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一回目 (過去)
81.少し成長したら
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「それに私の力なんかじゃないんです。精霊が水を出してくれてて、私が何かしてるわけじゃないんです。
お礼も感謝も精霊が受け取らなきゃいけないんです」
「聖女様の言う通りだ。精霊師が精霊に力を貸してほしいって願って魔法が実現するって教会で習ったのに忘れとったわい。
だから、聖女様と精霊の両方にお礼を言わなくちゃな」
小さな桶を抱えていた老人が隣の男の背中を叩いた。
「私は⋯⋯」
「ローザリア様が心から願ったからこそ精霊が叶えてくれたんです。自信を持って感謝されて下さい。でないと、精霊達が悲しみますよ」
【そだよー】
【ローザリアのお願いだから聞いたの】
「⋯⋯はい、ありがとうございます。精霊も教えてくれた皆さんもありがとうございました」
泣き笑いで頭を下げるローザリアの周りにキラキラと光が輝いた。
「きれー!!」
「おねーちゃんのまわりがピカピカしてるー」
呆然とする大人達の前でローザリアの周りを沢山の精霊がふわふわクルクルと飛んでいる。
ローザリアには光の玉の間に羽根で飛ぶ子や小さな火を吹くトカゲや渦巻きの中でまわる子供が見えていた。肩の上にはまんまるなお腹の男の子。
(あっ、増えてる。あなたは誰?)
【空間の精霊、ラノスだよ。アイテムボックスおっきくしとくね~】
「大切な事を理解できたから⋯⋯みんなからのお祝いですね」
(空間の精霊が具現化できたと話したらナスタリア神父は驚くかな? でも、なんで今空間の精霊が?)
「最高のお祝いですね」
空を見上げていたナスタリア神父がローザリアに向けて微笑んだ。
同行している聖騎士や精霊師達の中でも光の玉の乱舞を初めて見た者達は唖然として固まった。
「すっすっすっ、すげー!!」
「「「うおー!」」」
前回馬車の周りを飛び回るのを見た者達は得意げな顔をして、興奮している仲間にサムズアップしていた。
今回のメンバーの中にもローザリアの力に対して不安を抱いている者もいた。王家や公爵家と繋がっている者はいないはずだが、心の内まではわからない。
絶対の信頼をおけるニールやテストに合格したジャスパーやシスター・タニアのような者ばかりではない。
今夜の奇跡を目にした彼等の心から不安や猜疑心がなくなっていればいいと思う。
これから向かう町や村でもパルフェスと同じように猜疑心に満ちた目で迎えられるだろう。
長い時間共に行動する者達がローザリアの力が本物だと信じられれば旅はぐんと楽になるはず。
精霊達の協力で最高のはじまりを迎えられた。
「おーい、肉が硬くなるぞー」
ナザエル枢機卿の大声で光の玉が空高く舞い上がり霧散した。
「あー、きえちゃったー」
「精霊も夜は寝るのかもしれんぞ?」
意外に子供慣れしているナザエル枢機卿が地面に座り込んで子供達の口の周りを拭いていた。
「ほんと? せいれーさんってねるの?」
「さあな、いつか精霊と話ができたら聞いて教えてくれるか?」
「うん、せいれいさんとおはなしできるよーにがんばる」
「ならまずは、しっかり食ってさっさと寝る!」
「はーい」
バタバタと走って戻ってくる子供達に『おじちゃん、ありがとー』と言われがっくりと肩を落としたナザエル枢機卿が、ブフッと吹き出したニールと取っ組み合いをはじめた。
「本当に、あの人が一番子供ですね」
必死に謝っていた町長や町の人が帰って行き、広場では聖騎士や精霊師達が片付けをしたり寝る支度をしたりしている。普段なら当たり前に聞こえているはずの虫の音がない事を寂しく思いながら、ローザリアとナスタリア神父は小さな焚き火を囲んでいた。
しょっぱいエショデを乗せた皿を前に甘いショコラトルのカップを抱えてニマニマと笑うローザリアを見たナスタリア神父は顔を覗き込んできた。
「ん?」
「はじまりはやっぱりこれだなって」
教会で初めて真面にナスタリア神父と話した時、準備してくれたのも甘いショコラトルだった。
初めて飲む甘い飲み物に感動して、エショデとの組み合わせなら何杯でも飲めそうだと思ったのを覚えている。
「あの日が私のはじまりで、この二つは記念です」
「では、もう一つ記念の品を増やしていただけますか?」
首を傾げたローザリアの前でナスタリア神父が立ち上がった。
「少しお待ちいただけますか? 差し入れを持ってきたんです」
ナスタリア神父が返事を待たずにテントにかけていく。
(あの時のお菓子かな? 毎食毎に誰かがお菓子を差し入れてくれて癖になったらどうしよう)
細長い箱を抱えて帰ってきたナスタリア神父は少し緊張しているように見えた。
お礼も感謝も精霊が受け取らなきゃいけないんです」
「聖女様の言う通りだ。精霊師が精霊に力を貸してほしいって願って魔法が実現するって教会で習ったのに忘れとったわい。
だから、聖女様と精霊の両方にお礼を言わなくちゃな」
小さな桶を抱えていた老人が隣の男の背中を叩いた。
「私は⋯⋯」
「ローザリア様が心から願ったからこそ精霊が叶えてくれたんです。自信を持って感謝されて下さい。でないと、精霊達が悲しみますよ」
【そだよー】
【ローザリアのお願いだから聞いたの】
「⋯⋯はい、ありがとうございます。精霊も教えてくれた皆さんもありがとうございました」
泣き笑いで頭を下げるローザリアの周りにキラキラと光が輝いた。
「きれー!!」
「おねーちゃんのまわりがピカピカしてるー」
呆然とする大人達の前でローザリアの周りを沢山の精霊がふわふわクルクルと飛んでいる。
ローザリアには光の玉の間に羽根で飛ぶ子や小さな火を吹くトカゲや渦巻きの中でまわる子供が見えていた。肩の上にはまんまるなお腹の男の子。
(あっ、増えてる。あなたは誰?)
