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ループ

149.吐け、吐くんだ⋯⋯お嬢!

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「ローザリア、吐け!」

 剣を嬉しそうに眺めていたナザエル神父が突然ローザリアを指差した。

「は?」

 エリサがローザリアを庇うように抱きかかえナザエル神父を睨み付けた。

「ジンの事、前回何があったのか⋯⋯洗いざらい吐け! 俺達は精霊王から選べと言われたが詳しい説明はなかった。それはつまりローザリアに聞けと言う事だろうからな。だーかーら、吐け」

「俺も俺も、なんも知らないまんまじゃ決められないよ」

(ニールのフレンドリーな話し方は⋯⋯やっぱり違和感が)

「僕も出来れば知りたいかな」

「ローザリア様、無理はなさらなくて良いです。辛い記憶なら忘れた方が良いんです。神父様達は大人なんですから自力で調べていただきましょう。精霊王様は時間はあると仰いましたし、9歳の子供に無理強いする大人なんていません。ですよね!」

「おっ、おう⋯⋯」

 きっぱり言い切ったエリサは小柄な身体でしっかりと威圧を効かせている。


 ナザエル神父とニールが顔を見合わせてしょんぼりと落ち込んだ。

「すまん。国が崩壊なんて聞いて⋯⋯つい、焦っちまった」


「エリサ、ありがとう。でも、話した方が話が早いし。
話さない方がいい事もあるかもしれないし、知らない事もあるけどそれで良ければ」

「おう、話せる事だけで構わん。無理もしなくていいからな」

 知ろうとせずにいた大切な話がいくつもあったのに⋯⋯と、人任せにしていたことを後悔しながら話しはじめた。

「ジンの狙いは⋯⋯」


 ローザリアはできる限り正確に感情を交えず話した。精霊王に初めて会ったときに聞いた話やその後あった出来事。

 最後まで話し終えた時には陽は空高く登っていた。ローザリアの持っていた食材で昼食を作ったが、ローザリアの話を理解するのに忙しく皆あまり食が進まなかった。


「ローザリア様、大丈夫ですか?」

 お茶を飲みながらぼうっとしているとエリサが声をかけてきた。

「うん、大丈夫。エリサがいてくれるから元気いっぱい。今回記憶が戻った時ね、エリサがいてくれたのが何よりも嬉しかった」

「ローザリア様⋯⋯今度はずっと一緒にいさせて下さいね」

「⋯⋯」


 ローザリアはエリサと離れると決めていた。この国から逃げ出すには大切な人や思い出がありすぎたが、エリサだけは失いたくない。

 まだ産まれていないはずのジェイクやサラ、スコルの子供のフィード。支援で回った町や村の人たちの笑顔。


「この国って今はまだ雨は降ってる?」

「そうですね、雨の少ない年もありますけど何とかなってる感じです。でも、ローザリア様のお話を聞いてから初めて気付いたんですけど、昔に比べたら雨が少なくなってる気はします」

「公爵家からほとんど出た事なかったし、噂を聞いてる暇もなかったから⋯⋯いつ頃から本格的に水不足になるか分かんないの。
多分その時期が鍵だと思うのに」

 知らずに済ませた過去の自分が歯痒い。


「ウスベルの湖に長櫃が沈められたのがその時期だったの。調査隊が来た時期とかをナザエル枢機卿とグレイソンさんは話してたのに聞いておけば良かった」

「終わった事は気にしないでおきましょう」



「さて、どうすっかな」

「問題デカすぎですねぇ。敵が王弟妃となると手が出せないんじゃないですか?」

「聞いたからにはほっとくのもなあ。逃げ出すとか崩壊するのを指を咥えて見てるのは性に合わんし⋯⋯だが手に負える話とも思えんし」


「石碑があと2つって言ってたよね。どう言う意味?」

 ナスタリア助祭が聞いてきた。

「パルフェスの町とベリントン村の2カ所で石碑を見つけたんです。多分それは、地と風を司ってるんだと思います。
見つけてない石碑は火と水の2つ。
光の石碑は⋯⋯トーマック公爵家の地下にあるはず」

「この国に現在も生き残っている加護は5つで、それに関わる石碑と言うことか。
ジンが狙っているのは力のある上位精霊で、その殆どはさっきの5種類。つまり、石碑の修復は精霊の力かジンに対抗する力になる⋯⋯」

(おお、ナスタリア神父の片鱗が⋯⋯)

「トーマック公爵家は『水の公爵』だろ? なら見つかってないのは火と光なんじゃない?」

「かもしれません。そこはなんとなくそんな気がするだけなんで」



「どっちにしても、石碑を探しながらどうするか悩むのも一つの手だね」

「それもアリだな。悩んでばかりよりいいかもしれん」

「でもさ、どうやって探す?」

「法則性があるんじゃないかな。精霊王のイメージはアレだったけど、無作為に作るとは思えない」

「教会で地図を調べてみるとするか」

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