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一回目 (過去)
33.ナスタリア神父の手腕
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「トーマック公爵、ここは教会の力をお借りしては如何でしょうか? 陛下は1日も早い復興を願っておいでです。最速の方法を選ばれたとお知りになられればお喜びになられるのではありませんか?」
「うむ、しかしそれは⋯⋯」
「だったら私も教会へ行きますわ。ローザリアの紋章は何かの間違いだから、私の力があればローザリアなんかより早く国のお役に立てるようになりますもの。
ねっ、お母様いいでしょう?」
「そうね、それならば⋯⋯。リリアーナの教育を手伝うと言うのであれば教会に任せてあげてもいいわね」
「では、書類を作成し明日の朝一番で届けると致しましょう。送り迎えは教会で行うとかローザリア様の体調には教会で責任を持つとか、教会で担当する内容などを明確にしてあれば安心していただけるのではありませんか?」
「ええ、そうね」
「では、明日から早速はじめられるように手配いたします。リリアーナ様は学園の授業との絡みもおありでしょうから日程の調整からはじめねばなりませんね。
ナザエル枢機卿宜しいでしょうか?」
「ああ」
ナザエル枢機卿が立ち上がりウォレスに向けて右手を差し出した。
「リリアーナを宜しくお願いします」
ナザエル枢機卿とウォレスが握手を交わした。話の流れで何気なく交わされたように見えるが、この国での握手は契約の意味が含まれる。書類による契約が間に合わない場合は第三者の前で握手することで契約が完了した事と同じ意味を持つ。
普段領地経営や家計の管理などを全て家令や執事に丸投げしている公爵夫妻が知っているかどうかは分からないが⋯⋯。
「我々は本日只今よりローザリア様の受け入れ準備をはじめ、ローザリア様が加護を正しく行使できるまで心身の全てに責任を負う。精霊王の御前にてこの誓いに嘘偽りなきことを宣言する」
繋がれたままの手から光が溢れ契約が完了したことを知らせた。
「なっなんだ、今の光は!」
不安げなウォレスがナザエル枢機卿に詰め寄った。
「正式に契約がなされたので、我々にはこの件に関して責任が発生致しました。文言に違わず任務を遂行することを誓います。では、ローザリア様のお部屋を見せて頂けますでしょうか?」
「は? なぜ部屋を見る必要が?」
「ローザリア様の健康の為専属のメイドをつけさせていただく予定でおります。勿論費用等は全て教会の責任にて行いますのでご安心下さい。
メイドの荷物や宿泊場所の有無を確認させていただけますか?」
「今はその、部屋の模様替えをしている最中ですの。ですから普段とは別の部屋を使っております」
「そうですか。それでも構いません。元々聖職者は清貧を旨と致しておりますので贅沢や我儘を言うようなものはおりません」
「別にメイドなどつけていただかなくて結構ですわ。我が家の使用人が十分な世話をしておりますから」
「勿論ですとも。ただ、これからしばらくの間は勉強を持ち帰ったり宿題をお出しすることもあると思われますので、それらにも対応できる者にローザリア様のお世話も任せて頂きます」
「なんでローザリアばかりそんなに優遇するの? 狡いわ」
「体調次第ではお休みをして頂くこともあるでしょうし、そのような状況で1日も早い成果をお出しするためですから。決して優遇などではございません」
「部屋は準備しておきます。今日のところはご遠慮頂きます」
「畏まりました。もしメイドがご迷惑ということであれば遠慮なく仰ってください。教会に宿泊施設もありますので」
「⋯⋯」
流れるように話が決まっていく。普段口達者なカサンドラでさえ何も反論できなくなっている。ランブリー団長や監視人達に至っては問題がサクサク決まっていくので安堵の表情を浮かべている。
