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一回目 (過去)
115.領地の孤児は誰の子?
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「あの、これはどう言う⋯⋯」
まだ怒りの冷めやらないナザエル枢機卿にネイサンが勇敢にも声をかけた。
ノールケルト子爵邸の玄関ドアを握りしめたままプルプルと震えるネイサン。
蹴り一発で扉を壊したナザエル枢機卿は大勢の子供を後ろに従えている。あの後、教会を『視察』と称し半壊させたナザエル枢機卿は怯える子供達を一列に並べさせ、呆然とする街の人達の目を無視したままノールケルト子爵邸へやって来た。
腕を組んで仁王立ちしたナザエル枢機卿は怯えるネイサンに言い放った。
「ハリーの子供達を連れてきてやった。さっさとアイツを呼んで来い!」
ナザエル枢機卿の考えでは領地の孤児は領主の責任に於いて養育されるべき者達。つまり、孤児院にいた彼らはハリーの子供ということになる。
「よっ、夜にこちらからお伺いすると言う話だったと」
「それとこれとは別だ。取り敢えずの食料は置いておいてやる。部屋を準備してちゃんと飯を食わせろよ」
ナザエル枢機卿の一言でローザリア達は途中で買い込んだ食料を玄関に並べた。
言いたいことを言いやりたいことをやり切ったナザエル枢機卿は子供達に屋敷に入るように言った。
「今日からここに住む。コイツはネイサン、しっかり手伝いをしなさい。それから『ご奉仕』は禁止だ。やれと言う奴がいたらぶん殴っていい。わかったか?」
「わかった~」
「きょーかい、こわれちゃったもんね」
「おにいちゃん、にもつはこぶ?」
ワラワラと屋敷に駆け込む子供達と唖然とするネイサンを残して野営地へ帰ることにした。
夜の帳が下り夕食が終わった頃頭から湯気を出したハリーと疲れ果てたネイサンが野営地にやってきた。
「おっさん、どう言うことだよ!? ガキをいっぱい連れてきて勝手に置いてきやがって!」
「領主は領民に対して責任を持つ義務がある。あの子供達がお前の領地の孤児だと言うことはお前の子供ってことだ」
ある程度怒りの収まったナザエル枢機卿は呑気にエールを飲みながらハリー達に説明した。
「お前らがのんびり領主館で物を売り払って遊び惚けてた間、子供達が何をさせられてたか聞いてみたか?」
「⋯⋯別に遊び呆けてなんて」
「俺の知ってる限りでも、お前らは真面な服を着ていたし腹を減らして死にかけてもいなかった。違うか?」
「違わねえけど、でも⋯⋯」
「思ったように豪勢な暮らしが出来なかったから不貞腐れてましたってあの子供たちに言ってみろよ。『ご奉仕』したらご飯が貰えるって教えてくれるぜ」
「⋯⋯爵位も領地もいらねえし。だから、ガキなんか押し付けられても」
「そうか、ならお前の責任は半年分にしてやるよ。半年分の子供達の生活費はなんとしてでも稼いで来い。お前、半年は領主だったんだろ? いい歳して責任逃ればっかしてんじゃねえよ」
「いい歳って、俺まだ19だぜ?」
「19ならとっくに成人してるじゃねえか」
ハリーが地面に座り込み頭を垂れて落ち込んでいる。
「俺さぁ字も書けねえし計算もできねえし。仕事なんてできるわけねえじゃん」
「平民学校にいかなかったのはなぜだ? 平民学校は金はいらんだろ?」
「学校なんてつまんねぇし」
「で、これからどうするんだ?」
「仕事世話してくれるんだろ? アンタが言ったんじゃん」
「やる気がなきゃすぐにクビになるだろうがな。それともネイサンに食わせてもらうか? 見たところネイサンは仕事が続きそうだが?」
「そんなことしねえよ、俺だってやりたいことを見つけたら何とかなると」
「やりたいことを見つけるんじゃねえ、やれることを見つけるんだよ」
「やれる事?」
「仕事なんてそんなもんだ」
「アンタらは気楽でいいよな」
「そう見えるか?」
「だってさあ、いっぱい人引き連れて偉そうにして美味い飯食ってんだろ? そんなん勝ち組じゃん」
「なら勝ち組の尻馬に乗るか?」
「?」
「俺の部下にしてやるって言ってる。あそこで呑気に飯食ってる奴らと一緒って事だな」
「やる! 肉食いてえ、んでかっけぇ服着て剣差して街を歩くんだ。やる!」
「ハリー、無理だって。別の方法考えようよ」
「はぁ、せっかく美味しい仕事見つかったのにケチつけんなよ! 剣って絶対似合うしアイツらが着てる服だって俺の方が似合うって」
「友達が止めてるのに、本当にいいのか?」
「ああ、ネイサンは臆病なんだよ。新しい事をはじめるのは勇気がいるって俺が教えてやるよ!」
「ネイサン、お前はどうする?」
