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55.超有能魔法使い
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チェイスがお昼寝から起きて来たので2人に軽食を準備してもらいました。
グレッグにはもちろんクロワッサンのサンドイッチ。野菜好きのグレッグはきゅうりとチーズのサンドイッチを美味しそうに食べています。
チェイスにはあまり甘くないパンケーキですが、ハンナの目を盗んでハムを手掴みで食べご満悦です。フォークの使い方を教えるのは何歳くらいが良いのかマーサなら知っているでしょうか?
デザートのプリンは最強のようです。
「ぷにん、おいしいね」
「ぃねー」
グレッグが上手に『し』が言えました。目に見えて進化していく子供の成長は目が離せません。
グレッグはまだスプーンを下から握りしめらように持つ下手持ちです。いずれ大人のような持ち方に変えていく必要はありますけれど、このままが可愛いとつい思ってしまいます。
大人の持ち方は『バキューン持ち』だと教えられる日も近そうです。
チェイスの上手持ちはもう堪りません。溢さないように真剣な顔も見応えたっぷりで。
料理長のサントスのプリン⋯⋯わたくしの分は? ターニャ、笑わないで下さい。サントスのプリンは別腹ですもの。
「お庭にブランコがあるんだけど行ってみない?」
「おそと、やだ、ちらーい」
「だー」
お腹いっぱいになった子供達を庭に誘いましたが、部屋から出るのを嫌がります。
「お花もいっぱい咲いてるし」
「リィ、いっちょがいいの」
マーベル伯爵家での記憶のせいでしょうか? 部屋の奥で遊ぼうとしますし、ドアが開くたびに怯えます。
「ブランコってゆらゆらして楽しいんですよね~」
「そう、2人でよく遊んだわね」
「大きく漕ぎすぎてセルゲイ爺ちゃんが飛んできたり」
「後ろから押してもらうのが好きだったわ」
はじめは背中を向けていたグレッグがターニャとわたくしの話に誘われてちょこちょこと近付いて来ました。
「ぶらんこ、たのちい?」
「すご~く楽しいわ。庭のお花もいい匂いだし」
「⋯⋯リィ、おはなちゅき?」
「勿論よ、グレッグやチェイスはどうかしら?」
「⋯⋯わかんない」
首を傾げて悩むグレッグを見たチェイスが横で真似をしています。お兄ちゃん大好きのチェイスと手を繋いだグレッグが小さく頷きました。
「おにわ、いく!」
庭に出ると夏の花が風にそよぎ、少し汗ばんだ肌に心地よく感じられます。
「セルゲイ爺ちゃん!!」
ベンチに腰掛けて新聞を読んでいるセルゲイ爺ちゃんを目ざとく見つけたターニャが叫びました。
「爺ちゃん、ズル休み?」
「アホか、ワシは休憩中じゃ」
毎朝届く新聞はお父様が読まれた後でセルゲイ爺ちゃんの元に届けられます。社会情勢やゴシップにも詳しい天才庭師なのです。
「お、久しぶりにちっこいのが増えたのう。ほれ、これをやろう」
日に焼けたシワだらけの大きな手に乗っているのは小さな木彫りの⋯⋯馬車? セルゲイ爺ちゃん、器用すぎです。
チェイスと手を繋いだままわたくしの後ろから顔を覗かせているグレッグは瞬きを忘れているようです。チェイスはそんなお兄ちゃんを見上げて首を傾げて⋯⋯。
「さーて、どうするかのう? ワシの孫にあげてもいいが⋯⋯取りに来るなら2人にあげてもええんじゃが⋯⋯さっきお前さんらが乗ったのとよう似とるぞ」
子供達は大人を怖がってますから初対面の方のそばには行け⋯⋯ました。
セルゲイ爺ちゃんの手の中を覗き込んで見上げたグレッグとチェイスの頭を撫で、小さな手の上に精巧に彫られた馬車が乗せられました。
「名前を教えてくれるかの?」
「ぐでっぐ、おとと、ちぇーす」
「⋯⋯ふむ、ちと難解じゃが⋯⋯グレッグと弟のチェイスかな?」
「うん、おとと、ちさい」
「確かに、グレッグより小さいのう。じゃが、利口そうなグレッグとすばしこそうなチェイスじゃな」
「りこお?」
「グレッグは頭がいいと言う意味じゃ」
会話が続いています! 流石セルゲイ爺ちゃんです。ここにわたくしが連れて来た人は全員セルゲイ爺ちゃんの虜になるのですから⋯⋯昔は『爺ちゃんは魔法使い』だと信じていましたの。
子供達はセルゲイ爺ちゃんに連れられて花壇の脇道を歩いていましたが、退屈したチェイスが脱走を企てました。
チェイスをひょいっとおんぶしたセルゲイ爺ちゃんとグレッグが何やら密談をはじめ、爺ちゃんが切った数本の花を持ったグレッグが走って来ました。
「リィ、あげゆ、こえはターニャ、こえはハンニャ、こえは⋯⋯メイタ。うれしい?」
初めて全員の名前を言いながら花をプレゼントしてくれたグレッグの耳が真っ赤になっています。
もう、可愛いが爆裂⋯⋯。
「はい、すご~く嬉しいです。ありがとう」
全員から『ありがとう』をもらったグレッグがセルゲイ爺ちゃんのところに駆け戻りながら『うれちいって~!』と、大声を⋯⋯大声を出したのです!