【空間の精霊、ラノスだよ。アイテムボックスおっきくしとくね~】
「大切な事を理解できたから⋯⋯みんなからのお祝いですね」
(空間の精霊が具現化できたと話したらナスタリア神父は驚くかな? でも、なんで今空間の精霊が?)
「最高のお祝いですね」
空を見上げていたナスタリア神父がローザリアに向けて微笑んだ。
同行している聖騎士や精霊師達の中でも光の玉の乱舞を初めて見た者達は唖然として固まった。
「すっすっすっ、すげー!!」
「「「うおー!」」」
前回馬車の周りを飛び回るのを見た者達は得意げな顔をして、興奮している仲間にサムズアップしていた。
今回のメンバーの中にもローザリアの力に対して不安を抱いている者もいた。王家や公爵家と繋がっている者はいないはずだが、心の内まではわからない。
絶対の信頼をおけるニールやテストに合格したジャスパーやシスター・タニアのような者ばかりではない。
今夜の奇跡を目にした彼等の心から不安や猜疑心がなくなっていればいいと思う。
これから向かう町や村でもパルフェスと同じように猜疑心に満ちた目で迎えられるだろう。
長い時間共に行動する者達がローザリアの力が本物だと信じられれば旅はぐんと楽になるはず。
精霊達の協力で最高のはじまりを迎えられた。
「おーい、肉が硬くなるぞー」
ナザエル枢機卿の大声で光の玉が空高く舞い上がり霧散した。
「あー、きえちゃったー」
「精霊も夜は寝るのかもしれんぞ?」
意外に子供慣れしているナザエル枢機卿が地面に座り込んで子供達の口の周りを拭いていた。
「ほんと? せいれーさんってねるの?」
「さあな、いつか精霊と話ができたら聞いて教えてくれるか?」
「うん、せいれいさんとおはなしできるよーにがんばる」
「ならまずは、しっかり食ってさっさと寝る!」
「はーい」
バタバタと走って戻ってくる子供達に『おじちゃん、ありがとー』と言われがっくりと肩を落としたナザエル枢機卿が、ブフッと吹き出したニールと取っ組み合いをはじめた。
「本当に、あの人が一番子供ですね」
必死に謝っていた町長や町の人が帰って行き、広場では聖騎士や精霊師達が片付けをしたり寝る支度をしたりしている。普段なら当たり前に聞こえているはずの虫の音がない事を寂しく思いながら、ローザリアとナスタリア神父は小さな焚き火を囲んでいた。
しょっぱいエショデを乗せた皿を前に甘いショコラトルのカップを抱えてニマニマと笑うローザリアを見たナスタリア神父は顔を覗き込んできた。
「ん?」
「はじまりはやっぱりこれだなって」
教会で初めて真面にナスタリア神父と話した時、準備してくれたのも甘いショコラトルだった。
初めて飲む甘い飲み物に感動して、エショデとの組み合わせなら何杯でも飲めそうだと思ったのを覚えている。
「あの日が私のはじまりで、この二つは記念です」
「では、もう一つ記念の品を増やしていただけますか?」
首を傾げたローザリアの前でナスタリア神父が立ち上がった。
「少しお待ちいただけますか? 差し入れを持ってきたんです」
ナスタリア神父が返事を待たずにテントにかけていく。
(あの時のお菓子かな? 毎食毎に誰かがお菓子を差し入れてくれて癖になったらどうしよう)
細長い箱を抱えて帰ってきたナスタリア神父は少し緊張しているように見えた。
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