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一回目 (過去)
56.タイムリミット
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【ローザリアは18歳で愛し子として覚醒する。その時をジンは待っている】
ナスタリア神父の呟きに精霊王が答えた。
「それまでは手を出してこないんですか?」
【ジンの元に完全に取り込んでしまうと愛し子は覚醒しない。ジンは王家の全てを制御できていない】
「それは⋯⋯ジンの力不足とか?」
【奴の力はまだ十全ではない】
「ジンは私が18歳になるのを待っているけれど、制御しきれていない王家が勝手に時期を早める可能性があるという事ですね」
「ならば王家が手を出してこないように手を打つのが先決か」
この国の法を守るつもりがあればローザリアと王太子の婚姻は3年後になる。
「リリアーナ様を持ち上げるのが最善かもしれませんね」
ナスタリア神父の言ったことの意図が分からずローザリアは首を傾げた。
「リリアーナ様は王家が知っている中では一番加護の力が強いと思われています。本人は王太子殿下との婚姻を望んでいて王太子殿下も満更ではなさそうですし。
リリアーナ様にも回復魔法が使えるようになる可能性があると思わせれば婚約も婚姻も引き伸ばせます」
「それが可能ならリリアーナも教会に勉強に来るのですから丁度いいかもしれませんね」
(そう言えば、石碑のところでお会いした時と精霊王の話し方がずいぶん違うわ)
【焦ったいよねー】
【精霊王、がんばれー】
「もうすぐ公爵邸に着きそうですね。では、ローザリア様に宿題です。馬車を降りたその時から私の口調や態度を真似して下さい。出来ますか?」
「がっ、頑張ります」
ナスタリア神父の普段の話し方や態度はそのまま貴族として通用するだろう。二日間ナスタリア神父と過ごしたお陰でローザリアにもイメージしやすい。
馬車が公爵邸に着くと今日はケビンが待ち構えていたように玄関のドアを開けた。ナスタリア神父にエスコートされたローザリアが馬車を降りると、蔑んだような目でローザリアを見下ろしたケビンが早口でウォレスの指示を口にした。
「旦那様がお話があるそうです。お客様がお待ちですから急いで下さい」
今日もゾロゾロと護衛を引き連れたローザリアがドアをくぐろうとするとケビンが口元を歪めて嬉しげに言い放った。
「皆様はここまでで結構です」
「そうですか。では私達は帰るとしましょう。リリアーナ様の学習予定について相談に乗れなくなったとトーマック公爵にお伝え下さい」
陰湿な笑いを浮かべていたケビンはナスタリア神父の言葉の意味が分からなかったらしいが、リリアーナに関する事を言われた事だけは分かったらしく困惑の表情を浮かべた。
「えっと、それはどういう意味でしょうか?」
「執事如きに門前払いを食らい教会と公爵家の約束は反故になりましたので、リリアーナ様へのお手伝いは今後一切受けかねると言っているのです。
我々教会側が反故にしたのではないと間違いなく伝えて下さい。契約に違反した咎が降りるのはそれを選んだ公爵家ですから後から教会に抗議されませんように。
ではローザリア様、失礼致します」
くるりと背を翻しさっさと馬車に向けて歩くナスタリア神父達をケビンが慌てて追いかけた。
「おっ、お待ち下さい!! えっと、その。応接室にご案内するのを忘れておりました。そう、旦那様は皆様にお会いしたいと仰せでした!」
冷ややかな目つきで振り返ったナスタリア神父がケビンを睨みつけた。
「では、先程さっさと帰れと言っていたのは執事権限ですか。トーマック公爵家の使用人は少し他とは違うようだ」
ささやかな嫌味と共にナスタリア神父達が戻ってきた。
「ローザリア様、どう致しますか?」
「私から謝罪をさせて下さい。使用人の長である執事がお客様に対しあのような態度を取るなど許されないことです。大変申し訳ありませんでした」
上出来ですと言わんばかりに微笑んだナスタリア神父と並んで応接室へ向かうローザリアの後ろでナザエル枢機卿が笑いを堪えながらニールに話しかけた。
「くっくっ、ミニ・ナスタリア嬢はなかなか堂に入ってるじゃねえか。なあ」