「それでは我々は失礼させて頂きます。ローザリア様、明日の朝迎えの馬車を寄越しますのでそれまでしっかりとお休みください。持ち物などは特にお気になさいませんよう」
簡単な挨拶を済ませて席を立ったナザエル枢機卿は護衛のひとりに声をかけた。
「うむ、しかしそれは⋯⋯」
「だったら私も教会へ行きますわ。ローザリアの紋章は何かの間違いだから、私の力があればローザリアなんかより早く国のお役に立てるようになりますもの。
ねっ、お母様いいでしょう?」
「そうね、それならば⋯⋯。リリアーナの教育を手伝うと言うのであれば教会に任せてあげてもいいわね」
「では、書類を作成し明日の朝一番で届けると致しましょう。送り迎えは教会で行うとかローザリア様の体調には教会で責任を持つとか、教会で担当する内容などを明確にしてあれば安心していただけるのではありませんか?」
「ええ、そうね」
「では、明日から早速はじめられるように手配いたします。リリアーナ様は学園の授業との絡みもおありでしょうから日程の調整からはじめねばなりませんね。
ナザエル枢機卿宜しいでしょうか?」
「ああ」
ナザエル枢機卿が立ち上がりウォレスに向けて右手を差し出した。
「リリアーナを宜しくお願いします」
ナザエル枢機卿とウォレスが握手を交わした。話の流れで何気なく交わされたように見えるが、この国での握手は契約の意味が含まれる。書類による契約が間に合わない場合は第三者の前で握手することで契約が完了した事と同じ意味を持つ。
普段領地経営や家計の管理などを全て家令や執事に丸投げしている公爵夫妻が知っているかどうかは分からないが⋯⋯。
「我々は本日只今よりローザリア様の受け入れ準備をはじめ、ローザリア様が加護を正しく行使できるまで心身の全てに責任を負う。精霊王の御前にてこの誓いに嘘偽りなきことを宣言する」
繋がれたままの手から光が溢れ契約が完了したことを知らせた。
「なっなんだ、今の光は!」
不安げなウォレスがナザエル枢機卿に詰め寄った。
「正式に契約がなされたので、我々にはこの件に関して責任が発生致しました。文言に違わず任務を遂行することを誓います。では、ローザリア様のお部屋を見せて頂けますでしょうか?」
「は? なぜ部屋を見る必要が?」
「ローザリア様の健康の為専属のメイドをつけさせていただく予定でおります。勿論費用等は全て教会の責任にて行いますのでご安心下さい。
メイドの荷物や宿泊場所の有無を確認させていただけますか?」
「今はその、部屋の模様替えをしている最中ですの。ですから普段とは別の部屋を使っております」
「そうですか。それでも構いません。元々聖職者は清貧を旨と致しておりますので贅沢や我儘を言うようなものはおりません」
「別にメイドなどつけていただかなくて結構ですわ。我が家の使用人が十分な世話をしておりますから」
「勿論ですとも。ただ、これからしばらくの間は勉強を持ち帰ったり宿題をお出しすることもあると思われますので、それらにも対応できる者にローザリア様のお世話も任せて頂きます」
「なんでローザリアばかりそんなに優遇するの? 狡いわ」
「体調次第ではお休みをして頂くこともあるでしょうし、そのような状況で1日も早い成果をお出しするためですから。決して優遇などではございません」
「部屋は準備しておきます。今日のところはご遠慮頂きます」
「畏まりました。もしメイドがご迷惑ということであれば遠慮なく仰ってください。教会に宿泊施設もありますので」
「⋯⋯」
流れるように話が決まっていく。普段口達者なカサンドラでさえ何も反論できなくなっている。ランブリー団長や監視人達に至っては問題がサクサク決まっていくので安堵の表情を浮かべている。
「それでは我々は失礼させて頂きます。ローザリア様、明日の朝迎えの馬車を寄越しますのでそれまでしっかりとお休みください。持ち物などは特にお気になさいませんよう」
簡単な挨拶を済ませて席を立ったナザエル枢機卿は護衛のひとりに声をかけた。
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