。

 根が真面目なジャスパーは光の玉と顔を近づけたり離したりしているうちに睨めっこ状態に。


「はー、今度こそ終わったみてぇだな」

 ナザエル神父が大の字になって寝転び笑いはじめた。

「よっしゃー!!」



 洞窟から脱出し無事に山を降りたローザリア達は教会で待っていたエリサと合流し、そのまま王都へ帰る予定だとグレイソンに伝えた。


「一晩泊まってゆっくりしてったらどうだ?」

「奴が戻ってきたらマズイからな」

「奴は一体なんだったんだ? それに、お前らは⋯⋯」


「全部終わったらまた来る。そん時はアンタが床下に隠してる酒を全部飲み切ってやるから覚悟しとけよ」

「おまっ! 何でそれを⋯⋯ループか⋯⋯本当に時間を戻ったってことか」

 ニカっと笑ったナザエル神父とグレイソンが拳を合わせて頷いた。

「ああ、待ってるからな。必ず遊びに来い」



 笑顔でサムズアップするグレイソンの前でローザリア達の姿がぼやけて消えた。

「必ず会いに来いよ」

 グレイソンの呟きにローザリア達が笑顔で頷いたように見えた。




 ナザエル神父とニールが王都の様子を調べに行っている間、ローザリア達は森でのんびりと休憩することにした。

 エリサが淹れてくれたお茶を飲みながら膝の上のフィードをモフモフしていると、ナスタリア助祭が話しかけてきた。

「池に行ってみない?」



 フィードを抱えナスタリア助祭と並んで池に向かうと前回と同じように沢山の光の玉が池上を飛び回った。

 キラキラ光る池の上を気持ち良さそうに飛んではローザリア達の周りを回る。


「時々、『この景色見たことがある』って思ったり夢を見たりするんだ。そう言う時ってローザリアと一緒にいることが多くて。
あれは過去の記憶ってやつなのかな」

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