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99.笑顔と幸せを運んでくれるのは
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緊張して少し震えるわたくしの手を優しく包むお父様の手は大きくてとても力強く、わたくし達を守り続けてくれた愛情の深さを感じます。
「お父様、ありがとうございました」
「私が寂しくならないように時々帰っておいで」
パイプオルガンの奏でる荘厳な音楽が流れはじめ小さな籠を渡されたグレッグとチェイスがドアの方に向き直りました。
さっきまで大泣きしていたのが嘘のように真剣な顔をしているのはアレックスのお陰です。
『グレッグ達は花びらを撒くんだろ? 最高にかっこいいな』
『たいこうってなあに?』
『すげえかっこいいって事だな』
『しゅげえかっくいい⋯⋯』
『リリスが喜びそうだな』
サムズアップしたアレックスの前でスイッチが入ったグレッグとチェイスも真似をしました。
『リィがよろこむのしゅちらから、がんばる。チェイチュ、がんばるしゅるよ』
『うん』
両開きの扉が開かれ大勢の人が見守る中、フンスと気合いを入れたグレッグが盛大に花びらを撒きながら歩きはじめました。その横をトコトコと歩くチェイスは参加者に向けて花びらを投げつ⋯⋯撒きちらし満面の笑顔です。
その後ろをお父様にエスコートされて歩くわたくしは緊張していたことも忘れ笑いを堪えるので精一杯でした。
『リィ! たいへんなの、おぱながなくなったった』
張り切って盛大に撒きすぎたせいでしょう。バージンロードの途中で立ち止まり空になった籠をわたくしに見せたグレッグは半泣きです。
「グレッグ、籠を取り替えっこだよ~」
腰を屈めて参加者の中から顔を出したターニャのナイスプレーです。籠を取り替えたグレッグはまた張り切って歩きはじめまました。
「にぃ、あい!」
空になった籠をグレッグに押しつけたチェイスは意気揚々とノア様のところまで走って行き、ハイタッチを求めてから何故かトーマス司教様の隣に並びました。
参加者の笑みに見守られながらようやくノア様の元に辿り着きましたが、役目を終えて緊張が解けたグレッグも何故かトーマス司教様の横に並びはじめたのです。
隅の方から一生懸命『こっちにおいで』と手を振るハンナ達が見えますが、満面の笑みを浮かべたトーマス司教様に頭を撫でられたグレッグとチェイスは当然のようにその場に居座り⋯⋯司教様のよく通るお声が聞こえてきました。
「我らは喜びと共に今日のよき日を迎え、新しい家庭を作ることを望む二人を前にしました。
さて、厳粛な時を迎えるにあたりこの結婚に正当な理由をもって異議のある者は今ここで申し出なさい」
これは単なる形式ですから誰も手を挙げるはずはありません。
「は~い! いにってなあに?」
会場のあちこちから『可愛い』と言う声と共に小さな笑い声が聞こえてきました。
「異議というのはな、結婚はダメだと言う意味じゃのう」
「トーマス司教様! それは言っちゃダメだ!」
慌てたノア様が小声で抗議しましたが後の祭りです。
「⋯⋯いにちまつ! リィはおくのだいじなたからものでつから、てっとんはダメなの!」
「リィ、おっでぇ」
チェイスまで『おいで』と言って手を振りはじめました。
「あらあら」
「グレッグはリリスティアとノア様の結婚は反対か?」
「リィ、だいしゅきので、いっしょにいたいでつ」
「にぃ、ちぇも! リィ、ちゅう」
「そうかそうか、実を言うとワシもなぁ⋯⋯リリスと離れるのは寂しくてのお。独り身の方が会いに行きやす⋯⋯」
「グレッグとチェイスも一緒だって昨日話しただろ? ティアと一緒に俺のお家にお引越しするんだって。
宝物も全部運んだし秘密基地も作ったしな。
俺達はティア『ちゅきちゅきなまか』だろ?」
「うーん、ど~しようかなぁ、のあさますぐリィをつれてこうとつるかななあ」
「しないって⋯⋯いや、するかもだけど。でもほら、みんな一緒だから」
「ちかたないか、ちとりじめちないなら、ゆるちたげてもいいよ?」
「いーよぉ」
「残念じゃ、グレッグ達を丸め込んでしまうとは⋯⋯ノアにはしばらく遠方の仕事でも押しつけろと言うかの」
トーマス司教様の呟きが耳に入ったノア様が苦笑いを浮かべ、国王陛下と王太子殿下が顔を引き攣らせました。
「トーマス司教様まで⋯⋯やっとここまで漕ぎ着けたのに」
この結婚式の様子がかなり長い間社交界の話題になったのは言うまでもありません。
勇猛果敢な戦士で常に冷静な態度を崩さないフォルスト公爵が小さなライバル達を必死で説得する微笑ましい姿と、司教様からも異議が出そうになった事。
パーティーに参加するたびにノア様は『ちゅきちゅきなまか』と揶揄われていましたが、怪我の功名なのかドミラス侯爵一派が流した噂を信じていた方々もわたくし達の結婚を祝福してくださるようになりました。
今でも公爵家では二人が元気に走り回っています。
「リィ、おかえりなた~い! よいこでおるすばんちたのなからぁ、きょうはおぷろはなちにちてあげるねっていう~?」
