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一回目 (過去)

45.精霊王と精霊の仲

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 ローザリアの驚いた顔を見てケラケラと笑いだしたのはオーレアンであった従僕⋯⋯に似た誰か。

【久しぶり】

 あの時は膝丈の半ズボンにストッキングをはいていたが、今日は神託の儀式の部屋にあった彫像とよく似たローブ姿。

【ここ、狭いからさ。不死鳥はお留守番してもらったんだけど後で頭をつつかれそうだよ】

【あたま~、禿げちゃう】

【つるつる~】


【禿げねぇし!】

(精霊王のイメージが⋯⋯)

【今日は千年ぶりの正式な再会を祝してプレゼントを持ってきた】

 精霊王が差し出したのは左手に持っていた宝剣と腰帯。

【ローザリアは空間収納が使えるから、そこに入れとくんだぜ。両方俺の最大級の加護をつけておいたから無くすなよ】

「あっ、ありがとうございます?」

 思わず受け取った宝剣は思ったより軽くて持ちやすい。腰帯はつるつると手触りが良く金糸と銀糸で繊細な刺繍が施されていた。

【なんで、疑問系なのかわかんないけど。まあ良いか、頭ん中に鞄があるイメージでそこに片付けるって思ってごらん?】

 言われるままにイメージすると時間はかかったがパッと手の中が空になった。

【で、何を出したいか考えて取り出す】

 鞄を開いて宝剣をイメージすると本当に手の中に出てきた。

【慣れたらもっとパパッとできるようになるから。ローザリアのクソ狭い部屋もその要領で広げる事もできるし、欲しいものがあれば無魔法・創造魔法で作れるから】

「あの、えっと」

 情報が多すぎて頭が働かなくなったローザリアはパニックになりかけた。

「精霊王に申し上げます。ローザリア様は少し混乱しておられるように見受けられます。恐らくは情報が多すぎるのかと」

 ナスタリア神父が恐る恐る進言した。

【あー、ごめんごめん。教会がさっさとローザリアを連れてきてくれないからちょっと待ちくたびれててさ】

 7歳で神託の儀を受けられないまま8年も経過してしまったことを言っているのだろう。

「申し訳ありません。我々の不徳の致すところでございます」

 深々と頭を下げるナザエル枢機卿とナスタリア神父。

【いや、ローザリアがあんな目に遭ったのは別の理由だから謝んなくてもいいけど。俺の力不足というか戦略負けというか】



「精霊王様にお聞きします。私は何故他の人と違う暮らしをせざるを得なかったんですか?」

【ルーク】

「⋯⋯ルーク様?」

【いいね、この間何となくつけたんだけどローザリアに呼ばれるのは凄くいい】

「はぁ、ありがとうございます?」



【教会もだが王家は愛し子という存在を知っている】

 先程までの軽薄な態度は鳴りを潜め鋭い目つきでナスタリア神父を注視した。

【教会は愛し子を大切な存在だと思ってはいるが左程気にしていない。
だが、王家は違う。奴等は愛し子がいたからこそこの国が千年の平和を約束してもらえたと知っていて、愛し子を必死に探している】

(愛し子って?)


【愚かな奴等は盟約だなどと言って権力に胡座をかき加護を悪用してきた。
そのせいで数百年前に加護を永遠に失うだけでなくジンに取り込まれた。にも関わらず今でも加護を望み全ての精霊の加護を手に入れようとしている。
精霊を使役獣のようにテイムする方法まで研究している。
ナザエル、君なら魔物をテイムする方法を知っているだろう?】

「はい、痛めつけて弱らせて⋯⋯えっ? まさか!」

【そう、その通り。ローザリアが死にたいと思うほど身も心も弱らせてから手に入れられたら愛し子と共に全ての精霊を永遠に手に入れられるとジンは考えた。そしてそのストーリーに合うように駒を動かしている】

「ローザリア様が愛し子だと言うこと王家を既に知っているのですか?」

【いや、知っているのはジンだけだろう。奴にとって王家の奴らはただの操り人形だから重要な情報は流さない。その方が依存心が高くなると知っているんだ。
王家の血を引いていない者をトーマック公爵に嫁がせればこの時代に愛し子が生まれることをジンは知っていた。
そして、カサンドラは王家の血を引いていない】

「えっ!」

【カサンドラは王弟妃の不義の子だ。王弟はそれを知らないでカサンドラを可愛がっているし、カサンドラも今のところ知らない】


「愛し子が産まれるためにはトーマック公爵である必要があったと言う事ですか?」

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