上 下
67 / 191
一回目 (過去)

67.最も知りたいこと

しおりを挟む
「回復魔法が使えると聞いておる。それは真か?」

 国王が一番知りたかった事なのだろう、玉座から身を乗り出すようにして聞いてきた。

「いずれ使えるようになると言う話でございます」


「ローザリア様は水の加護ではないと言うことですかな?」

「強い水の加護と膨大な魔力が必要ですがローザリア様ならば可能だと断言致します」



「そのような事など初めて聞いたが」

「王宮の資料で確認致しましたが過去にはごく稀にですがおられたそうです。但し数百年前の方々ばかりでした」

 疑いの目を向けるギャンター内務大臣に宰相が答えた。

「それが可能なほどローザリアの加護は強いと申すのだな?」

「王宮監視人の方々とランブリー団長はトーマック公爵と共にローザリア様の聖布をご覧になられましたが、非常に大きな紋章と言えるでしょう」


「ローザリアよ。オーレリアの事、其方はどう思うておる」

「私の願いが叶ったのであっても他の方の力で水不足が解消したのであってもどちらでも良いと思っております。
ただ、私に出来ることがあるのであれば最善を尽くす所存でございます」



「ローザリアとリリアーナ、2人に申し付ける。旱魃地に向かい早急に水不足の解消を。その結果でどちらに力があるのか判明するであろう」

「陛下の決定では従わざるを得ませんわ。
では、それまで王太子殿下の婚約者決定は見送りですわね」

 国王の姪だという気安さからか謁見の間であっても普段通りのカサンドラが肩をすくめた。

「ローザリアに加護があった時点で王太子の婚約者と決まっておる。余はそのように申したはず」

「でもそれは、ローザリアが力を使ったと思われたからです。私が精霊を使役したのなら王太子殿下の婚約者は私のはずです。リチャード王太子様もそれを望んでおいでです!」

「ならば実力でローザリアを捩じ伏せよ。よいか、其方がオーレリアで皆を納得させておればこのような事態にはなっておらぬのだ。
それが出来ぬうちに余に異を唱えるなど不敬であろう。
例え王弟孫であっても許されぬと心得よ」

 国王の冷ややかな目にリリアーナが唇を噛み俯いた。

「どうかご容赦を。リリアーナは少し先走ってしまいましたが、おのずと結果は明らかになりますわ」

 カサンドラが勝ち誇ったように顎を上げて微笑んだ。




 謁見の後、別室に案内されて今後の予定を話し合うことになった。

「ローザリア様とリリアーナ様は分かれて別の領地に向かって頂きます。各地から嘆願書が届いてはおりますがご存じのように我が国全土が未曾有の渇水状態になっており、我々で優先順位をつけてあります」

 ギャンター内務大臣がリストを手に話を進めていく。

「我が公爵家にも多くの方から救援要請がきておるのでな、その方々を蔑ろにすることはできかねる。まさか貴族同士の付き合いを無下にせよとは仰らんでしょうな」

 かなりの数の貴族から既に大金を受け取っているウォレスは彼等を優先しなくてはならない。

「それは致し方ありません。ですが条件をお聞きになり考慮して頂きたいと思います」

 その条件とは⋯⋯毎年の納税額が多い領地が最優先とされ、大規模に農業や酪農を主としている領地で特に王都への影響が大きい領地も優先されるというものだった。

(小規模の領地や下位貴族は無条件で後回しということ?)
 
「勿論ですとも。我が国への貢献度が高い方が優先されるのは当然ですからな」

 ウォレスがリリアーナを行かせる予定だったのも王家の狙いと同じ、金払いの良い裕福な貴族の領地ばかり。


「ではローザリア様はリリアーナ様が巡回されるルートが決まり次第その残りの領地を回ることにいたしましょう。
ローザリア様、それで宜しいでしょうか?」

「ええ、かまいません。それであれば小規模の領地や僻地にも行くことが出来そうです」


「そうね、ローザリアには取るに足らない領地や僻地がお似合いだわ。ねえ、ナザエル枢機卿とナスタリア神父様は勿論私と一緒に行ってくださるのでしょう?」



(ここ数日の様子や今までの話の流れて何故そうなる?)

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

処理中です...