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14.お礼のプレゼント
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「お前は本当お人好しだよ。爵位と資産剥奪だけであいつらを赦そうとするんだもんな」
今は、離婚のお祝いパーティーの真っ最中。兄妹二人は既にワインを2本開けて、赤い顔をしている。
「だってさぁ鉱山奴隷とかぁ娼館行きだなんて、そんな事んなったらフィンリーちゃんは孤児院に入れられちゃうって言われたんだもん。
孤児院だけは・・絶対駄目だよ。
フィンリーちゃんに親戚とかいてくれたら別だったけど~」
早くに両親を亡くした二人は、別々の孤児院に預けられた。
劣悪な環境・酷い虐め・厳しいシスターからの仕置き・・先に独り立ちした兄は必死で仕事を覚えアナベルを迎えに行った。
アナベルが人に会うのを嫌がるのはこの頃の後遺症も大きいとトマスは思っている。
「そこも家政婦長に助けられたなあ。
聞いてた話じゃ怖い婆さんってイメージだったが」
陛下の代理人が領地に行った際家政婦長はキッパリ、
『あの方達ではフィンリー様を真面に育てられるとは思えません。私が責任持ってお育て致します』
そのお陰でアナベルは、安心して元辺境伯夫婦の鉱山行きと娼館落ちを認めることができた。
「家政婦長のお陰で奴が溜め込んでたものも残ったし」
「思ってたよりは残ってたね~、辺境伯の趣味が絵画集めで超らっちぃ。
後は勉強代って事で良いにしてね」
アナベルが酔った顔でトマスにあっかんべーをすると、
「あー、それな。お前の口座に少しばかり移動しておいたから」
アナベルが固まった。
「にゃにそれ」
「お前の嫁入り資金? 結納金?」
「そんなのいらないもん。結婚なんてぜーったいちないから」
「お前、いい歳して“もん” はないだろ。
さっきからかみまくってるし、恥ずかしい奴」
ドアがノックされた。
いそいそとトマスがドアを開けると、デイビッドが花束を持って立っていた。
ふらふらと立ち上がるアナベルを見たデイビッドは、
「アナベル、酔ってますか?」
「はっあの、ちょっと? 酔ってるかもでしゅが大丈夫です。この度はありっありがとうございまちた」
頭を下げ掛けてふらつくアナベル。
「ちょっと気が早かったかもしれませんが、お祝いを言いに参りました。
おめでとうございますと言っても差し支えなければ・・」
「はい! ありがとうございます。良かったらグランビー子爵も参加ちゃれましぇんか?
ねっ、兄ちゃんからもお誘いして?」
「うーん、それよりちょっと待ってろ」
トマスがドタドタと自室に駆け込み、引き出しを開ける音がした。
「アナベル、ちょっと目をつぶれ」
「はい?」
「いいから、ほら」
トマスは真っ赤なリボンでアナベルの首にでっかい蝶々結びを作り、デイビッドの方に向けた。
「グランビー子爵様、こんな感じでいかがでしょうか?」
「なっ何? このリボン、恥じゅかちいからこう言う馬鹿な真似はやめ「凄く嬉しいです。本当に頂いても宜しいのですか?」」
「勿論です。遠慮なく持ってっちゃってください」
「・・はあ? にっ兄たん、お礼のプレゼントをラッピングして送るってましゃか」
まともに喋れない酔っ払いのアナベルは椅子に座り込んだ。
「アナベル、無理にとは言いません。もし良ければこれから先ずっと、一緒にシャーベット食べませんか?」
「はん・・ぶんこでしゅか?」
にっこり笑うデイビッド。
「あい、喜んで」
こっくりと頷くアナベルにデイビッドが手を差し出した。
アナベルはその手に向かって倒れ込み・・寝てしまった。
(やべっ、飲ませ過ぎたか?
でもまあ、酔っ払ってないとこいつは素直になりそうにないからな)
今は、離婚のお祝いパーティーの真っ最中。兄妹二人は既にワインを2本開けて、赤い顔をしている。
「だってさぁ鉱山奴隷とかぁ娼館行きだなんて、そんな事んなったらフィンリーちゃんは孤児院に入れられちゃうって言われたんだもん。
孤児院だけは・・絶対駄目だよ。
フィンリーちゃんに親戚とかいてくれたら別だったけど~」
早くに両親を亡くした二人は、別々の孤児院に預けられた。
劣悪な環境・酷い虐め・厳しいシスターからの仕置き・・先に独り立ちした兄は必死で仕事を覚えアナベルを迎えに行った。
アナベルが人に会うのを嫌がるのはこの頃の後遺症も大きいとトマスは思っている。
「そこも家政婦長に助けられたなあ。
聞いてた話じゃ怖い婆さんってイメージだったが」
陛下の代理人が領地に行った際家政婦長はキッパリ、
『あの方達ではフィンリー様を真面に育てられるとは思えません。私が責任持ってお育て致します』
そのお陰でアナベルは、安心して元辺境伯夫婦の鉱山行きと娼館落ちを認めることができた。
「家政婦長のお陰で奴が溜め込んでたものも残ったし」
「思ってたよりは残ってたね~、辺境伯の趣味が絵画集めで超らっちぃ。
後は勉強代って事で良いにしてね」
アナベルが酔った顔でトマスにあっかんべーをすると、
「あー、それな。お前の口座に少しばかり移動しておいたから」
アナベルが固まった。
「にゃにそれ」
「お前の嫁入り資金? 結納金?」
「そんなのいらないもん。結婚なんてぜーったいちないから」
「お前、いい歳して“もん” はないだろ。
さっきからかみまくってるし、恥ずかしい奴」
ドアがノックされた。
いそいそとトマスがドアを開けると、デイビッドが花束を持って立っていた。
ふらふらと立ち上がるアナベルを見たデイビッドは、
「アナベル、酔ってますか?」
「はっあの、ちょっと? 酔ってるかもでしゅが大丈夫です。この度はありっありがとうございまちた」
頭を下げ掛けてふらつくアナベル。
「ちょっと気が早かったかもしれませんが、お祝いを言いに参りました。
おめでとうございますと言っても差し支えなければ・・」
「はい! ありがとうございます。良かったらグランビー子爵も参加ちゃれましぇんか?
ねっ、兄ちゃんからもお誘いして?」
「うーん、それよりちょっと待ってろ」
トマスがドタドタと自室に駆け込み、引き出しを開ける音がした。
「アナベル、ちょっと目をつぶれ」
「はい?」
「いいから、ほら」
トマスは真っ赤なリボンでアナベルの首にでっかい蝶々結びを作り、デイビッドの方に向けた。
「グランビー子爵様、こんな感じでいかがでしょうか?」
「なっ何? このリボン、恥じゅかちいからこう言う馬鹿な真似はやめ「凄く嬉しいです。本当に頂いても宜しいのですか?」」
「勿論です。遠慮なく持ってっちゃってください」
「・・はあ? にっ兄たん、お礼のプレゼントをラッピングして送るってましゃか」
まともに喋れない酔っ払いのアナベルは椅子に座り込んだ。
「アナベル、無理にとは言いません。もし良ければこれから先ずっと、一緒にシャーベット食べませんか?」
「はん・・ぶんこでしゅか?」
にっこり笑うデイビッド。
「あい、喜んで」
こっくりと頷くアナベルにデイビッドが手を差し出した。
アナベルはその手に向かって倒れ込み・・寝てしまった。
(やべっ、飲ませ過ぎたか?
でもまあ、酔っ払ってないとこいつは素直になりそうにないからな)
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