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78.熱烈なお出迎えで発覚したのは⋯⋯
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「リィ、かっくいいしゅち?」
「そうね、グレッグのエスコートはとてもかっこいいから好きよ?」
ジロリとノア様を睨んだ後でドヤ顔になったグレッグが大きく頷きました。
「かっくいい、しゅる!」
作戦は成功したのですが、足にチェイスがしがみついているので残念なことにグレッグを下せません。
「チェイス、ノア様に宝物をお見せしたらどうかな?」
「んん?」
ドレスに顔をゴシゴシと擦り付けていたチェイスがわたくしを見上げました。予想通り泥汚れを綺麗にできて満足そうです。
「チェイスの宝物って何だろう? これか?」
わたくしの足元に転がっていた塊をノア様が指差すと、チェイスが首を伸ばして覗き込みました。
「ちぇえの!」
チェイスは塊にパッと飛びついて得意そうにノア様に見せびらかしました。
「ん? これは⋯⋯何かの球根かな?」
「チェチュ、ちゅこっぷ、ちゅきの」
グレッグがわたくしに抱きついたままでノア様に説明しはじめたのでようやくグレッグを下ろすことができました。
「チェチュ、いみちゅ、みちゅけるのちゅきの」
「秘密を見つける⋯⋯のが好き? それは楽しそうだな」
うんうんと大きく首を振るグレッグはお話が伝わって嬉しそうです。
「チェイスはスコップをセルゲイ爺ちゃんに貰ってからトレジャーハンターを目指していますの」
「それは凄いな。で、今日の発見はこれなんだね」
「ちぇの、ね~」
大好きなお兄ちゃんに同意を求めるチェイスの頭を撫でるグレッグ。
「チェチュ、い~こ、い~こね」
「あい!」
真似をしてグレッグの頭を撫でようとするチェイスの手はまだかなり泥だらけですが、優しいお兄ちゃんは気にせず少し背を屈めて撫でさせています。
眼福です。昨日までの疲れが吹っ飛ぶ瞬間です。小さな天使を労るちょっぴり大きな天使ですから。
お風呂に入って泥だらけの頭をメイサに洗われる時突然思い出すのがまた面白いんです。
これはここ最近、我が家のルーティンに組み込まれてます、はい。
『いやぁぁぁ! チェチュのばかぁぁぁ!』
『にぃ、めっ!』
胸を張って歩くグレッグのエスコート⋯⋯手を繋ぎ玄関に向かうと思いっきり爆笑しているお父様がおられました。
「これはまた熱烈なお出迎えがあったみたいだね。ノア殿が耐えきれなくなる前に着替えておいで」
チラリと後ろを振り返ると右手をチェイスと繋ぎ左手で口を押さえているノア様が見つめていたのは⋯⋯ドレスの膝裏辺り。チェイスの可愛い手形がくっきりと残っていました。
膝の辺りはチェイスの顔拭きになり後ろにはクッキリとした手形がついたドレス姿です。今日に限って執拗に首筋や髪の匂いをクンクンしていたグレッグにかなりデロデロにされていますし⋯⋯ノア様がお父様と話しておられる間に大慌ててで着替えに走りました。
「今日はまた盛大なお出迎えでしたね~」
着替えを準備しているターニャが呑気に笑っています。
「せめてハンナかメイサがいてくれれば良かったのに」
「グレッグもチェイスも昨夜一晩頑張ってたんでお出迎えは自由にさせてあげようかと」
ターニャの仕業でした。
「じゃあ、そのドレスの洗濯はターニャに任せるわね」
「えーっ、それは勘弁してください!」
ふふっ、仕返し成功です。さて、居間に参りましょう。
チェイスはお風呂に連れて行かれたようで階段の下で待っていたのはグレッグひとりだけでした。
グレッグと手を繋いで居間に行くと真剣な顔でノア様とお父様が話し込んでおられました。
「グレッグはお風呂に入らなくても良いのかい?」
「うぅ、はい。チェチュ、ちたない、おくだいじゅーぶの」
