【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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61.ラングローズ子爵VSノア・フォレスト公爵

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「では、フォレスト卿は子供達2人ではなくチェイスの庇護を予定しておられるのですな」

「危険があるのはチェイスだけですが、グレッグとチェイスを引き離すつもりはありません。父親違いと言っても一緒に暮らしている兄弟ですから本人達が望む間は一緒に暮らすべきだと思っていますし、ある程度の年齢になるまでは異父兄弟だと知らせないつもりでいます」

 グレッグとチェイスの将来について⋯⋯ターニャ達と同じように考えられない理由が増えました。

 この家に来た後、望まれて養子になり巣立った者や仕事を見つけて新しい生活をはじめた者が何人もいますし、ターニャのようにそのままこの家に仕えている者もいます。

 本人が何を望むか⋯⋯我が家はそれを自分で選ぶまでの仮の宿です。

 子供達が可愛いからと言ってわたくしのものにしたりはしませんよ? どんなに可愛くても情が湧いても彼等はペットではないと心得ていますから。

 グレッグとチェイスに関してはノア様が引き取りたいと仰られた時から、我が家は『最短の仮の宿』になるだろうと思っていました。ノア様がグレッグの父親の可能性があると思っていましたし、ノア様のような方が後見や養子にしてくださるなら子供達の将来は安心だとも思っておりました。

 子供達が生活に慣れるまではわたくしをお世話係として雇っていただけたらいいなあと欲張ってもいましたけれど。



 それが、ここにきてまさかの展開です。チェイスの身が危険で強大な庇護が必要だなんて。

 わたくしの知る限りでもノア様が一番だと思います。それかトーマス司教様ですね。

 トーマス司教様は子供達を大層気に入っておられますし、陛下の前でも枢機卿の前でも態度を変えない司教様に心酔している武闘派集団⋯⋯聖騎士を大勢抱えておられますから、力のある侯爵家と言えど手は出せないと思います。

 直ぐに教会の秘薬を持ち出そうとされますから、この秘密がバレてしまったらナージャ様達の方が危険かもしれませんが。

 あ、それをしたら問題解決とか? えーっと、そんな事は思いませんわ。今のは聞かなかった事に⋯⋯秘薬の話と同じくらいシークレットですね。



「となると引越しは早ければ早いほど良さそうですが、子供達がリリスに一番懐いているのが問題ですな。ようやく慣れてきて笑顔が増えてきたあの子達がリリスと離れて引っ越すとなれば、以前のように怯え殻にこもってしまう可能性が高いでしょう」

 インプリンティング⋯⋯雛鳥の刷り込みとでも言えば良いのでしょうか。チェイスはまだマシですがグレッグは落ち着かなくなったり不安になったりするとわたくしの元から離れなくなります。

 周りに信用できる人が誰もいない暮らししか知らず生きてきて、初めて頼れたのがわたくしだったからでしょう。ハンナ達にも心を許していますが何かあるとグレッグはチェイスを連れてわたくしのところに来てしまいます。

「最短を狙うならあの子達の専属メイドとして連れて行かれるのがいいでしょう。
リリスを婚約者候補と考えておられるなら公爵家には行かせるわけには参りませんから、フォレスト卿にはリリスとは縁がなかったと思っていただきます」

 前公爵夫人がおられないのですからフォレスト公爵家に婚姻前に住めばふしだらな行為だと悪評が立ちます。子供達の為だと言っても誰も信用しないでしょう。

「リリスとは正式に雇用契約を結んでいただき、それ以外は一切関わらないとお約束いただかねばなりません」

「専属メイドですか⋯⋯確かにそれなら子供達は安心して引っ越しできると思いますが、それは考えていません。
欲張りだと分かっていますが、友との約束を守りたい気持ちと同様にティアを諦めたくもありません」

「では、危険のあるチェイスだけを公爵家に連れて行かれては?」

 グレッグは不安な事や気になる事があると必ずチェイスを連れてわたくしの所に来ます。『弟は自分が守る』と思っている気持ちの表れのようですし、今までもそうやってステファン様やビビアンさんから弟を守ってきたのでしょう。

 自分の事でさえ覚束ない年齢のグレッグに守られてきたチェイスは『お兄ちゃんが一番』だと思っているようで、元気一杯走り回っていても定期的にグレッグの居場所を確認しています。

「お父様、2人を離すのは可哀想ですわ。あの子達はお互いの存在があったから今まで頑張って来れたんだと思います。それなら⋯⋯」

「私も2人を引き離したくありません。2人の引っ越しまで出来る限り子供達に会いに来て少しでも私に慣れて貰うつもりです」

「忙しい公爵閣下に本当にそれが出来ますか? 小さな子供達は早い時間に寝てしまいますから、日中でなければ顔を合わすことなど出来ませんが?」

「家令と執事の協力も取り付けていますし、護衛やメイド達など受け入れ態勢は出来ています。どのくらいで子供達の気持ちを掴めるかは私の努力次第だと考えています」



 長い沈黙の後、溜息をついたお父様が口を開きました。

「ターニャ、子供達を連れてきてくれないか?」

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