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80.分かっていてもブチ切れる自信あります
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「なぜキャンベル辺境伯がお見えになられるのですか!?」
理由はわかっていてもつい言いたくなってしまいました。だって『今更』とか『勝手な』と思ってしまったのです。お父様に八つ当たりをしているだけだと分かっていても我慢できませんでした。
元はと言えばキャンベル辺境伯の弟ジャスパー様のご乱行がはじまりです。
将来を誓い結婚もしたナーシャ様がいながら不貞を繰り返し、あちこちに種をばら撒⋯⋯庶子を作ったジャスパー様が元凶です。
母親の方は何故ジャスパー様とお付き合いされたのかわかりませんからなんとも言えません。遊びだったのかお仕事だったのか、本気だったのかナーシャ様という存在をご存知だったのか⋯⋯。
それが良いとか悪いとかをわたくしに決める権利はありませんけれど、ジャスパー様だけは悪いと断定させていただいても構わないと思いますの。
そして、ジャスパー様に対してと同じくらいキャンベル辺境伯様にも腹が立っております。
仮にジャスパー様の行いを注意しておられたとしても、結局は野放しにしておられたわけですからね。ジャスパー様がどのような方だったのか存じ上げなくても、何人もの庶子を作りナーシャ様を傷つけた事があのような悲劇をもたらしたのは間違いありません。
チェイスを危険から守る為と言うのは理解していても、ドミラス侯爵とナーシャ様が捕まらなければ赤の他人のノア様に養育を任せようとしておられた方です。
他の母子は他国へ逃したと聞いていますが、それも責任逃れではないと言い切れるのでしょうか? 知り合いのいない他国でどんな暮らしをされているのか、そこまで責任をとっておられるのでしょうか?
そのような方にチェイスを会わせて幸せになれるのでしょうか?
「血の繋がりが間違いないのであれば会わせないわけにはいかないよ?」
「分かっておりますわ! 分かっておりますけれど納得いきませんの。今まで放置しておきながら手のひらを返したように会いにこられるなんて」
「だがね、キャンベル辺境伯が引き取りたいと言われればノア殿は手を引くだろうね。そうなったらあの子達はどうなる?」
分かっておりますとも。ノア様がグレッグとチェイスを引き取りたいと仰っておられたのは友人である辺境伯から頼まれたからです。
その頼みがなければノア様とあの子達には何のしがらみもない⋯⋯血の繋がった親族が引き取りたいと言えばわたくし達には何もできません。
わたくし達がするべき事はキャンベル辺境伯の機嫌を損ねず、仲の良い兄弟が離れ離れにならずに済むようお願いする事だけです。
グレッグとチェイスにとって一番大切な事を見失ってはいけない⋯⋯と頭では理解しております。
「チェイスは間違いなくジャスパー様の子供なのでしょうか?」
「キャンベル辺境伯の手紙には詳しく調査した結果ほぼ間違いないと書かれていたよ。あの当時ビビアンが相手をした中にチェイスと同じ特徴を持つ者はいなかったそうだし、ジャスパー殿がビビアンと何度も関係を持っていたのも間違いないそうだ」
良いことのはずなのに八方塞がりの気分です。
親族が判明しているのに血の繋がらないノア様が養育されるのは正しくはありませんし、いずれチェイスはキャンベル辺境伯の元に行く事になるらしい⋯⋯ノア様の元で養育されるのは一時的な措置だと知っておりました。
「血の繋がりがはっきりしていてグレッグとチェイスが一緒にいられるなら、キャンベル辺境伯が引き取られるのが一番ですものね。
ノア様のお話ではキャンベル辺境伯領の復興も進んでいるそうですし」
「ああ、私もあちこちからその話は聞いている。王太子殿下のテコ入れもあって予想以上の速さで開発が進められているそうだね」
「全てお父様にお任せしますわ。予定が決まられたら教えていただけますかしら?」
その日は外出することに致します。お会いした途端殴りかかってしまいそうですもの。お父様ならあの二人が幸せになれるようにキャンベル辺境伯と話してくださるのは間違いありません。
わたくしがそれをぶち壊してしまわないようにしなくては。
「当日はノア殿も来られるそうだし、キャンベル辺境伯はリリスに礼を言いたいと言っておられる」
「お礼を言っていただくような事は何もしておりませんから結構ですわ。それよりも大切なお話に水を差してしまう可能性がありますから、同席しないほうがいいと思います」
だって、ほんのカケラでもキャンベル辺境伯がジャスパー様の行動を許容しているような言動をされたり、グレッグの養育を『仕方ない』と思っておられるかもと感じただけでブチ切れる自信がありますの。
