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一回目 (過去)
30.ナザエル枢機卿、公爵家へ行く
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「教会に着いてから見えなくなったんです。でも今は近くにいる気配がします」
【勿論、いるよー】
【教会の見回り隊してたの~】
【お花畑のお花が少なくて残念だった】
「教会のお花畑とかあちこちに行ってたそうです」
ローザリアの言葉が終わる前に馬車の中や周りにポンポンと光の玉が現れた。
「凄い! こんなに沢山の精霊が」
ナスタリア神父が目を見開いて驚いていると馬車の周りからも歓声が聞こえてきた。
「「おー!!」」
「すげえーぞ、なんだこりゃ!」
「えーっと。外にもいるみたいですね」
「ですね、多分ですがナザエル枢機卿以外の聖騎士達のためでしょう。彼等が今後ローザリア様の護衛をする可能性もありますから、沢山の精霊がローザリア様の元に集うのを間近に見ておけば護ろうと思う気持ちが強化されますから」
【そのとーりー】
【お利口さんだ~】
【さっすが~、ご褒美のお花あげるー】
「おっ、おり⋯⋯」
ナスタリア神父が不思議そうに首を傾げて顔を覗き込んできた。
「あっえっ、精霊がその通りだって言ってます」
馬車の中にハラハラと花びらが舞い落ちてきた。
「ご褒美だそうです」
後で馬車を掃除する人に申し訳ないと思い肩をすくめて小さくなるローザリアだった。
「なんだか、ごめんなさい」
「精霊達に感謝します。後で集めて記念のポプリでも作りましょう」
公爵家の前で馬車が停止するとどこからともなくナザエル枢機卿が黒馬で現れ、悪戯っぽい浮かべながら右手を上げた。
お土産にいただいたお菓子の山を抱えて馬車を降りた。教会の馬車がついたと言うのに玄関は閉まったままで執事も従僕も姿を現さない。
「すみません、すぐに開けますね」
慌ててローザリアが玄関ドアに手をかけると中からドアが開きケビンが顔を覗かせた。
「いらっしゃいませ。お約束はしておられますか? ご用件をお聞きしても宜しいでしょうか」
慇懃無礼な態度のケビンにローザリアは顔を引き攣らせた。当のケビンはローザリアを無視するだけでなくドアを半分開けた状態で顔だけ出している。
「ほう、主人からは何も聞いておらんのかな? 教会にいらしたローザリア様をお送りしてきたのだが。
しかも勤め先の令嬢にお帰りなさいも言えんのか」
「⋯⋯それはご苦労様でした。お見送りの必要はないと思いますのでここで失礼させて頂きます」
ムッとした顔でドアを閉めかけたケビンはナザエル枢機卿達を追い返す気満々のよう。
「あの、こちらの方々は⋯⋯」
「精霊教会のナザエル枢機卿とナスタリア神父が来たと公爵に伝えて来い。その際にお前がどのような態度で出迎えたのかも伝えるんだな」
「すっ枢機卿!? どっどうぞこちらへ、ご案内致します」
慌ててドアを全開にしてナザエル枢機卿達を客間に案内したケビンは、真っ青な顔に冷や汗を垂らしながら部屋を飛び出して行った。
「いやー、初戦から予想通り」
妙に楽しそうなナザエル枢機卿と不機嫌なナスタリア神父がソファに腰を下ろした。馬車の元に2人の護衛を残し4人の護衛がナザエル枢機卿達の後ろに並んだ。
「応接室じゃないと言うことは王宮の監視人がまだ居座っていますね」
ソファの近くでオロオロしているローザリアを不思議そうな顔で見たナザエル枢機卿が声をかけようとした時、開け放したままの入り口からウォレスとカサンドラが鷹揚な態度で入ってきた。
その後ろには可愛らしい笑みを浮かべたリリアーナもいる。
「これはこれは枢機卿自らお送り下さるとは。私が公爵家当主のウォレス・トーマックです。以後お見知り置きを」
「王宮で何度かお見かけいたしましたわね。カサンドラですわ」
「リリアーナと申します。わたくしも水の加護を戴いておりますの」
「私は枢機卿のナザエル。ナスタリア神父とは何度も会っておられると聞いている。挨拶は省かせて頂こう」
「ええ、ナスタリア神父は何度もお見えになっておられますのでな」
公爵家に敬意を表して枢機卿自らやって来たと勘違いしているウォレス達は上から目線で話をつづけた。
「どうぞおかけくださいな。今日はこの子がご迷惑をおかけしたようですわね」
ナザエル枢機卿とナスタリア神父の前にウォレス達3人が座ったがローザリアには声もかけない。
「ローザリア様もこちらへお掛けください」
ナザエル枢機卿がソファの横をトントンと叩いてローザリアに頷いた。
