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一回目 (過去)
66.ギャンター内務大臣
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「オーレリアではその場におりました者全員がローザリアの成した偉業だと信じておりました故、陛下を謀るつもりなど毛頭ございませんでした。
しかしながらローザリアはその時、加護を戴いておらず学園にも通っておりませんでした。その為⋯⋯あれは見間違いだったのではないかと言う噂が流れたのでございます」
「その後でローザリア様は水の加護を戴いたのでしたな」
「はい、それなりに強い加護でしたのでどちらの娘の力で成し遂げたのか分からぬという話になりましてございます」
「あれから既に1ヶ月以上経っておりますが、未だどちらの力がお分かりにならないと仰ると?」
「ローザリアの加護が判明したのはほんの数日前のことですの。
どちらにせよ、加護について学んだこともなく精霊を使役する方法も知らぬ者が出来る偉業ではありませんわ。
皆様もそう思われるのではありませんこと?」
「お姉様はいつも勉強を嫌がっておられましたが、私は家庭教師や学園で多くの勉強をしてまいりました。精霊の使役方法の練習はとても大変でしたが、7歳から毎日私は続けてきました」
「王宮精霊師団団長ランブリー、その方の見解を申してみよ」
「は。確かにカサンドラ様やリリアーナ様の仰る通りだと私も考えております。私を含め精霊師達は長い時間研鑽を積み、精霊を使役致します。なんの知識もなく精霊魔法を思うように行使するのは不可能であると断言致します。
リリアーナ様は国内でも五指に数えられる程の強い加護をお持ちであり、トーマック公爵領でもそのお力を発揮されたと聞き及んでおります。
しかしながらあの時、ローザリア様が精霊達を使役したように見えたのも事実でございます」
「教会の意見はどうじゃ、忌憚なく申してみよ」
「精霊教会神父ナスタリアと申します。
先ず初めに申し上げたいのは、精霊は使役する存在ではありません。精霊王より加護を戴いた者は精霊のお力をお借りし、精霊の御助力によって魔法を行使するのです。
使役の方法ではなく精霊のお力添えをいただく方法を学び、最適な魔法を早く正確に使えるよう研鑽を重ねるのです」
「ナスタリア神父殿は何を仰りたいのですかな? 今はどちらの令嬢が力を発揮されたのかを審議している最中ですぞ!」
嘆願書に埋もれて仕事が回らなくなっているギャンター内務大臣は、突然精霊について講義をはじめたナスタリア神父の意図がわからず苛立ちを隠しきれなくなった。
「基本となるべき前提が違っていると申し上げております。オーレリアでのローザリア様は精霊や加護について何もご存じありませんでしたがオーレリアの地を旱魃から守りたいと純粋に祈り、精霊達がその気持ちに応え力を貸してくださったのでしょう。
方法が分からないが故に精霊任せにしたと言えるかもしれません。その結果領地にある全ての溜池をたった一度で水で満たすなどと言う空前絶後の結果となったのでしょう。
行使される魔法は術者の力量もさることながら、精霊が術者の願いを叶えたいと思えば行動を起こします。
加護を戴いたばかりの純粋な子供が水や火を出したいと単純に願い暴走する事がありますが、彼等は方法など何も知らないまま精霊の力を使えた良い例です」
ナスタリア神父の発言はとても理に適っており、それまでリリアーナ寄りだった貴族の一部が頷いている。
「ローザリア様が教会で加護の使い方を学んでおられると言うのはつまり⋯⋯」
「オーレリアでは結果的に良い結果となりましたが力の使い方を学ばなければ必ず同じような結果になるとは言い切れません。
ローザリア様の加護は稀に見る強さですので教会にて学んで頂いております」
「では、教会でなくとも学園に通われれば良いではないか!?」
王立精霊学園の学園長が人を押し退けて前に出てきた。
「多くの学園生を抱えておられる学園でローザリア様だけに個別授業を行うのは非常に難しいのではありませんか? 今回の旱魃に一日も早く対応する為に学園生達も頑張っておられる。彼等の指導も急務な上に全く知識のなかったローザリア様の個別指導をされると言うのは時間・人員的に厳しすぎるでしょう」
