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一回目 (過去)
67.最も知りたいこと
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「回復魔法が使えると聞いておる。それは真か?」
国王が一番知りたかった事なのだろう、玉座から身を乗り出すようにして聞いてきた。
「いずれ使えるようになると言う話でございます」
「ローザリア様は水の加護ではないと言うことですかな?」
「強い水の加護と膨大な魔力が必要ですがローザリア様ならば可能だと断言致します」
「そのような事など初めて聞いたが」
「王宮の資料で確認致しましたが過去にはごく稀にですがおられたそうです。但し数百年前の方々ばかりでした」
疑いの目を向けるギャンター内務大臣に宰相が答えた。
「それが可能なほどローザリアの加護は強いと申すのだな?」
「王宮監視人の方々とランブリー団長はトーマック公爵と共にローザリア様の聖布をご覧になられましたが、非常に大きな紋章と言えるでしょう」
「ローザリアよ。オーレリアの事、其方はどう思うておる」
「私の願いが叶ったのであっても他の方の力で水不足が解消したのであってもどちらでも良いと思っております。
ただ、私に出来ることがあるのであれば最善を尽くす所存でございます」
「ローザリアとリリアーナ、2人に申し付ける。旱魃地に向かい早急に水不足の解消を。その結果でどちらに力があるのか判明するであろう」
「陛下の決定では従わざるを得ませんわ。
では、それまで王太子殿下の婚約者決定は見送りですわね」
国王の姪だという気安さからか謁見の間であっても普段通りのカサンドラが肩をすくめた。
「ローザリアに加護があった時点で王太子の婚約者と決まっておる。余はそのように申したはず」
「でもそれは、ローザリアが力を使ったと思われたからです。私が精霊を使役したのなら王太子殿下の婚約者は私のはずです。リチャード様もそれを望んでおいでです!」
「ならば実力でローザリアを捩じ伏せよ。よいか、其方がオーレリアで皆を納得させておればこのような事態にはなっておらぬのだ。
それが出来ぬうちに余に異を唱えるなど不敬であろう。
例え王弟孫であっても許されぬと心得よ」
国王の冷ややかな目にリリアーナが唇を噛み俯いた。
「どうかご容赦を。リリアーナは少し先走ってしまいましたが、おのずと結果は明らかになりますわ」
カサンドラが勝ち誇ったように顎を上げて微笑んだ。
謁見の後、別室に案内されて今後の予定を話し合うことになった。
「ローザリア様とリリアーナ様は分かれて別の領地に向かって頂きます。各地から嘆願書が届いてはおりますがご存じのように我が国全土が未曾有の渇水状態になっており、我々で優先順位をつけてあります」
ギャンター内務大臣がリストを手に話を進めていく。
「我が公爵家にも多くの方から救援要請がきておるのでな、その方々を蔑ろにすることはできかねる。まさか貴族同士の付き合いを無下にせよとは仰らんでしょうな」
かなりの数の貴族から既に大金を受け取っているウォレスは彼等を優先しなくてはならない。
「それは致し方ありません。ですが条件をお聞きになり考慮して頂きたいと思います」
その条件とは⋯⋯毎年の納税額が多い領地が最優先とされ、大規模に農業や酪農を主としている領地で特に王都への影響が大きい領地も優先されるというものだった。
(小規模の領地や下位貴族は無条件で後回しということ?)
「勿論ですとも。我が国への貢献度が高い方が優先されるのは当然ですからな」
ウォレスがリリアーナを行かせる予定だったのも王家の狙いと同じ、金払いの良い裕福な貴族の領地ばかり。
「ではローザリア様はリリアーナ様が巡回されるルートが決まり次第その残りの領地を回ることにいたしましょう。
ローザリア様、それで宜しいでしょうか?」
「ええ、かまいません。それであれば小規模の領地や僻地にも行くことが出来そうです」
「そうね、ローザリアには取るに足らない領地や僻地がお似合いだわ。ねえ、ナザエル枢機卿とナスタリア神父様は勿論私と一緒に行ってくださるのでしょう?」
(ここ数日の様子や今までの話の流れて何故そうなる?)
