【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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56.ピッ! ピピピー

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 子爵家に来て半月経ちました。日に日に言葉もしっかりして来たグレッグにはお手伝いブームがきていて、使用人達の目もハートになっています。

 チェイスの方は『家中丸ごと鬼ごっこ』でハンナやメイサを泣かせています。

「セルゲイ爺ちゃ~ん、助けてください。どんどんチェイス様の隠れ方が巧妙になって来て、もうどうすれば良いのか」

「ほっほっ、グレッグに頼めばよかろうに」

 ハンナの相談に対してセルゲイ爺ちゃんが教えた秘策は⋯⋯。


「グレッグ様、よろしくお願いします!!」

「うん、チェイスそーさく⋯⋯ピッ!」

 お手伝いモードに入ったグレッグが人差し指を頭の上に立てて真剣な顔になりました。

「ピッ、ピピピー! こっち、ちがう⋯⋯あっちにいるぅ」

 不思議ですがこれで見つかるのです。兄弟の絆でもないでしょうから謎ですが、今日のチェイスは居間のカーテンの陰でお昼寝をしていました。


 お忙しいフォレスト公爵様からは毎回一輪の花を添えたお手紙が届いています。日常の些細なことや前回の手紙への返事などがほとんどでまるで業務連絡のようですが、最後に必ず⋯⋯。

『リリスティアに会いたい』

と書かれているのが面映いです。





 すっかり忘れておりましたがマーベル伯爵家の現況を少しばかり。

 ステファン様は軍法会議で刑が確定しました。一兵卒として辺境地へ従軍し戦争で荒れ果てた領地の復興支援を言い渡されました。期限は15年で長期休暇なし、給与は全て子供達とわたくしへの慰謝料になるそうです。

 中尉から一番下の位の兵隊に格下げです。剣を鍬に持ち替えてボロボロになるまで働かされているそうです。その上遊ぶお金もありませんから毎日が『ざまぁ』ですわ。

 マーベル伯爵は公文書偽造から芋蔓式に出てきた犯罪でいまだに牢に入れられています。

 貴族牢ではなく日の当たらない地下牢で日に2回のわずかな食事のみ、すべての犯罪が公になるのと精神を病むののどちらが早いかだそうです。

 ソラリス侯爵も無事逮捕されてマーベル伯爵と同じように地下牢に収監され、人身売買のルートは潰され関わっていた奴隷商達も逮捕されています。

 2人の取り調べには拷問官も張り切って参加しているそうですが、人身売買ですから仕方ないですね。財産は凍結、領地や爵位も売却されラングローズ家への支払いと売られてしまった方達の救済に充てられます。

 結構溜め込んでおられたのでかなりの額があるそうです。

 売られてしまった方達は残っている資料から既に捜索がはじまっています。


 マーベル伯爵夫人は知っていたたけだと言い張っていたそうですが、伯爵の犯行を知っていた時点で『犯罪の幇助』なのでギルティです。

 見逃すという行為は『不作為による幇助』と言うそうです。離縁・実家からの離籍で平民となり、犯罪者の烙印を押されたのち鉱山の飯場で給食および宿泊施設の掃除をさせられることが決まりました。

 給与? 全額支払いに回されます。

 ビビアンは『幼児虐待と犯罪の幇助と不敬罪』です。犯罪者の烙印を押されたのち北の開拓地にある娼館に送られました。極寒の地ですが一日でも長く働いて子供達への慰謝料を稼いでもらうようです。

 義妹のアリシア様は公文書偽造に対する『犯罪の幇助』のみでしたが、フォレスト公爵家からの訴えで『不敬罪』が追加されましたので予想より重罪になりました。犯罪者の烙印を押されたのちビビアンと同じ場所に送られたのが意味深です。


 マーベル伯爵家執事のエマーソンも『犯罪の幇助』で国外追放となりました。

 蓄えが謝罪文と共に送られてきたので、大丈夫なのか心配になってしまいました。マーベル伯爵家ラブではありましたが、わたくしや使用人達にとっては無茶を言わない良い執事だったので⋯⋯。

 その他の使用人たちはラングローズ家に顔を出してくれましたが、そのほとんどの人は我が家からの紹介状を受け取らず別の勤め先を見つけたようです。

 困ったことがあったら声をかけるようにと言いましたら、なぜか泣かれてしまいました。



 後は子供達の今後でしょう。マーベル伯爵家の遠戚は全員が子供達の引き取りを拒否しましたから、ある意味自由と言いますか安全になりました。

 表情も豊かになり笑い声や元気な大声も聞かれるようになりました。兄弟喧嘩で泣いたり我儘を言ったり、好き嫌いも出てきましたからもう安心です。

 年齢相応の話ぶりやマナーも身につきはじめ、グレッグの『なぜなぜ』と『だって』にハンナやメイサがタジタジです。

 あとはフォレスト公爵様の真意が分かればと思いつつ連絡を待っているのです。

 公爵家の責務・戦争の事後処理・マーベル伯爵家関連のあれこれ⋯⋯寝る間もないほどの忙しさだと教えてくれたのは意外な方でした。

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