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一回目 (過去)
28.ナスタリア神父の計画
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「公爵家に着いたら聖布を見せろと言うでしょう。そこでローザリア様が回復魔法を使えるようになるはずだと伝えます。今では知らない人の方が多いのですが強い水の加護があればある程度の回復魔法が使えるようになるんです」
「ああ、現状は加護が弱すぎるから誰も使えんがな。無理矢理使えば魔力不足でぶっ倒れる」
「王家の希望通りに学園に席を置くけれど休学扱いか特別授業の扱いにしてもらいます。そして教育に関しては教会が全て担当するんです」
「そんな事が出来るんでしょうか?」
「ああ、問題ない。学園の教官は水の加護で回復魔法を使う方法も手順も知らんからな。その技術は今では教会にしかない」
水の加護で回復魔法が使えるようになると言えば欲深い王家は諸手を挙げて喜ぶに違いない。
「ローザリア様を教会に引き取れるのが一番なのですが王家が文句を言うと思われますので公爵家から毎日通ってもらいます。
送り迎えも教会で行うので公爵家にいる時の処遇に少しでも問題があれば教会で引き取ると脅しておきましょう。
幸いな事にそういうことに関してだけはナザエル枢機卿は有能ですから」
ナスタリア神父がちょいちょいと指差した壊れたドアをみて納得したローザリアが小さく頷いた。
「ナザエル枢機卿が送り迎えをするか講義の担当をすると言えば大したことはしてこないと思います。ナザエル枢機卿はよく言えば武闘派の聖職者として有名ですから」
「よく言えばって、お前はさっきからちょこちょこと俺のことを馬鹿にしてないか?」
「馬鹿にはしていません。聖職者のくせに山に篭って猛獣と戯れていたり、毎日聖騎士を叩きのめしすぎて怯えられたりしている変わり者とは思っていますが」
水の魔法は攻撃にも使えるがナザエル枢機卿の場合は素手の攻撃や武器も扱う。ナザエル枢機卿が使うのは鎧も断ち切るほどの破壊力を誇るツーハンドソード、2メートル近い長さで重量もあるそれを背負って平気で移動する。
「もしも公爵が何かしでかしたら馬で駆けつけるから心配しなくていい。俺のはデストリエと呼ばれる巨大な黒馬だから威圧感たっぷりだしな」
「本人も威圧感がこの通りですからそっちに関しては今までのような暴言・暴力はできなくなると思います。
王家の方は出方を見ながら対応するしかありませんね。そちらは私が担当します」
武闘派のナザエル枢機卿と頭脳派のナスタリア神父という役割分担でローザリアを守ってくれるようで、ローザリアは教会についてからの目まぐるしい変化についていくのが精一杯だった。
「登城する時は必ず着いて行こう。どんな理由があっても1人で魔窟に向かわないと約束してくれ。
それから連絡係と監視役を兼ねられる奴をそばに置きたい」
「そうですね。公爵家の蛭と王家の魔物ですから一人になる時間はない方が⋯⋯となると女性か⋯⋯アイツはアレだし⋯⋯ローザリア様専属のメイド兼護衛のできる女性。
あっ、勝手に話を進めていますがローザリア様は如何ですか?」
「とても嬉しい話ですがそこまでしていただくのはご迷惑じゃありませんか?」
「これは俺達の為でもあるし教会の為でもある。精霊教会が精霊王の加護を持つ者を護りたいだけなんだ。
まあ、王家のクソに一泡吹かせたいってのもあるがな」
「公爵家にもですね。つまり利害の一致と言うわけです。それに私達はローザリア様にお礼を言いたいくらいなんです。今日だけでも精霊に関して色々新しい事を知りましたから」
「ありがとうございます。では、宜しくお願いします」
ローザリアは素直にお礼を言って頭を下げた。彼らの協力なしではこれから先どうにもならないのが目に見えている。それなら感謝してできる限りのことをすれば良い。
教えを受けて知識をつければナスタリア神父が『持っている人がいない』と言っていた精霊の事も分かるかもしれない。
「精霊が何か教えてくれた時はすぐに報告しますね」
「おう、聖布の紋章で書物でしか見たことがないのもあるし。これからが楽しみでしょうがねえ。遠慮せずになんでも言うんだぞ」
「はい!」
その後少し休憩しようと言う話になりナスタリア神父はお茶の準備をすると言って席を外した。ナザエル枢機卿はローザリアの今までの暮らしや精霊との話を聞き、顔を赤くして公爵達を罵ったり精霊と会話する方法を聞いて欲しいと目を輝かせたりと忙しい。