「ほうか、良かったのう。次はブランコじゃったか?」
「うん、ブランコたのしい」
「そこは『楽しみ』ゆうとこじゃな」
「たのしみ~」
その日の夕食にトーマス司教様が乱入されてお父様と祝杯を上げられた後、セルゲイ爺ちゃんを奇襲されました。
有言実行ですね、二日酔いにならないようお祈りしておきます。
グレッグにはもちろんクロワッサンのサンドイッチ。野菜好きのグレッグはきゅうりとチーズのサンドイッチを美味しそうに食べています。
チェイスにはあまり甘くないパンケーキですが、ハンナの目を盗んでハムを手掴みで食べご満悦です。フォークの使い方を教えるのは何歳くらいが良いのかマーサなら知っているでしょうか?
デザートのプリンは最強のようです。
「ぷにん、おいしいね」
「ぃねー」
グレッグが上手に『し』が言えました。目に見えて進化していく子供の成長は目が離せません。
グレッグはまだスプーンを下から握りしめらように持つ下手持ちです。いずれ大人のような持ち方に変えていく必要はありますけれど、このままが可愛いとつい思ってしまいます。
大人の持ち方は『バキューン持ち』だと教えられる日も近そうです。
チェイスの上手持ちはもう堪りません。溢さないように真剣な顔も見応えたっぷりで。
料理長のサントスのプリン⋯⋯わたくしの分は? ターニャ、笑わないで下さい。サントスのプリンは別腹ですもの。
「お庭にブランコがあるんだけど行ってみない?」
「おそと、やだ、ちらーい」
「だー」
お腹いっぱいになった子供達を庭に誘いましたが、部屋から出るのを嫌がります。
「お花もいっぱい咲いてるし」
「リィ、いっちょがいいの」
マーベル伯爵家での記憶のせいでしょうか? 部屋の奥で遊ぼうとしますし、ドアが開くたびに怯えます。
「ブランコってゆらゆらして楽しいんですよね~」
「そう、2人でよく遊んだわね」
「大きく漕ぎすぎてセルゲイ爺ちゃんが飛んできたり」
「後ろから押してもらうのが好きだったわ」
はじめは背中を向けていたグレッグがターニャとわたくしの話に誘われてちょこちょこと近付いて来ました。
「ぶらんこ、たのちい?」
「すご~く楽しいわ。庭のお花もいい匂いだし」
「⋯⋯リィ、おはなちゅき?」
「勿論よ、グレッグやチェイスはどうかしら?」
「⋯⋯わかんない」
首を傾げて悩むグレッグを見たチェイスが横で真似をしています。お兄ちゃん大好きのチェイスと手を繋いだグレッグが小さく頷きました。
「おにわ、いく!」
庭に出ると夏の花が風にそよぎ、少し汗ばんだ肌に心地よく感じられます。
「セルゲイ爺ちゃん!!」
ベンチに腰掛けて新聞を読んでいるセルゲイ爺ちゃんを目ざとく見つけたターニャが叫びました。
「爺ちゃん、ズル休み?」
「アホか、ワシは休憩中じゃ」
毎朝届く新聞はお父様が読まれた後でセルゲイ爺ちゃんの元に届けられます。社会情勢やゴシップにも詳しい天才庭師なのです。
「お、久しぶりにちっこいのが増えたのう。ほれ、これをやろう」
日に焼けたシワだらけの大きな手に乗っているのは小さな木彫りの⋯⋯馬車? セルゲイ爺ちゃん、器用すぎです。
チェイスと手を繋いだままわたくしの後ろから顔を覗かせているグレッグは瞬きを忘れているようです。チェイスはそんなお兄ちゃんを見上げて首を傾げて⋯⋯。
「さーて、どうするかのう? ワシの孫にあげてもいいが⋯⋯取りに来るなら2人にあげてもええんじゃが⋯⋯さっきお前さんらが乗ったのとよう似とるぞ」
子供達は大人を怖がってますから初対面の方のそばには行け⋯⋯ました。
セルゲイ爺ちゃんの手の中を覗き込んで見上げたグレッグとチェイスの頭を撫で、小さな手の上に精巧に彫られた馬車が乗せられました。
「名前を教えてくれるかの?」
「ぐでっぐ、おとと、ちぇーす」
「⋯⋯ふむ、ちと難解じゃが⋯⋯グレッグと弟のチェイスかな?」
「うん、おとと、ちさい」
「確かに、グレッグより小さいのう。じゃが、利口そうなグレッグとすばしこそうなチェイスじゃな」
「りこお?」
「グレッグは頭がいいと言う意味じゃ」
会話が続いています! 流石セルゲイ爺ちゃんです。ここにわたくしが連れて来た人は全員セルゲイ爺ちゃんの虜になるのですから⋯⋯昔は『爺ちゃんは魔法使い』だと信じていましたの。
子供達はセルゲイ爺ちゃんに連れられて花壇の脇道を歩いていましたが、退屈したチェイスが脱走を企てました。
チェイスをひょいっとおんぶしたセルゲイ爺ちゃんとグレッグが何やら密談をはじめ、爺ちゃんが切った数本の花を持ったグレッグが走って来ました。
「リィ、あげゆ、こえはターニャ、こえはハンニャ、こえは⋯⋯メイタ。うれしい?」
初めて全員の名前を言いながら花をプレゼントしてくれたグレッグの耳が真っ赤になっています。
もう、可愛いが爆裂⋯⋯。
「はい、すご~く嬉しいです。ありがとう」
全員から『ありがとう』をもらったグレッグがセルゲイ爺ちゃんのところに駆け戻りながら『うれちいって~!』と、大声を⋯⋯大声を出したのです!
「ほうか、良かったのう。次はブランコじゃったか?」
「うん、ブランコたのしい」
「そこは『楽しみ』ゆうとこじゃな」
「たのしみ~」
その日の夕食にトーマス司教様が乱入されてお父様と祝杯を上げられた後、セルゲイ爺ちゃんを奇襲されました。
有言実行ですね、二日酔いにならないようお祈りしておきます。
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