国王が一番知りたかった事なのだろう、玉座から身を乗り出すようにして聞いてきた。
「いずれ使えるようになると言う話でございます」
「ローザリア様は水の加護ではないと言うことですかな?」
「強い水の加護と膨大な魔力が必要ですがローザリア様ならば可能だと断言致します」
「そのような事など初めて聞いたが」
「王宮の資料で確認致しましたが過去にはごく稀にですがおられたそうです。但し数百年前の方々ばかりでした」
疑いの目を向けるギャンター内務大臣に宰相が答えた。
「それが可能なほどローザリアの加護は強いと申すのだな?」
「王宮監視人の方々とランブリー団長はトーマック公爵と共にローザリア様の聖布をご覧になられましたが、非常に大きな紋章と言えるでしょう」
「ローザリアよ。オーレリアの事、其方はどう思うておる」
「私の願いが叶ったのであっても他の方の力で水不足が解消したのであってもどちらでも良いと思っております。
ただ、私に出来ることがあるのであれば最善を尽くす所存でございます」
「ローザリアとリリアーナ、2人に申し付ける。旱魃地に向かい早急に水不足の解消を。その結果でどちらに力があるのか判明するであろう」
「陛下の決定では従わざるを得ませんわ。
では、それまで王太子殿下の婚約者決定は見送りですわね」
国王の姪だという気安さからか謁見の間であっても普段通りのカサンドラが肩をすくめた。
「ローザリアに加護があった時点で王太子の婚約者と決まっておる。余はそのように申したはず」
「でもそれは、ローザリアが力を使ったと思われたからです。私が精霊を使役したのなら王太子殿下の婚約者は私のはずです。リチャード様もそれを望んでおいでです!」
「ならば実力でローザリアを捩じ伏せよ。よいか、其方がオーレリアで皆を納得させておればこのような事態にはなっておらぬのだ。
それが出来ぬうちに余に異を唱えるなど不敬であろう。
例え王弟孫であっても許されぬと心得よ」
国王の冷ややかな目にリリアーナが唇を噛み俯いた。
「どうかご容赦を。リリアーナは少し先走ってしまいましたが、おのずと結果は明らかになりますわ」
カサンドラが勝ち誇ったように顎を上げて微笑んだ。
謁見の後、別室に案内されて今後の予定を話し合うことになった。
「ローザリア様とリリアーナ様は分かれて別の領地に向かって頂きます。各地から嘆願書が届いてはおりますがご存じのように我が国全土が未曾有の渇水状態になっており、我々で優先順位をつけてあります」
ギャンター内務大臣がリストを手に話を進めていく。
「我が公爵家にも多くの方から救援要請がきておるのでな、その方々を蔑ろにすることはできかねる。まさか貴族同士の付き合いを無下にせよとは仰らんでしょうな」
かなりの数の貴族から既に大金を受け取っているウォレスは彼等を優先しなくてはならない。
「それは致し方ありません。ですが条件をお聞きになり考慮して頂きたいと思います」
その条件とは⋯⋯毎年の納税額が多い領地が最優先とされ、大規模に農業や酪農を主としている領地で特に王都への影響が大きい領地も優先されるというものだった。
(小規模の領地や下位貴族は無条件で後回しということ?)
「勿論ですとも。我が国への貢献度が高い方が優先されるのは当然ですからな」
ウォレスがリリアーナを行かせる予定だったのも王家の狙いと同じ、金払いの良い裕福な貴族の領地ばかり。
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「ええ、かまいません。それであれば小規模の領地や僻地にも行くことが出来そうです」
「そうね、ローザリアには取るに足らない領地や僻地がお似合いだわ。ねえ、ナザエル枢機卿とナスタリア神父様は勿論私と一緒に行ってくださるのでしょう?」
(ここ数日の様子や今までの話の流れて何故そうなる?)
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