「お父様、ありがとうございました」
「私が寂しくならないように時々帰っておいで」
パイプオルガンの奏でる荘厳な音楽が流れはじめ小さな籠を渡されたグレッグとチェイスがドアの方に向き直りました。
さっきまで大泣きしていたのが嘘のように真剣な顔をしているのはアレックスのお陰です。
『グレッグ達は花びらを撒くんだろ? 最高にかっこいいな』
『たいこうってなあに?』
『すげえかっこいいって事だな』
『しゅげえかっくいい⋯⋯』
『リリスが喜びそうだな』
サムズアップしたアレックスの前でスイッチが入ったグレッグとチェイスも真似をしました。
『リィがよろこむのしゅちらから、がんばる。チェイチュ、がんばるしゅるよ』
『うん』
両開きの扉が開かれ大勢の人が見守る中、フンスと気合いを入れたグレッグが盛大に花びらを撒きながら歩きはじめました。その横をトコトコと歩くチェイスは参加者に向けて花びらを投げつ⋯⋯撒きちらし満面の笑顔です。
その後ろをお父様にエスコートされて歩くわたくしは緊張していたことも忘れ笑いを堪えるので精一杯でした。
『リィ! たいへんなの、おぱながなくなったった』
張り切って盛大に撒きすぎたせいでしょう。バージンロードの途中で立ち止まり空になった籠をわたくしに見せたグレッグは半泣きです。
「グレッグ、籠を取り替えっこだよ~」
腰を屈めて参加者の中から顔を出したターニャのナイスプレーです。籠を取り替えたグレッグはまた張り切って歩きはじめまました。
「にぃ、あい!」
空になった籠をグレッグに押しつけたチェイスは意気揚々とノア様のところまで走って行き、ハイタッチを求めてから何故かトーマス司教様の隣に並びました。
参加者の笑みに見守られながらようやくノア様の元に辿り着きましたが、役目を終えて緊張が解けたグレッグも何故かトーマス司教様の横に並びはじめたのです。
隅の方から一生懸命『こっちにおいで』と手を振るハンナ達が見えますが、満面の笑みを浮かべたトーマス司教様に頭を撫でられたグレッグとチェイスは当然のようにその場に居座り⋯⋯司教様のよく通るお声が聞こえてきました。
「我らは喜びと共に今日のよき日を迎え、新しい家庭を作ることを望む二人を前にしました。
さて、厳粛な時を迎えるにあたりこの結婚に正当な理由をもって異議のある者は今ここで申し出なさい」
これは単なる形式ですから誰も手を挙げるはずはありません。
「は~い! いにってなあに?」
会場のあちこちから『可愛い』と言う声と共に小さな笑い声が聞こえてきました。
「異議というのはな、結婚はダメだと言う意味じゃのう」
「トーマス司教様! それは言っちゃダメだ!」
慌てたノア様が小声で抗議しましたが後の祭りです。
「⋯⋯いにちまつ! リィはおくのだいじなたからものでつから、てっとんはダメなの!」
「リィ、おっでぇ」
チェイスまで『おいで』と言って手を振りはじめました。
「あらあら」
「グレッグはリリスティアとノア様の結婚は反対か?」
「リィ、だいしゅきので、いっしょにいたいでつ」
「にぃ、ちぇも! リィ、ちゅう」
「そうかそうか、実を言うとワシもなぁ⋯⋯リリスと離れるのは寂しくてのお。独り身の方が会いに行きやす⋯⋯」
「グレッグとチェイスも一緒だって昨日話しただろ? ティアと一緒に俺のお家にお引越しするんだって。
宝物も全部運んだし秘密基地も作ったしな。
俺達はティア『ちゅきちゅきなまか』だろ?」
「うーん、ど~しようかなぁ、のあさますぐリィをつれてこうとつるかななあ」
「しないって⋯⋯いや、するかもだけど。でもほら、みんな一緒だから」
「ちかたないか、ちとりじめちないなら、ゆるちたげてもいいよ?」
「いーよぉ」
「残念じゃ、グレッグ達を丸め込んでしまうとは⋯⋯ノアにはしばらく遠方の仕事でも押しつけろと言うかの」
トーマス司教様の呟きが耳に入ったノア様が苦笑いを浮かべ、国王陛下と王太子殿下が顔を引き攣らせました。
「トーマス司教様まで⋯⋯やっとここまで漕ぎ着けたのに」
この結婚式の様子がかなり長い間社交界の話題になったのは言うまでもありません。
勇猛果敢な戦士で常に冷静な態度を崩さないフォルスト公爵が小さなライバル達を必死で説得する微笑ましい姿と、司教様からも異議が出そうになった事。
パーティーに参加するたびにノア様は『ちゅきちゅきなまか』と揶揄われていましたが、怪我の功名なのかドミラス侯爵一派が流した噂を信じていた方々もわたくし達の結婚を祝福してくださるようになりました。
今でも公爵家では二人が元気に走り回っています。
「リィ、おかえりなた~い! よいこでおるすばんちたのなからぁ、きょうはおぷろはなちにちてあげるねっていう~?」
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ありがとうございます。
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ありがとうございます。
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