【完結】何度出会ってもやっぱり超絶腹黒聖職者

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160.スコルとニール

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 ノームがニールを指差してケラケラと笑ったがニールには見えていないようで、ドルフを捕まえたままキラキラ光る石碑を見つめていた。


「そろそろお暇します。全てを終わらせてここにまた来れるよう頑張りますね」

【これからはどこにいても会えるしお喋りもできる。今までより話しやすくなったもん】

【そだよー、これからは女子トークとかもしちゃえる~】



 立ち上がり頭を下げたローザリアの周りを飛んでいた光の玉が少しずつ消えていく。

【さあ、次の目的地に出発だね!】



 ローザリアが池の斜面を登り終わると水が緩く渦を巻き石碑を包み込んだ。

「ドルフさん、お騒がせしましたが無事に終わりました」


「あんた、何もんだ。池の底にあんなものがあるなんて⋯⋯しかも、水が割れた?」

「山の神様の願いなんで、内緒でお願いできますか?」

「⋯⋯あれを見せられて、信じんわけにゃいかんじゃろう。山の神さんは絶対じゃ」

「もしかして、ドルフさんはもう蛇に噛まれた後?」

 絶句するドルフを残してローザリア達は将来ジェイク達が産まれるはずの村ベリントンの石碑に転移した。




 ベリントンの森は至る所に精霊の小さな光の玉が飛んでいた。

 石碑の前には巨大なスコルが立ち塞がりグルグルと喉を鳴らしている。血走った目で牙を剥き太く長い尻尾で地面を叩きつけるスコルに向けてナザエル神父達が武器を構え睨み合った。

 エリサがローザリアを抱きしめる緊迫した状態は精霊が飛び交う静寂な光景に似合わない。


「待って! まだ大丈夫、それほど酷くないわ」

 ローザリアが安心させるようにエリサの腕を叩いて前に出た。

「スコル、浄化するね」

【任せて~】

【あたしも手伝うよー】

《 プルガーティオ 》



 杖から溢れた光が前回と同じようにスコルの身体に吸い込まれていく。一瞬苦しそうに身悶えしたスコルの身体から溢れた黒い靄がスコルを覆い尽くしたあと白く薄くなり消えていった。

 血走っていた赤い目は金色に戻り白い毛並みも輝いて見えた。機嫌良さそうにタシタシと尻尾で地面を叩くと精霊達が集まってきた。


【久しいの】

「スコル、お久しぶりです」

 前世ではスコルが身体に集めていた瘴気が多すぎてナザエル枢機卿の魔力を分けてもらわなければ浄化できず、その後も言葉を発することができなかった。

【いつやって来るのかと待っておった。ここを最後にするとはのぉ。詫びの代わりにそこの土産ですこーしばかり遊んでも良かろう?】

 ノームの話通りスコルは待ちくたびれて機嫌が悪いらしい。


「えーっと、言い忘れてたんだけど⋯⋯目の前の狼はスコルと言って、とっても良い神獣なんだけどすごく退屈してたと言うか⋯⋯だからニール、頑張って」

「は? 何を?」

 突然話を振られたニールがキョトンと首を傾げ、ナザエル枢機卿達は危険はないと判断し武器をしまい寛ぎはじめた。



「大丈夫、危険はないからね」

 ローザリアの言葉が終わる前にニールはスコルに首根っこを咥えられていた。

「うわあ、くわ、食われる~!! ナザエル、助けろ~!!」

 いつの間にかニールの手から武器が消え宙吊りのニールを光の玉が取り囲む。


【さて、我は少しばかり森を散策して参る。ここでゆるりとしておれ】

「ニールと一緒に森をお散歩してくるから待っててって」


「ニール、楽しんでこい!」

 ニカっと笑ったナザエル神父が恐怖に引き攣るニールにサムズアップすると『ぎゃあー』と言うニールの悲鳴と共にスコルが走り去った。



「ニールは風の加護だから」

 ローザリアの一言で万事理解したナスタリア助祭が胸を撫で下ろした。

「僕は火の加護で助かったよ。スコルはカッコよかったけど遊び相手はちょっと遠慮したいかな」


 敷物を敷いてお茶とお菓子でのんびりと森林浴を楽しむローザリア達。光の玉が興味津々でカップに近づいてきたりお菓子の上を飛び回ったりしている。

「ここの石碑を護っているのが神獣のスコルか」

「そう言えばこの森には沢山の薬草があるんですよ。なんでも季節を無視して育ってるらしくて」

 目を輝かせたナスタリア助祭がソワソワとしはじめた。

「その、後で見に行けるかな?」

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