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76.締めはやっぱり王子様が?
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「そ、それでは⋯⋯それでは間に合わんのだ! あ、いや」
思わず言葉が口について出たらしくドミラス侯爵が慌てて横を向きわざとらしい咳をして場を離れようとしました。
「慌てなくともナーシャ殿もドミラス卿の手の者も子供達に近づけん。フォレスト公爵家及びラングローズ子爵家の私兵と友軍が子供達を守っているのは知っているだろう?」
「何のことだかわしには⋯⋯」
「ドミラス卿とナーシャ殿の近辺で不審死した母子が複数見つかっている。その子供達には共通の特徴があり、犯行の手口などから同一犯であると判明している」
「⋯⋯それがどうした? わしには何のことかさっぱり分からん。用事を思い出したのでわしは失礼する」
「先日証拠が見つかったんだが、ドミラス卿は興味がなさそうだな」
証拠が見つかっていたなんて初めて知りましたが、それならチェイス達の安全が保障される日も近いはずです。
子供達を連れて街へお買い物にも行けそうですし、孤児院の子供達と鬼ごっこやかくれんぼができるかも。
「証拠などあるわけが⋯⋯いや、それは良かったですなあ。母子殺害など非道なこ⋯⋯」
「非道か? 母子殺害はナーシャ殿が修道院に送られた理由と同じ、その娘をいまだに甘やかしているドミラス卿の言葉とは思えんな」
「馬鹿なことを言うな! 可哀想なナーシャは嫉妬に狂った夫の愛人に殺されかけ、正当防衛がみとめられておる。それなのに心優しいナーシャは修道院へ行って何年も辛い生活に耐えておるのだ!」
「僅か3歳の子供が母親と共に殺されたのに正当防衛と言う実に不思議な判決で、その時の裁判官はのちに不審死している⋯⋯実に怪しげな判決じゃないか。
裁判官殺害容疑の犯人⋯⋯共犯者だが見つけて拘束していてね、主犯の貴族に殺されかけ運良く助かったと供述している。
彼はドミラス侯爵の指示だと訴えているが、何か異論があればお聞きしましょうかな?」
「犯罪者の言うことなど誰が信じるものか! わしは由緒正しい侯爵家の当主だぞ、犯罪を犯した平民の言葉など馬鹿馬鹿しくて聞いておられん!」
「王太子殿下、ドミラス侯爵の自供があったと言うことでよろしいですか?」
興味津々で耳をそばだてていた貴族の間に道ができて王太子殿下が大股で歩いてこられました。
「いいんじゃないかな? 私もはっきりと自白するのを聞いたからね」
「ロイド王太子殿下! 自白とは一体何のことでしょうか!? わしは何も言っておりません」
「貴様は『犯罪を犯した平民の言葉など』とはっきりと口にしたな。捕縛した共犯者が平民だなど誰も言ってはいないにも関わらずだ。主犯でないならなぜそれを知っていた?」
「そそ、それは平民じゃないかと推測した次第でして。そのようなことをしでかすのは食い詰めた平民に違いないと」
「そいつはな貴様とナーシャの間で交わされた手紙を持っていた。処分したと信じていたのだろうが筆跡の鑑定も終わっていると報告が上がっている」
王太子殿下がご存じだとは思っておりませんでしたが、先ほどの『潰してかまわん』と言うお言葉の意味がようやくわかりました。
「先程、ラングローズ子爵家の近くで貴様に雇われた者が拘束され、ステファン・マーベルの子供を誘拐するよう指示されたと自白している」
「⋯嵌められた。そう、わしは嵌められたんだ! そこにいる女と、その女に誑かされたフォルストに嵌められたのです! わしはあの子供達を保護しようとしただけですぞ!」
「殺された母子は貴様の指示で監禁されナーシャに殺された。遺体を放置したのは貴様の指示だと判明している」
「嘘だ! あの母親は罰を受けただけ⋯⋯不貞の罰を受けたんだ。子供は生まれた事自体が罪だった。わしらは何もしておりません! 誰かが粛清してくれた⋯⋯殿下、どうかわしの話を聞いてくだされ!」
王太子殿下の足元に跪いたドミラス侯爵が胸の前で両手を握りしめて懇願しました。
その様子を見たチーム・ドミラスは侯爵を見捨てたのでしょう。関わりになりたくないとばかりに少しずつ後退りしています。
「見苦しい! 貴様らの罪には同情の余地もない。たとえ不貞に腹を立てようとも命を奪う事が許されるわけがなかろうが!」
王太子殿下が右手を挙げると衛兵がドミラス侯爵を拘束し連行していきました。
「ドミラスに従っていた者達も連れて行け! 事実を知っていたのならば共犯者と看做す。隠し立てすれば一族郎党で罪を贖う事になると心得よ!」
今にも逃げだそうとしていた方達は硬直し、顔を引き攣らせていた夫人や令嬢は気を失いその場で倒れ伏しました。
真面に歩ける方はおらず衛兵に抱えられての退場でした。
「ドミラス以外の者達が見苦しく騒ぎ立てず連行されたのは驚きだな。さて、余興は終わった。みな、気分を変えて最後まで楽しんでくれ!」