「⋯⋯俺もやります。コイツは馬鹿だけど腐れ縁なんで」
「よし、なら魔法契約だ」
まだ怒りの冷めやらないナザエル枢機卿にネイサンが勇敢にも声をかけた。
ノールケルト子爵邸の玄関ドアを握りしめたままプルプルと震えるネイサン。
蹴り一発で扉を壊したナザエル枢機卿は大勢の子供を後ろに従えている。あの後、教会を『視察』と称し半壊させたナザエル枢機卿は怯える子供達を一列に並べさせ、呆然とする街の人達の目を無視したままノールケルト子爵邸へやって来た。
腕を組んで仁王立ちしたナザエル枢機卿は怯えるネイサンに言い放った。
「ハリーの子供達を連れてきてやった。さっさとアイツを呼んで来い!」
ナザエル枢機卿の考えでは領地の孤児は領主の責任に於いて養育されるべき者達。つまり、孤児院にいた彼らはハリーの子供ということになる。
「よっ、夜にこちらからお伺いすると言う話だったと」
「それとこれとは別だ。取り敢えずの食料は置いておいてやる。部屋を準備してちゃんと飯を食わせろよ」
ナザエル枢機卿の一言でローザリア達は途中で買い込んだ食料を玄関に並べた。
言いたいことを言いやりたいことをやり切ったナザエル枢機卿は子供達に屋敷に入るように言った。
「今日からここに住む。コイツはネイサン、しっかり手伝いをしなさい。それから『ご奉仕』は禁止だ。やれと言う奴がいたらぶん殴っていい。わかったか?」
「わかった~」
「きょーかい、こわれちゃったもんね」
「おにいちゃん、にもつはこぶ?」
ワラワラと屋敷に駆け込む子供達と唖然とするネイサンを残して野営地へ帰ることにした。
夜の帳が下り夕食が終わった頃頭から湯気を出したハリーと疲れ果てたネイサンが野営地にやってきた。
「おっさん、どう言うことだよ!? ガキをいっぱい連れてきて勝手に置いてきやがって!」
「領主は領民に対して責任を持つ義務がある。あの子供達がお前の領地の孤児だと言うことはお前の子供ってことだ」
ある程度怒りの収まったナザエル枢機卿は呑気にエールを飲みながらハリー達に説明した。
「お前らがのんびり領主館で物を売り払って遊び惚けてた間、子供達が何をさせられてたか聞いてみたか?」
「⋯⋯別に遊び呆けてなんて」
「俺の知ってる限りでも、お前らは真面な服を着ていたし腹を減らして死にかけてもいなかった。違うか?」
「違わねえけど、でも⋯⋯」
「思ったように豪勢な暮らしが出来なかったから不貞腐れてましたってあの子供たちに言ってみろよ。『ご奉仕』したらご飯が貰えるって教えてくれるぜ」
「⋯⋯爵位も領地もいらねえし。だから、ガキなんか押し付けられても」
「そうか、ならお前の責任は半年分にしてやるよ。半年分の子供達の生活費はなんとしてでも稼いで来い。お前、半年は領主だったんだろ? いい歳して責任逃ればっかしてんじゃねえよ」
「いい歳って、俺まだ19だぜ?」
「19ならとっくに成人してるじゃねえか」
ハリーが地面に座り込み頭を垂れて落ち込んでいる。
「俺さぁ字も書けねえし計算もできねえし。仕事なんてできるわけねえじゃん」
「平民学校にいかなかったのはなぜだ? 平民学校は金はいらんだろ?」
「学校なんてつまんねぇし」
「で、これからどうするんだ?」
「仕事世話してくれるんだろ? アンタが言ったんじゃん」
「やる気がなきゃすぐにクビになるだろうがな。それともネイサンに食わせてもらうか? 見たところネイサンは仕事が続きそうだが?」
「そんなことしねえよ、俺だってやりたいことを見つけたら何とかなると」
「やりたいことを見つけるんじゃねえ、やれることを見つけるんだよ」
「やれる事?」
「仕事なんてそんなもんだ」
「アンタらは気楽でいいよな」
「そう見えるか?」
「だってさあ、いっぱい人引き連れて偉そうにして美味い飯食ってんだろ? そんなん勝ち組じゃん」
「なら勝ち組の尻馬に乗るか?」
「?」
「俺の部下にしてやるって言ってる。あそこで呑気に飯食ってる奴らと一緒って事だな」
「やる! 肉食いてえ、んでかっけぇ服着て剣差して街を歩くんだ。やる!」
「ハリー、無理だって。別の方法考えようよ」
「はぁ、せっかく美味しい仕事見つかったのにケチつけんなよ! 剣って絶対似合うしアイツらが着てる服だって俺の方が似合うって」
「友達が止めてるのに、本当にいいのか?」
「ああ、ネイサンは臆病なんだよ。新しい事をはじめるのは勇気がいるって俺が教えてやるよ!」
「ネイサン、お前はどうする?」
「⋯⋯俺もやります。コイツは馬鹿だけど腐れ縁なんで」
「よし、なら魔法契約だ」
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