4 / 15
4.王都に戻ります
しおりを挟む
脱いだ制服をベッドの上に置き、館に来た時に来ていた着古したチュニックとマントを羽織った。
追い剥ぎに取られずに済んだお金は、いつも胴巻に入れてある。
そっと階段を降りようとすると、下からアンナが駆け上がって来た。
「あんた何考えてんの? 旦那様達が帰って来られて屋敷の中はてんてこ舞いなのに。
ミセス・パーカーに言われてあんたを連れ戻しに来たの。
早く戻んないとヤバいって」
「忙しい時にごめんなさい。でもこれ以上ここにはいられないの」
「何で? あんたが来てくれてすっごく助かったのに。文句言わずに何でもやってくれるからさ、もうちょっと頑張ろうよ」
「仕事教えてくれてありがとう。
理由は言えないけど、もし仕事が必要になったら王都の5丁目の交差点にあるケーキ屋さんでアニーに会いに来たって言って。
必ずまともな仕事を紹介するから」
「どう言うこと?」
「今は言えないの。ミセス・パーカーに叱られないうちに早く行って。
ケーキ屋さんの事は秘密にしてね」
アンナを急いで仕事に戻らせて、アナベルは屋敷を後にした。
一週間かけて王都の外れにある自宅に戻ったアナベルは、兄の工房を訪ねた。
「お帰り、疲れたろ? お茶でも淹れようか?」
「そうね、兄さんの顔見たらホッとして気が抜けちゃった」
アナベルがお湯を沸かしている間に、トマスが棚からクッキーを出してきた。
「甘いものが欲しそうな顔してるぞ」
アナベルはお茶の準備をしながら、辺境伯領で知った事を全て話した。
「巫山戯た野郎だな。で、これからどうするんだ?」
「弁護士のところに行って離婚を申し立てるわ。白い結婚だもの、離婚できるでしょ?」
「・・多分な。でも相手は高位貴族だからな、裁判所が元平民の訴えをどこまで聞いてくれるか」
「後ろ盾になってくれる高位貴族を見つけようと思うの」
「それは良い案だけど、下手したらその後ずっと利用されかねん。分かってるのか?」
「うん、相手はよくよく選ぶつもり。
辺境伯達はバレてないって思ってるはずだから、今のうちに準備をする。
この人は真面そうって思える貴族がいたら教えてね」
「真面な貴族を見つけるなんて、針の先にロープ通すより難しいぞ」
「そこよねぇ。辺境伯の地位に負けない位の地位を持ってて、磁器に執着してない人ねぁ」
「あり得なくね?」
「うん、あり得ない。でも探すしかないもの。二人ともゴテゴテの派手派手で王宮貴族より凄かったのよ。
あれが私たちの作品のお陰だと思ったら我慢できない」
「なら、こう言うのはどうだ?」
アナベルとトマスの密談は明け方まで続いた。
追い剥ぎに取られずに済んだお金は、いつも胴巻に入れてある。
そっと階段を降りようとすると、下からアンナが駆け上がって来た。
「あんた何考えてんの? 旦那様達が帰って来られて屋敷の中はてんてこ舞いなのに。
ミセス・パーカーに言われてあんたを連れ戻しに来たの。
早く戻んないとヤバいって」
「忙しい時にごめんなさい。でもこれ以上ここにはいられないの」
「何で? あんたが来てくれてすっごく助かったのに。文句言わずに何でもやってくれるからさ、もうちょっと頑張ろうよ」
「仕事教えてくれてありがとう。
理由は言えないけど、もし仕事が必要になったら王都の5丁目の交差点にあるケーキ屋さんでアニーに会いに来たって言って。
必ずまともな仕事を紹介するから」
「どう言うこと?」
「今は言えないの。ミセス・パーカーに叱られないうちに早く行って。
ケーキ屋さんの事は秘密にしてね」
アンナを急いで仕事に戻らせて、アナベルは屋敷を後にした。
一週間かけて王都の外れにある自宅に戻ったアナベルは、兄の工房を訪ねた。
「お帰り、疲れたろ? お茶でも淹れようか?」
「そうね、兄さんの顔見たらホッとして気が抜けちゃった」
アナベルがお湯を沸かしている間に、トマスが棚からクッキーを出してきた。
「甘いものが欲しそうな顔してるぞ」
アナベルはお茶の準備をしながら、辺境伯領で知った事を全て話した。
「巫山戯た野郎だな。で、これからどうするんだ?」
「弁護士のところに行って離婚を申し立てるわ。白い結婚だもの、離婚できるでしょ?」
「・・多分な。でも相手は高位貴族だからな、裁判所が元平民の訴えをどこまで聞いてくれるか」
「後ろ盾になってくれる高位貴族を見つけようと思うの」
「それは良い案だけど、下手したらその後ずっと利用されかねん。分かってるのか?」
「うん、相手はよくよく選ぶつもり。
辺境伯達はバレてないって思ってるはずだから、今のうちに準備をする。
この人は真面そうって思える貴族がいたら教えてね」
「真面な貴族を見つけるなんて、針の先にロープ通すより難しいぞ」
「そこよねぇ。辺境伯の地位に負けない位の地位を持ってて、磁器に執着してない人ねぁ」
「あり得なくね?」
「うん、あり得ない。でも探すしかないもの。二人ともゴテゴテの派手派手で王宮貴族より凄かったのよ。
あれが私たちの作品のお陰だと思ったら我慢できない」
「なら、こう言うのはどうだ?」
アナベルとトマスの密談は明け方まで続いた。
455
お気に入りに追加
5,338
あなたにおすすめの小説
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。
田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。
やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。
幼馴染に抱きつく義妹。
幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。
信じて待っていた私は裏切られた。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる