【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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95.如実に現れる性格の違い

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 包みを開けるたびに目を見開き『ちゅごい』や『かっくいい』を連発するグレッグと次のプレゼントをグレッグの元に運ぼうと奮闘するチェイスに全員の目が潤んできました。

「にぃ、こえ」

「まっててね、いまこえをあててるかなね」

 グレッグの作業は遅々として進みませんが皆のんびりと待っています。

 何しろプレゼントを開けて驚いた後の作業がたくさんあるのです。

 ラッピングに使われていたリボンをたたみ包装に使われていた布や袋を何度も納得いくまでたたみ直して、誰からのプレゼントなのかを確認します。

「あいあとね、おくはぷででんと、うれちいでちゅから、いーこちてあげまちゅ」

 立ち上がりパタパタと小走りで近付き、嬉しそうにしゃがみ込んだ人の頭を丁寧に撫でてから頭を下げます。

「あいあとでちゅ、ぼうちちゅちでつもんね」



「こういうところにも性格が現れるんですね。チェイスならあっという間に分解してそうです」

 ノア様の仰る通りですね。グレッグが不器用なのではなく、彼の性格によるものです。

 ステファン様の性格はよく分かりませんが、研究好きで細かい作業の好きなグレッグを見ていると『やっぱり父親は別の人?』と思ってしまいます。

 元々産まれるまでの月数も怪しいですからね。調査ではステファン様とビビアンさんが付き合いはじめてからグレッグが産まれるまでの期間が少し短すぎるので、ほぼ黒確定のグレーゾーンなのです。



「わあ、おぱなのほんでちゅ!」

 ぼんやりと考え事をしていると今日一番のグレッグの嬌声が耳に飛び込んできました。誰のプレゼントかすぐに分かりました。

 表情筋に力を入れておられますが口元がニヤけておられますもの。

「のあたま、あいあとでつ、じいちゃといっちょのおぱななまかにちてあげまつ」

「リィの好き好き仲間は?」

「え~! そりはむいかなぁ、こいのらいばゆらからねえ」

 首を傾げたグレッグのドヤ顔はノア様の苦笑いと全員大爆笑を誘いました。

「グレッグ、ワシはお前を応援しておるからの。ライバルに負けるなよ?」

「ん? おちげのじいちゃ、おうえんなんで?」

「そりゃ、リリスをどこぞの馬の骨に取られ⋯⋯ゴホン! いや、気にせんでもええから、プレゼントを開けなさい」

 トーマス司教様の背中にブルス助祭様の手が添えられた途端言葉が途中で止まりました。もしかしてトーマス司教様はブルス助祭様の調教済みとか?

「リィ、うまのぽねってなあに?」

 まずいですね、ポヤポヤしておりましたらわたくしの方に流れ弾が飛んできてしまいました。

「プレゼントを開け終わったらもう一度聞いてみましょうね」

「うん、またまたいっぱいもんね。ふう、おくはきょう、いっぱいおちごとねえ」

 出てもいない額の汗を右手の甲で拭う仕草は間違いなくセルゲイ爺ちゃんの真似ですね。

「そ、そうだな。頑張ってくれ」

 笑いを堪えて口元をヒクヒクさせてしまった全員の代弁をお父様がして下さいました。



 わたくしのプレゼントの木箱は蓋が閉まらないほどになりました。帽子やハンカチや靴に少し大きめの服、グレッグが特に喜んだのは本や黒板とチョークでした。

「これはお絵描きにも使えるし字を覚える練習もできるんだ」

「おえかきちゅちのなから、うれちいでつ。なにをおもえるの?」

「それは後で教えてあげようね、リリスの名前が書けるようになればきっと喜ぶぞ?」

「リィよろこむの? おくおもえるでつ、おじたまちゅちでつ、あいあとね」

 お父様もかなりポイントを稼いだようですが、わたくしを利用したのは流石年の功ですね。

 どのプレゼントも喜んでいだふたりでしたが今は部屋中を逃げ回るグレッグをチェイスが追いかけ回しています。

 原因はトーマス司教様のプレゼントです。一度包みを開いた後、チェイスのキラキラ光る目を見たグレッグが急いで包み直し両手で抱えて走り出したのです。

「にぃ! やぁの!」

「こえはおくのなからね! チェチュにはあげれないかなね、おくだけのなから!」

「はっはっは! ワシのプレゼントがいちばんの人気じゃな!」

 ドヤ顔のトーマス司教様の喜びように、『なかま』宣言をされたノア様もようやく『ちゅち』と言われたお父様も苦笑いを浮かべておられました。

「その手がありましたか⋯⋯これは流石に勝てませんな」

「確かに⋯⋯アレは俺も欲しいです」

 ノア様が『今度俺も作って部屋に』などと戯言を言っておられますが、わたくしとしてはとても複雑です。

「トーマス司教様、一体いつの間にわたくしの絵姿など作られたのですか?」

 絵姿など描いていただいた覚えも頼まれた記憶もありませんのに、パッと見ただけですがかなり似ていたように思います。

「ワシだけの秘密じゃな。グレッグ、絵が傷んでしまうからこっちに持っておいで」

 トーマス司教様の言葉を聞いたグレッグが大慌てで戻ってきました。

「おちげのじいちゃ、たちゅててくだたい、おくのたかなもの、まもってくたたい」

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