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6.王宮で聞かれました

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 王宮から帰ってきたトマスは、ご機嫌でアナベルに報告にやって来た。

「予想以上にうまく行ったぞ。みんな興味津々で聞いて来た」


 アナベルは持っていた筆を置き、
「今日の夕刊に載ってた記事のせいかも」


 トマスはアナベル指し示した記事を読んで、
「へぇ、グランドール侯爵が偽物を掴まされかけた? 本当に偽物が出てるってことか?」

「その記事によると、侯爵が目の前の磁器が偽物だと見抜いた途端、犯人は逃げ出したって言ってるそうだから怪しいわね。

グランドール侯爵って、その新聞の大株主だもの」


「ああ、俺様の審美眼すげえってのと新聞の売り上げの一挙両得を狙ったわけか。
まぁ、こっちとしても助かるから本当の偽物が出るよりマシか」


「本当の偽物って変な言い方ね」

 トマスとアナベルは顔を見合わせて大笑いした。



「今度辺境伯がアナベルを連れて参内するんだって」

「どっちのアナベル?」

「偽物の方だろ? 何しろ辺境伯領に籠って仕事をしているアナベルだそうだから」


「わぉ、辺境伯って大人しそうな顔してたけど国王相手にそれってヤバくないの?」

「バレたら即刻首が飛ぶかもな」

「えっ? それはヤダ。いくらあんな人でも処刑されるのは・・。
違う方法考えようかしら」


「大丈夫。そこまで酷いことにはならない様に口添えしたらいいんじゃないか?
本当に偽物売ってる訳じゃないんだから何とかなるだろ?」

「そうよね、せいぜい爵位返上領地没収くらいで」

「それも貴族にとっちゃ地獄だろうがな」


 トマスが王宮に参内している間に、アナベルが作っておいた夕食を食べることにした。

「今回のリーフプレートも大好評だった。
少し大きすぎたかもって思ったんだが」

「あのくらいのサイズがないと、希望された図案は描けなかったと思うわ。
虫眼鏡を使わないとわからない天使の表情って私には無理だもの」


 そう言えば・・と言いながら、
「この間、この2年間で援助した額を計算してみたんだけど・・」

 アナベルが見せた、メモ用紙に描かれた数字を見てトマスがゲホゲホと咽せた。

「おっお前、もしかして売り上げのほとんどを辺境伯に送ってたのかよ?」

「そうかも、銀行にそれ程残ってないのは確かかしら。
でもね孤児院を建てたいとか、村人を助けたいとかって言われたら嫌ですとは言えないでしょう?」

「それが全部嘘じゃあ、アナベルがブチギレても仕方ないよな」


「コテンコテンのケチョンケチョンにしないと気が済まないわ」

 トマスが笑いながら、
「そのコテンとかケチョンってなんだよ」

「何となく? 雰囲気合ってないかしら?」


 トマスが顔をのけぞらせて大笑いした。

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