いつの間にか止まっていた音楽が再び響きはじめました。
思わず言葉が口について出たらしくドミラス侯爵が慌てて横を向きわざとらしい咳をして場を離れようとしました。
「慌てなくともナーシャ殿もドミラス卿の手の者も子供達に近づけん。フォレスト公爵家及びラングローズ子爵家の私兵と友軍が子供達を守っているのは知っているだろう?」
「何のことだかわしには⋯⋯」
「ドミラス卿とナーシャ殿の近辺で不審死した母子が複数見つかっている。その子供達には共通の特徴があり、犯行の手口などから同一犯であると判明している」
「⋯⋯それがどうした? わしには何のことかさっぱり分からん。用事を思い出したのでわしは失礼する」
「先日証拠が見つかったんだが、ドミラス卿は興味がなさそうだな」
証拠が見つかっていたなんて初めて知りましたが、それならチェイス達の安全が保障される日も近いはずです。
子供達を連れて街へお買い物にも行けそうですし、孤児院の子供達と鬼ごっこやかくれんぼができるかも。
「証拠などあるわけが⋯⋯いや、それは良かったですなあ。母子殺害など非道なこ⋯⋯」
「非道か? 母子殺害はナーシャ殿が修道院に送られた理由と同じ、その娘をいまだに甘やかしているドミラス卿の言葉とは思えんな」
「馬鹿なことを言うな! 可哀想なナーシャは嫉妬に狂った夫の愛人に殺されかけ、正当防衛がみとめられておる。それなのに心優しいナーシャは修道院へ行って何年も辛い生活に耐えておるのだ!」
「僅か3歳の子供が母親と共に殺されたのに正当防衛と言う実に不思議な判決で、その時の裁判官はのちに不審死している⋯⋯実に怪しげな判決じゃないか。
裁判官殺害容疑の犯人⋯⋯共犯者だが見つけて拘束していてね、主犯の貴族に殺されかけ運良く助かったと供述している。
彼はドミラス侯爵の指示だと訴えているが、何か異論があればお聞きしましょうかな?」
「犯罪者の言うことなど誰が信じるものか! わしは由緒正しい侯爵家の当主だぞ、犯罪を犯した平民の言葉など馬鹿馬鹿しくて聞いておられん!」
「王太子殿下、ドミラス侯爵の自供があったと言うことでよろしいですか?」
興味津々で耳をそばだてていた貴族の間に道ができて王太子殿下が大股で歩いてこられました。
「いいんじゃないかな? 私もはっきりと自白するのを聞いたからね」
「ロイド王太子殿下! 自白とは一体何のことでしょうか!? わしは何も言っておりません」
「貴様は『犯罪を犯した平民の言葉など』とはっきりと口にしたな。捕縛した共犯者が平民だなど誰も言ってはいないにも関わらずだ。主犯でないならなぜそれを知っていた?」
「そそ、それは平民じゃないかと推測した次第でして。そのようなことをしでかすのは食い詰めた平民に違いないと」
「そいつはな貴様とナーシャの間で交わされた手紙を持っていた。処分したと信じていたのだろうが筆跡の鑑定も終わっていると報告が上がっている」
王太子殿下がご存じだとは思っておりませんでしたが、先ほどの『潰してかまわん』と言うお言葉の意味がようやくわかりました。
「先程、ラングローズ子爵家の近くで貴様に雇われた者が拘束され、ステファン・マーベルの子供を誘拐するよう指示されたと自白している」
「⋯嵌められた。そう、わしは嵌められたんだ! そこにいる女と、その女に誑かされたフォルストに嵌められたのです! わしはあの子供達を保護しようとしただけですぞ!」
「殺された母子は貴様の指示で監禁されナーシャに殺された。遺体を放置したのは貴様の指示だと判明している」
「嘘だ! あの母親は罰を受けただけ⋯⋯不貞の罰を受けたんだ。子供は生まれた事自体が罪だった。わしらは何もしておりません! 誰かが粛清してくれた⋯⋯殿下、どうかわしの話を聞いてくだされ!」
王太子殿下の足元に跪いたドミラス侯爵が胸の前で両手を握りしめて懇願しました。
その様子を見たチーム・ドミラスは侯爵を見捨てたのでしょう。関わりになりたくないとばかりに少しずつ後退りしています。
「見苦しい! 貴様らの罪には同情の余地もない。たとえ不貞に腹を立てようとも命を奪う事が許されるわけがなかろうが!」
王太子殿下が右手を挙げると衛兵がドミラス侯爵を拘束し連行していきました。
「ドミラスに従っていた者達も連れて行け! 事実を知っていたのならば共犯者と看做す。隠し立てすれば一族郎党で罪を贖う事になると心得よ!」
今にも逃げだそうとしていた方達は硬直し、顔を引き攣らせていた夫人や令嬢は気を失いその場で倒れ伏しました。
真面に歩ける方はおらず衛兵に抱えられての退場でした。
「ドミラス以外の者達が見苦しく騒ぎ立てず連行されたのは驚きだな。さて、余興は終わった。みな、気分を変えて最後まで楽しんでくれ!」
いつの間にか止まっていた音楽が再び響きはじめました。
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