グレッグはいまだにお風呂嫌いですがチェイスはお風呂が大好きです。もしかしたらと思いハンナに入れてもらいましたがグレッグはやっぱり泣き叫んでいました。
今は『お風呂入った後のグレッグはカッコいいね』と言えるチャンスを狙っているところです。
ノア様が立ち上がりソファの隣りをすすめてくださいましたがグレッグに無理矢理ひとり用の席に追いやられてしまいました。
膝の上にはちんまりと座ったグレッグがノア様に向かってまたもドヤ顔です。
ここ最近はノア様の事を『ライバル』で『なまか』だと言っていたグレッグなのですが、昨夜離れていたのが寂しかったのだろうと思い取り敢えずそのままでいることにしました。
所々言葉を濁しながら昨夜のパーティーの事を話し終えた頃のことです。
「もしお時間があれば昼食をしていかれませんか?」
「いえ、残念ですがこの後行かなくてはならないところがありまして。次回の楽しみにさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「だめの! のあたま、ちらいのだからダメの!」
「グレッグ?」
「のあたま、だめのなからね!」
くるりとわたくしの方を向いて抱きついたグレッグが顔だけをノア様に向けて完全に威嚇しています。
「もう、きたらめなのなから、あかった?」
「⋯⋯グレッグ、どうして嫌いになったのかちゃんと話さないとノア様には伝わらないよ」
ショックを受けて中腰のまま固まったノア様と混乱するわたくしでしたが冷静なお父様の声で我に返りました。
「⋯⋯くんくんちたもん、のあたまのない、リィはおくのもん」
「ぷぷっ、これは聞き捨てなりませんな。交際については本人同士で決めれば良いと申しましたが、節度は守って頂かなくては。えー、グレッグは私の代わりに心配してくれたのかもしれませんなぁ」
「え?」「あの?」
「くんくんちたの! リィにおいちたの、めなの!」
「あ! いや、それはだね。参ったな⋯⋯グレッグ、違うんだ。それはその」
「のあたま、ちらい、リィはおくの! なまかないかなね」
グレッグからの離別宣言?
「そうね、グレッグのエスコートはとてもかっこいいから好きよ?」
ジロリとノア様を睨んだ後でドヤ顔になったグレッグが大きく頷きました。
「かっくいい、しゅる!」
作戦は成功したのですが、足にチェイスがしがみついているので残念なことにグレッグを下せません。
「チェイス、ノア様に宝物をお見せしたらどうかな?」
「んん?」
ドレスに顔をゴシゴシと擦り付けていたチェイスがわたくしを見上げました。予想通り泥汚れを綺麗にできて満足そうです。
「チェイスの宝物って何だろう? これか?」
わたくしの足元に転がっていた塊をノア様が指差すと、チェイスが首を伸ばして覗き込みました。
「ちぇえの!」
チェイスは塊にパッと飛びついて得意そうにノア様に見せびらかしました。
「ん? これは⋯⋯何かの球根かな?」
「チェチュ、ちゅこっぷ、ちゅきの」
グレッグがわたくしに抱きついたままでノア様に説明しはじめたのでようやくグレッグを下ろすことができました。
「チェチュ、いみちゅ、みちゅけるのちゅきの」
「秘密を見つける⋯⋯のが好き? それは楽しそうだな」
うんうんと大きく首を振るグレッグはお話が伝わって嬉しそうです。
「チェイスはスコップをセルゲイ爺ちゃんに貰ってからトレジャーハンターを目指していますの」
「それは凄いな。で、今日の発見はこれなんだね」
「ちぇの、ね~」
大好きなお兄ちゃんに同意を求めるチェイスの頭を撫でるグレッグ。
「チェチュ、い~こ、い~こね」
「あい!」
真似をしてグレッグの頭を撫でようとするチェイスの手はまだかなり泥だらけですが、優しいお兄ちゃんは気にせず少し背を屈めて撫でさせています。
眼福です。昨日までの疲れが吹っ飛ぶ瞬間です。小さな天使を労るちょっぴり大きな天使ですから。
お風呂に入って泥だらけの頭をメイサに洗われる時突然思い出すのがまた面白いんです。