ナスタリア神父は紅茶と一緒に色々な種類のお菓子を山のように運んできた。
「ああ、現状は加護が弱すぎるから誰も使えんがな。無理矢理使えば魔力不足でぶっ倒れる」
「王家の希望通りに学園に席を置くけれど休学扱いか特別授業の扱いにしてもらいます。そして教育に関しては教会が全て担当するんです」
「そんな事が出来るんでしょうか?」
「ああ、問題ない。学園の教官は水の加護で回復魔法を使う方法も手順も知らんからな。その技術は今では教会にしかない」
水の加護で回復魔法が使えるようになると言えば欲深い王家は諸手を挙げて喜ぶに違いない。
「ローザリア様を教会に引き取れるのが一番なのですが王家が文句を言うと思われますので公爵家から毎日通ってもらいます。
送り迎えも教会で行うので公爵家にいる時の処遇に少しでも問題があれば教会で引き取ると脅しておきましょう。
幸いな事にそういうことに関してだけはナザエル枢機卿は有能ですから」
ナスタリア神父がちょいちょいと指差した壊れたドアをみて納得したローザリアが小さく頷いた。
「ナザエル枢機卿が送り迎えをするか講義の担当をすると言えば大したことはしてこないと思います。ナザエル枢機卿はよく言えば武闘派の聖職者として有名ですから」
「よく言えばって、お前はさっきからちょこちょこと俺のことを馬鹿にしてないか?」
「馬鹿にはしていません。聖職者のくせに山に篭って猛獣と戯れていたり、毎日聖騎士を叩きのめしすぎて怯えられたりしている変わり者とは思っていますが」
水の魔法は攻撃にも使えるがナザエル枢機卿の場合は素手の攻撃や武器も扱う。ナザエル枢機卿が使うのは鎧も断ち切るほどの破壊力を誇るツーハンドソード、2メートル近い長さで重量もあるそれを背負って平気で移動する。
「もしも公爵が何かしでかしたら馬で駆けつけるから心配しなくていい。俺のはデストリエと呼ばれる巨大な黒馬だから威圧感たっぷりだしな」
「本人も威圧感がこの通りですからそっちに関しては今までのような暴言・暴力はできなくなると思います。
王家の方は出方を見ながら対応するしかありませんね。そちらは私が担当します」
武闘派のナザエル枢機卿と頭脳派のナスタリア神父という役割分担でローザリアを守ってくれるようで、ローザリアは教会についてからの目まぐるしい変化についていくのが精一杯だった。
「登城する時は必ず着いて行こう。どんな理由があっても1人で魔窟に向かわないと約束してくれ。
それから連絡係と監視役を兼ねられる奴をそばに置きたい」
「そうですね。公爵家の蛭と王家の魔物ですから一人になる時間はない方が⋯⋯となると女性か⋯⋯アイツはアレだし⋯⋯ローザリア様専属のメイド兼護衛のできる女性。
あっ、勝手に話を進めていますがローザリア様は如何ですか?」
「とても嬉しい話ですがそこまでしていただくのはご迷惑じゃありませんか?」
「これは俺達の為でもあるし教会の為でもある。精霊教会が精霊王の加護を持つ者を護りたいだけなんだ。
まあ、王家のクソに一泡吹かせたいってのもあるがな」
「公爵家にもですね。つまり利害の一致と言うわけです。それに私達はローザリア様にお礼を言いたいくらいなんです。今日だけでも精霊に関して色々新しい事を知りましたから」
「ありがとうございます。では、宜しくお願いします」
ローザリアは素直にお礼を言って頭を下げた。彼らの協力なしではこれから先どうにもならないのが目に見えている。それなら感謝してできる限りのことをすれば良い。
教えを受けて知識をつければナスタリア神父が『持っている人がいない』と言っていた精霊の事も分かるかもしれない。
「精霊が何か教えてくれた時はすぐに報告しますね」
「おう、聖布の紋章で書物でしか見たことがないのもあるし。これからが楽しみでしょうがねえ。遠慮せずになんでも言うんだぞ」
「はい!」
その後少し休憩しようと言う話になりナスタリア神父はお茶の準備をすると言って席を外した。ナザエル枢機卿はローザリアの今までの暮らしや精霊との話を聞き、顔を赤くして公爵達を罵ったり精霊と会話する方法を聞いて欲しいと目を輝かせたりと忙しい。
ナスタリア神父は紅茶と一緒に色々な種類のお菓子を山のように運んできた。
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