「枢機卿自らお出ましとは、どういったご用件ですかな? 神託の結果など既に連絡を受けておりますが?」
【勿論、いるよー】
【教会の見回り隊してたの~】
【お花畑のお花が少なくて残念だった】
「教会のお花畑とかあちこちに行ってたそうです」
ローザリアの言葉が終わる前に馬車の中や周りにポンポンと光の玉が現れた。
「凄い! こんなに沢山の精霊が」
ナスタリア神父が目を見開いて驚いていると馬車の周りからも歓声が聞こえてきた。
「「おー!!」」
「すげえーぞ、なんだこりゃ!」
「えーっと。外にもいるみたいですね」
「ですね、多分ですがナザエル枢機卿以外の聖騎士達のためでしょう。彼等が今後ローザリア様の護衛をする可能性もありますから、沢山の精霊がローザリア様の元に集うのを間近に見ておけば護ろうと思う気持ちが強化されますから」
【そのとーりー】
【お利口さんだ~】
【さっすが~、ご褒美のお花あげるー】
「おっ、おり⋯⋯」
ナスタリア神父が不思議そうに首を傾げて顔を覗き込んできた。
「あっえっ、精霊がその通りだって言ってます」
馬車の中にハラハラと花びらが舞い落ちてきた。
「ご褒美だそうです」
後で馬車を掃除する人に申し訳ないと思い肩をすくめて小さくなるローザリアだった。
「なんだか、ごめんなさい」
「精霊達に感謝します。後で集めて記念のポプリでも作りましょう」
公爵家の前で馬車が停止するとどこからともなくナザエル枢機卿が黒馬で現れ、悪戯っぽい浮かべながら右手を上げた。
お土産にいただいたお菓子の山を抱えて馬車を降りた。教会の馬車がついたと言うのに玄関は閉まったままで執事も従僕も姿を現さない。
「すみません、すぐに開けますね」
慌ててローザリアが玄関ドアに手をかけると中からドアが開きケビンが顔を覗かせた。
「いらっしゃいませ。お約束はしておられますか? ご用件をお聞きしても宜しいでしょうか」
慇懃無礼な態度のケビンにローザリアは顔を引き攣らせた。当のケビンはローザリアを無視するだけでなくドアを半分開けた状態で顔だけ出している。
「ほう、主人からは何も聞いておらんのかな? 教会にいらしたローザリア様をお送りしてきたのだが。
しかも勤め先の令嬢にお帰りなさいも言えんのか」
「⋯⋯それはご苦労様でした。お見送りの必要はないと思いますのでここで失礼させて頂きます」
ムッとした顔でドアを閉めかけたケビンはナザエル枢機卿達を追い返す気満々のよう。
「あの、こちらの方々は⋯⋯」
「精霊教会のナザエル枢機卿とナスタリア神父が来たと公爵に伝えて来い。その際にお前がどのような態度で出迎えたのかも伝えるんだな」
「すっ枢機卿!? どっどうぞこちらへ、ご案内致します」
慌ててドアを全開にしてナザエル枢機卿達を客間に案内したケビンは、真っ青な顔に冷や汗を垂らしながら部屋を飛び出して行った。
「いやー、初戦から予想通り」
妙に楽しそうなナザエル枢機卿と不機嫌なナスタリア神父がソファに腰を下ろした。馬車の元に2人の護衛を残し4人の護衛がナザエル枢機卿達の後ろに並んだ。
「応接室じゃないと言うことは王宮の監視人がまだ居座っていますね」
ソファの近くでオロオロしているローザリアを不思議そうな顔で見たナザエル枢機卿が声をかけようとした時、開け放したままの入り口からウォレスとカサンドラが鷹揚な態度で入ってきた。
その後ろには可愛らしい笑みを浮かべたリリアーナもいる。
「これはこれは枢機卿自らお送り下さるとは。私が公爵家当主のウォレス・トーマックです。以後お見知り置きを」
「王宮で何度かお見かけいたしましたわね。カサンドラですわ」
「リリアーナと申します。わたくしも水の加護を戴いておりますの」
「私は枢機卿のナザエル。ナスタリア神父とは何度も会っておられると聞いている。挨拶は省かせて頂こう」
「ええ、ナスタリア神父は何度もお見えになっておられますのでな」
公爵家に敬意を表して枢機卿自らやって来たと勘違いしているウォレス達は上から目線で話をつづけた。
「どうぞおかけくださいな。今日はこの子がご迷惑をおかけしたようですわね」
ナザエル枢機卿とナスタリア神父の前にウォレス達3人が座ったがローザリアには声もかけない。
「ローザリア様もこちらへお掛けください」
ナザエル枢機卿がソファの横をトントンと叩いてローザリアに頷いた。
「枢機卿自らお出ましとは、どういったご用件ですかな? 神託の結果など既に連絡を受けておりますが?」
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