「回復魔法が使えると聞いておる。それは真か?」
しかしながらローザリアはその時、加護を戴いておらず学園にも通っておりませんでした。その為⋯⋯あれは見間違いだったのではないかと言う噂が流れたのでございます」
「その後でローザリア様は水の加護を戴いたのでしたな」
「はい、それなりに強い加護でしたのでどちらの娘の力で成し遂げたのか分からぬという話になりましてございます」
「あれから既に1ヶ月以上経っておりますが、未だどちらの力がお分かりにならないと仰ると?」
「ローザリアの加護が判明したのはほんの数日前のことですの。
どちらにせよ、加護について学んだこともなく精霊を使役する方法も知らぬ者が出来る偉業ではありませんわ。
皆様もそう思われるのではありませんこと?」
「お姉様はいつも勉強を嫌がっておられましたが、私は家庭教師や学園で多くの勉強をしてまいりました。精霊の使役方法の練習はとても大変でしたが、7歳から毎日私は続けてきました」
「王宮精霊師団団長ランブリー、その方の見解を申してみよ」
「は。確かにカサンドラ様やリリアーナ様の仰る通りだと私も考えております。私を含め精霊師達は長い時間研鑽を積み、精霊を使役致します。なんの知識もなく精霊魔法を思うように行使するのは不可能であると断言致します。
リリアーナ様は国内でも五指に数えられる程の強い加護をお持ちであり、トーマック公爵領でもそのお力を発揮されたと聞き及んでおります。
しかしながらあの時、ローザリア様が精霊達を使役したように見えたのも事実でございます」
「教会の意見はどうじゃ、忌憚なく申してみよ」
「精霊教会神父ナスタリアと申します。
先ず初めに申し上げたいのは、精霊は使役する存在ではありません。精霊王より加護を戴いた者は精霊のお力をお借りし、精霊の御助力によって魔法を行使するのです。
使役の方法ではなく精霊のお力添えをいただく方法を学び、最適な魔法を早く正確に使えるよう研鑽を重ねるのです」
「ナスタリア神父殿は何を仰りたいのですかな? 今はどちらの令嬢が力を発揮されたのかを審議している最中ですぞ!」
嘆願書に埋もれて仕事が回らなくなっているギャンター内務大臣は、突然精霊について講義をはじめたナスタリア神父の意図がわからず苛立ちを隠しきれなくなった。
「基本となるべき前提が違っていると申し上げております。オーレリアでのローザリア様は精霊や加護について何もご存じありませんでしたがオーレリアの地を旱魃から守りたいと純粋に祈り、精霊達がその気持ちに応え力を貸してくださったのでしょう。
方法が分からないが故に精霊任せにしたと言えるかもしれません。その結果領地にある全ての溜池をたった一度で水で満たすなどと言う空前絶後の結果となったのでしょう。
行使される魔法は術者の力量もさることながら、精霊が術者の願いを叶えたいと思えば行動を起こします。
加護を戴いたばかりの純粋な子供が水や火を出したいと単純に願い暴走する事がありますが、彼等は方法など何も知らないまま精霊の力を使えた良い例です」
ナスタリア神父の発言はとても理に適っており、それまでリリアーナ寄りだった貴族の一部が頷いている。
「ローザリア様が教会で加護の使い方を学んでおられると言うのはつまり⋯⋯」
「オーレリアでは結果的に良い結果となりましたが力の使い方を学ばなければ必ず同じような結果になるとは言い切れません。
ローザリア様の加護は稀に見る強さですので教会にて学んで頂いております」
「では、教会でなくとも学園に通われれば良いではないか!?」
王立精霊学園の学園長が人を押し退けて前に出てきた。
「多くの学園生を抱えておられる学園でローザリア様だけに個別授業を行うのは非常に難しいのではありませんか? 今回の旱魃に一日も早く対応する為に学園生達も頑張っておられる。彼等の指導も急務な上に全く知識のなかったローザリア様の個別指導をされると言うのは時間・人員的に厳しすぎるでしょう」
「回復魔法が使えると聞いておる。それは真か?」
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