【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

との

文字の大きさ
上 下
57 / 99

57.虫退治されていたようです

しおりを挟む
「フォレスト殿は当分ここには来れん。その間にのーんびりすればええからの」

 笑い顔がとてつもなく黒いです。

「な、なぜそれをトーマス司教様がご存知なのですか?」

「そりゃあ、リリスにつく虫には注意しとるからのう。あの坊主は辺境伯領とここを行ったり来たりしながら腹黒に尻を叩かれておる」

 腹黒⋯⋯コナー秘書官ですね。

「わしのリリスにちょっかいをかけようなぞ10年早いわ! フハハハ」

「そう言う時って百年早いとか言うんじゃないですか?」

 ターニャ、ナイスツッコミです。

「アホか、わしもリリスもそんなに長生きできんわい」

「いや~、トーマス司教様ならいけるかも」

「リリスが行き遅れてしまうじゃろうが」

 後10年経つと32歳ですから十分な行き遅れです。今でもそうですけどね、気にしてませんけど。

 グレッグ達を連れてラングローズ家に戻って来てもう2ヶ月経ちました。今の状況が幸せすぎるだけに今後が気になります。

 フォレスト公爵様と子供達の関係をトーマス司教様ならご存知かも⋯⋯。



「リリス~、チェイスにごほんよんで~」

 グレッグチェイスの手をひいて部屋に飛び込んできました。

「あ、トーマスしゃま。こんにちは」

 ペコリと頭を下げたグレッグの横で逃げ出そうとしているチェイス。

 読めました。部屋で遊びたいグレッグは外に行きたいチェイスをわたくしに押し付けにきたのですね。今日はハンナがお休みしていますから、メイサ1人では手が回りませんからね。

 他の使用人に頼むより早いと思ったのかも。

「グレッグはあっという間に話が上手になったのう」

「おにいちゃんだもん」

「その通りじゃな、リリスが考え込むのも当然じゃな」

 そうなのです。この2人が今後どう生きるのか⋯⋯自分では決められませんから周りが決めなくてはなりません。

 平民として生きるのか貴族として生きるのかによって覚える事は変わります。細かく分けるなら平民・貴族の養子・低位貴族・高位貴族の4つでしょうか。

「グレッグは大きくなったら何になりたいんじゃ?」

「リリスとけっこんする!」

「で、仕事は?」

「じいちゃんとおはなちゅくる」

「セルゲイめ、グレッグを丸め込みよったな⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぐぬぬ⋯⋯し、仕方あるまい、坊主を呼ぶか⋯⋯いや、逆効果に⋯⋯うーん」

「トーマス司祭様~、もしかして邪魔してます?」


 ぎくっ!


「何のことかのう、わしにはち~ともわからん。さてさて、仕事が待っておるし~帰るとするかのう」

「ちょ~、怪しい」

 ターニャのツッコミを無視したトーマス司教様が帰っていかれました。

 多分、教会に。



 それから1週間後、大きな花束を抱えたフォレスト公爵様がお見えになられました。やはりお仕事がお忙しかったのでしょう、応接室のソファの対面に座られたフォレスト公爵様は少しお痩せになられていました。

「お久しぶりです、リリスティア」

「ようこそおいでくださいました、フォレスト公爵閣下」

「そろそろノアと呼んでいただけたら嬉しいです。そ、それと私にはティアと呼ぶ名誉をお与えくださいませんか?」

「何故ティアですの?」

「私だけの呼び名なので、ダメですか?」

「年齢によらない初々しい2人が真っ赤になって顔を見合わせてますねえ」

「なにぶん、初心者ですので」

「タ、ターニャ!⋯⋯えーっと⋯⋯では、わたくしはノア様とよ、呼ばせていただきますわ」

 ターニャと一緒になってニヤついていたコナー氏に小突かれたノア様が慌てて花束を差し出してこられました。

「ありがとうございます! あ、そうでした。これをリリスティア⋯⋯ティアに」

「とても綺麗ですね、ありがとうございます。お父様はもうすぐ来られると思うのですが、子供達はまだ後の方が良いでしょうか?」

 今日の本題は子供のことですから2人がいない方が話しやすい気がします。花束をターニャに渡そうと振り向くと何故かコナー氏と目配せしあっていました。いつの間に仲良くなったのでしょう?

「あ、はい。その方が助かります。グレッグとチェイスに会うのが楽しみですが、もう忘れられているかもしれませんね」

「チェイスはまだ小さいので忘れているでしょうが、グレッグはとても頭の良い子なので覚えているかもしれませんわ」




 ほぼ毎日ノア様から届いた手紙で随分と為人は分かったように思います。昔骨を喉に詰まらせてから魚が少し苦手で、果物は丸齧りがお好きだとか。

 寝る前に必ず本を読むけれど、そのせいで度々眠れなくなってはコナー氏に叱られるとか。

 公爵家の自室から見える王宮が嫌で部屋を変えたこと、いつか犬を飼いたいと思っていること。

 このような方と一緒ならグレッグとチェイスは幸せになりそうだと確信しています。

 話の流れによっては子供達が公爵家に落ち着くまでメイドか子供達の専用侍女として雇っていただけるか聞いてみようと思っていましたが⋯⋯。



「お待たせして申し訳ありません」

 お父様が来られました。

しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...