これはここ最近、我が家のルーティンに組み込まれてます、はい。
『いやぁぁぁ! チェチュのばかぁぁぁ!』
『にぃ、めっ!』
胸を張って歩くグレッグのエスコート⋯⋯手を繋ぎ玄関に向かうと思いっきり爆笑しているお父様がおられました。
「これはまた熱烈なお出迎えがあったみたいだね。ノア殿が耐えきれなくなる前に着替えておいで」
チラリと後ろを振り返ると右手をチェイスと繋ぎ左手で口を押さえているノア様が見つめていたのは⋯⋯ドレスの膝裏辺り。チェイスの可愛い手形がくっきりと残っていました。
膝の辺りはチェイスの顔拭きになり後ろにはクッキリとした手形がついたドレス姿です。今日に限って執拗に首筋や髪の匂いをクンクンしていたグレッグにかなりデロデロにされていますし⋯⋯ノア様がお父様と話しておられる間に大慌ててで着替えに走りました。
「今日はまた盛大なお出迎えでしたね~」
着替えを準備しているターニャが呑気に笑っています。
「せめてハンナかメイサがいてくれれば良かったのに」
「グレッグもチェイスも昨夜一晩頑張ってたんでお出迎えは自由にさせてあげようかと」
ターニャの仕業でした。
「じゃあ、そのドレスの洗濯はターニャに任せるわね」
「えーっ、それは勘弁してください!」
ふふっ、仕返し成功です。さて、居間に参りましょう。
チェイスはお風呂に連れて行かれたようで階段の下で待っていたのはグレッグひとりだけでした。
グレッグと手を繋いで居間に行くと真剣な顔でノア様とお父様が話し込んでおられました。
「グレッグはお風呂に入らなくても良いのかい?」
「うぅ、はい。チェチュ、ちたない、おくだいじゅーぶの」
グレッグはいまだにお風呂嫌いですがチェイスはお風呂が大好きです。もしかしたらと思いハンナに入れてもらいましたがグレッグはやっぱり泣き叫んでいました。
今は『お風呂入った後のグレッグはカッコいいね』と言えるチャンスを狙っているところです。
ノア様が立ち上がりソファの隣りをすすめてくださいましたがグレッグに無理矢理ひとり用の席に追いやられてしまいました。
膝の上にはちんまりと座ったグレッグがノア様に向かってまたもドヤ顔です。
ここ最近はノア様の事を『ライバル』で『なまか』だと言っていたグレッグなのですが、昨夜離れていたのが寂しかったのだろうと思い取り敢えずそのままでいることにしました。
所々言葉を濁しながら昨夜のパーティーの事を話し終えた頃のことです。
「もしお時間があれば昼食をしていかれませんか?」
「いえ、残念ですがこの後行かなくてはならないところがありまして。次回の楽しみにさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「だめの! のあたま、ちらいのだからダメの!」
「グレッグ?」
「のあたま、だめのなからね!」
くるりとわたくしの方を向いて抱きついたグレッグが顔だけをノア様に向けて完全に威嚇しています。
「もう、きたらめなのなから、あかった?」
「⋯⋯グレッグ、どうして嫌いになったのかちゃんと話さないとノア様には伝わらないよ」
ショックを受けて中腰のまま固まったノア様と混乱するわたくしでしたが冷静なお父様の声で我に返りました。
「⋯⋯くんくんちたもん、のあたまのない、リィはおくのもん」
「ぷぷっ、これは聞き捨てなりませんな。交際については本人同士で決めれば良いと申しましたが、節度は守って頂かなくては。えー、グレッグは私の代わりに心配してくれたのかもしれませんなぁ」
「え?」「あの?」
「くんくんちたの! リィにおいちたの、めなの!」
「あ! いや、それはだね。参ったな⋯⋯グレッグ、違うんだ。それはその」
「のあたま、ちらい、リィはおくの! なまかないかなね」
グレッグからの離別宣言?
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