それから一週間後、ノア様とキャンベル辺境伯がお越しになられる日がやって来ました。
理由はわかっていてもつい言いたくなってしまいました。だって『今更』とか『勝手な』と思ってしまったのです。お父様に八つ当たりをしているだけだと分かっていても我慢できませんでした。
元はと言えばキャンベル辺境伯の弟ジャスパー様のご乱行がはじまりです。
将来を誓い結婚もしたナーシャ様がいながら不貞を繰り返し、あちこちに種をばら撒⋯⋯庶子を作ったジャスパー様が元凶です。
母親の方は何故ジャスパー様とお付き合いされたのかわかりませんからなんとも言えません。遊びだったのかお仕事だったのか、本気だったのかナーシャ様という存在をご存知だったのか⋯⋯。
それが良いとか悪いとかをわたくしに決める権利はありませんけれど、ジャスパー様だけは悪いと断定させていただいても構わないと思いますの。
そして、ジャスパー様に対してと同じくらいキャンベル辺境伯様にも腹が立っております。
仮にジャスパー様の行いを注意しておられたとしても、結局は野放しにしておられたわけですからね。ジャスパー様がどのような方だったのか存じ上げなくても、何人もの庶子を作りナーシャ様を傷つけた事があのような悲劇をもたらしたのは間違いありません。
チェイスを危険から守る為と言うのは理解していても、ドミラス侯爵とナーシャ様が捕まらなければ赤の他人のノア様に養育を任せようとしておられた方です。
他の母子は他国へ逃したと聞いていますが、それも責任逃れではないと言い切れるのでしょうか? 知り合いのいない他国でどんな暮らしをされているのか、そこまで責任をとっておられるのでしょうか?
そのような方にチェイスを会わせて幸せになれるのでしょうか?
「血の繋がりが間違いないのであれば会わせないわけにはいかないよ?」
「分かっておりますわ! 分かっておりますけれど納得いきませんの。今まで放置しておきながら手のひらを返したように会いにこられるなんて」
「だがね、キャンベル辺境伯が引き取りたいと言われればノア殿は手を引くだろうね。そうなったらあの子達はどうなる?」
分かっておりますとも。ノア様がグレッグとチェイスを引き取りたいと仰っておられたのは友人である辺境伯から頼まれたからです。
その頼みがなければノア様とあの子達には何のしがらみもない⋯⋯血の繋がった親族が引き取りたいと言えばわたくし達には何もできません。
わたくし達がするべき事はキャンベル辺境伯の機嫌を損ねず、仲の良い兄弟が離れ離れにならずに済むようお願いする事だけです。
グレッグとチェイスにとって一番大切な事を見失ってはいけない⋯⋯と頭では理解しております。
「チェイスは間違いなくジャスパー様の子供なのでしょうか?」
「キャンベル辺境伯の手紙には詳しく調査した結果ほぼ間違いないと書かれていたよ。あの当時ビビアンが相手をした中にチェイスと同じ特徴を持つ者はいなかったそうだし、ジャスパー殿がビビアンと何度も関係を持っていたのも間違いないそうだ」
良いことのはずなのに八方塞がりの気分です。
親族が判明しているのに血の繋がらないノア様が養育されるのは正しくはありませんし、いずれチェイスはキャンベル辺境伯の元に行く事になるらしい⋯⋯ノア様の元で養育されるのは一時的な措置だと知っておりました。
「血の繋がりがはっきりしていてグレッグとチェイスが一緒にいられるなら、キャンベル辺境伯が引き取られるのが一番ですものね。
ノア様のお話ではキャンベル辺境伯領の復興も進んでいるそうですし」
「ああ、私もあちこちからその話は聞いている。王太子殿下のテコ入れもあって予想以上の速さで開発が進められているそうだね」
「全てお父様にお任せしますわ。予定が決まられたら教えていただけますかしら?」
その日は外出することに致します。お会いした途端殴りかかってしまいそうですもの。お父様ならあの二人が幸せになれるようにキャンベル辺境伯と話してくださるのは間違いありません。
わたくしがそれをぶち壊してしまわないようにしなくては。
「当日はノア殿も来られるそうだし、キャンベル辺境伯はリリスに礼を言いたいと言っておられる」
「お礼を言っていただくような事は何もしておりませんから結構ですわ。それよりも大切なお話に水を差してしまう可能性がありますから、同席しないほうがいいと思います」
だって、ほんのカケラでもキャンベル辺境伯がジャスパー様の行動を許容しているような言動をされたり、グレッグの養育を『仕方ない』と思っておられるかもと感じただけでブチ切れる自信がありますの。
それから一週間後、ノア様とキャンベル辺境伯がお越しになられる日がやって来ました。
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