ニールは無言でナザエル枢機卿を睨みつけた。
ローザリア達が応接室で待っていると不機嫌な顔のウォレスが監視人の一人を連れてやって来た。
ナスタリア神父の呟きに精霊王が答えた。
「それまでは手を出してこないんですか?」
【ジンの元に完全に取り込んでしまうと愛し子は覚醒しない。ジンは王家の全てを制御できていない】
「それは⋯⋯ジンの力不足とか?」
【奴の力はまだ十全ではない】
「ジンは私が18歳になるのを待っているけれど、制御しきれていない王家が勝手に時期を早める可能性があるという事ですね」
「ならば王家が手を出してこないように手を打つのが先決か」
この国の法を守るつもりがあればローザリアと王太子の婚姻は3年後になる。
「リリアーナ様を持ち上げるのが最善かもしれませんね」
ナスタリア神父の言ったことの意図が分からずローザリアは首を傾げた。
「リリアーナ様は王家が知っている中では一番加護の力が強いと思われています。本人は王太子殿下との婚姻を望んでいて王太子殿下も満更ではなさそうですし。
リリアーナ様にも回復魔法が使えるようになる可能性があると思わせれば婚約も婚姻も引き伸ばせます」
「それが可能ならリリアーナも教会に勉強に来るのですから丁度いいかもしれませんね」
(そう言えば、石碑のところでお会いした時と精霊王の話し方がずいぶん違うわ)
【焦ったいよねー】
【精霊王、がんばれー】
「もうすぐ公爵邸に着きそうですね。では、ローザリア様に宿題です。馬車を降りたその時から私の口調や態度を真似して下さい。出来ますか?」
「がっ、頑張ります」
ナスタリア神父の普段の話し方や態度はそのまま貴族として通用するだろう。二日間ナスタリア神父と過ごしたお陰でローザリアにもイメージしやすい。
馬車が公爵邸に着くと今日はケビンが待ち構えていたように玄関のドアを開けた。ナスタリア神父にエスコートされたローザリアが馬車を降りると、蔑んだような目でローザリアを見下ろしたケビンが早口でウォレスの指示を口にした。
「旦那様がお話があるそうです。お客様がお待ちですから急いで下さい」
今日もゾロゾロと護衛を引き連れたローザリアがドアをくぐろうとするとケビンが口元を歪めて嬉しげに言い放った。
「皆様はここまでで結構です」
「そうですか。では私達は帰るとしましょう。リリアーナ様の学習予定について相談に乗れなくなったとトーマック公爵にお伝え下さい」
陰湿な笑いを浮かべていたケビンはナスタリア神父の言葉の意味が分からなかったらしいが、リリアーナに関する事を言われた事だけは分かったらしく困惑の表情を浮かべた。
「えっと、それはどういう意味でしょうか?」
「執事如きに門前払いを食らい教会と公爵家の約束は反故になりましたので、リリアーナ様へのお手伝いは今後一切受けかねると言っているのです。
我々教会側が反故にしたのではないと間違いなく伝えて下さい。契約に違反した咎が降りるのはそれを選んだ公爵家ですから後から教会に抗議されませんように。
ではローザリア様、失礼致します」
くるりと背を翻しさっさと馬車に向けて歩くナスタリア神父達をケビンが慌てて追いかけた。
「おっ、お待ち下さい!! えっと、その。応接室にご案内するのを忘れておりました。そう、旦那様は皆様にお会いしたいと仰せでした!」
冷ややかな目つきで振り返ったナスタリア神父がケビンを睨みつけた。
「では、先程さっさと帰れと言っていたのは執事権限ですか。トーマック公爵家の使用人は少し他とは違うようだ」
ささやかな嫌味と共にナスタリア神父達が戻ってきた。
「ローザリア様、どう致しますか?」
「私から謝罪をさせて下さい。使用人の長である執事がお客様に対しあのような態度を取るなど許されないことです。大変申し訳ありませんでした」
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「くっくっ、ミニ・ナスタリア嬢はなかなか堂に入ってるじゃねえか。なあ」
ニールは無言でナザエル枢機卿を睨みつけた。
ローザリア達が応接室で待っていると不機嫌な顔のウォレスが監視人の一人を連れてやって来た。
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